表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【12/19書籍発売】竜王陛下の運命になれなかった私が、魔国で愛されお世話係に!? 聖花を癒やす弦歌の乙女(旧:運命は、手に入れられなかったけれど)  作者: 夕立悠理
運命の相手編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/75

あなたの決意

 ――自室に戻った後。

 防音室でトレーニングをしていると、ガロンさんが私の部屋を訪ねてきた。

「ガロンさん?」

「……今、時間は大丈夫か?」

 丁度、休憩しようと思っていたところだったから、全然大丈夫だ。


「はい、大丈夫です」


 ガロンさんを部屋に通し、ユグに紅茶の準備をしてもらう。

「どうぞ」

「ありがとうございます、ユグ」

 ソファに座り、ユグが淹れてくれた紅茶を飲みながら、ガロンさんを見る。

「……それでガロンさん、どうなさいましたか?」

「……マギリが」

 ガロンさんはそこで言葉を切り、星のように輝く金の瞳をさまよわせた。

 続きを何と言ったらいいのか、迷っているようだった。

「……マギリから、聞いた。聖花の香りの事をアギノから聞いた時、あなたが……とても悲しそうな顔をしていたと」

「!」


 つまり、ガロンさんは心配してきてくれたらしい。

「聖花の香りの意味について、もっと早く伝えるべきだった。……すまない」

「い、いえ! そんな、謝らないでください」


 ガロンさんは、何一つ悪くない。

 悪いのは、聖花とちゃんとお別れができなかった、私だ。


「むしろ……、気にかけてくださり、ありがとうございます」

 ガロンさんをまっすぐに見つめる。


「私、この国……魔国に来られて、とても幸せだと思っています。だから、魔国に来たことは、何一つ後悔していません。私が後悔しているのは」


 聖花の輝きを思い出す。

 私の演奏で、より白く輝く、薄く透き通った花びら。


「……聖花に想われていたのに、ちゃんとお別れをできなかったことです。でも、それは、私の後悔で、ガロンさんが悪いわけじゃないです」


 この後悔を私は背負って生きていく。


「……アドルリアに戻るか? 別に、一時的になら帰ることも――」


 ガロンさんは、私を見つめ返した。

「いいえ」

 ガロンさんの言葉に首を振る。

「私の今の居場所は、ここですから」

 花奏師としての仕事を私は、捨てた。


 そして、アギノの世話係になった。


「聖花の香りが、少しずつ薄くなっていると、アギノも言っていました」

 でも、この香りが消えても、私は聖花たちのことを忘れない。


「だからこそ、今、私は、帰るべきではないと思います」

 花奏師は、私だけじゃない。

 今更帰ったところで、彼女たちや聖花を戸惑わせるだけだろう。


「……そうか」


 ガロンさんは、まぶしそうに瞳を細めた。

「あなたは、輝く……星のようだ」

「星、ですか?」


 星なら、ガロンさんからきらきらとたくさん飛んで見える。


「……あぁ」

 頷くと、ガロンさんは立ち上がった。そして、私のソファの前まで来て、その場に跪いた。

「っ! ……ガロンさん!?」

 !?!?!?

 いったいどうしたというのだろう。


 ガロンさんは、私の手を取ると、その甲に口づけた。

「あなたの――決意に応える俺で、魔国で、あろう」

「!」


 忠誠を誓う騎士のように、真摯な瞳で、私を見上げる。


 ぶわり、と体中を熱が走る。

 唇が触れたのは、手の甲だけなのに。

 体全体が、触れられたかのように、熱い。


何と言ったらいいかわからず、ぱくぱくと口を開けたり、閉じたりする。


 それで、結局、言葉になったのは。

「……ありがとう、ございます」

 小さな、感謝の言葉だけだった。


 ガロンさんは、その言葉に、微笑むと、立ち上がった。


 握られていた手が……離される。

 離された手を思わず、視線で追ってしまった。


「……そんな顔をするな」

 困ったように、何かを抑えるように。眉を下げて、ガロンさんは、私の頭に手を置いた。

 そして、くしゃりと撫でられる。


 ……私、どんな顔をしていたんだろう。


「もうじき、日が暮れるな」


 そういわれて、窓の外を見ると、夕日が沈むところだった。

 もうそんな時間だったのね。

 夢中でトレーニングしていたから、全く気付かなかった。


「……夜になると」

 ガロンさんは遠くを眺めながら、言葉を続ける。


「特に感傷的になりやすい。だから……」

 そういって、右手を差し出された。


 なんだろう。


 疑問に思いつつも、差し出された右手から転がされた、袋型の何かを受け取る。

「? これは?」

「サシェだ。あなたが安眠できるように、まじないをかけてある」


 確かに、サシェからはいい香りがした。


「……ありがとうございます」

「……あぁ。おやすみ、ラファリア」

「おやすみなさい、ガロンさん」

「どうか、良い夢を」

 そういって、もう一度、私の頭を柔らかく撫でると、去っていった。


 サシェの香りをかぐ。

 ほのかに、甘いその香りにやさしい気持ちになった。

 毎晩、枕元に置いたら、悪夢も見ずにぐっすり眠れそうだ。


 気にかけてくれる、ガロンさん。

 私を気に入ってくれているアギノ。

 支えてくれるユグたち。


 みんなこの国でできた、大切なひとたち。


 サシェの香りを感じながら、私は落ちていく夕日を眺めていた。


いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

もしよろしければ、ブックマークや☆評価をいただけますと、今後の励みになります!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

いつもおよみくださり、ありがとうございます!本作が書籍化されます!
書籍のリンクです
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ