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【12/19書籍発売】竜王陛下の運命になれなかった私が、魔国で愛されお世話係に!? 聖花を癒やす弦歌の乙女(旧:運命は、手に入れられなかったけれど)  作者: 夕立悠理
運命の相手編

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23/75

好きだよ/現実

 ……なるほど。気に入られてる、というのはガロンさんから言われていたから納得できる。でも。

「なぜですか?」


 聖花やアギノがそうする理由がわからない。

『それはね……まぁ、マーキングに近いかな。他のとこ……例えば、ボクにとっては聖花だね――に行っちゃわないように』

 ……ということは、聖花は私をつなぎとめたかったのかしら。そう、思われるような花奏師になれていた?


「……っ」

 なんだか、途端に胸が苦しくなる。

 花奏師は別に私だけじゃない。だから、聖花は花奏師にはみんな香りをつけていたのかも。

 ……それでも。


 六年前に初めて見た聖花。

 とても、美しかった。


 そして、成長して花奏師として、見た聖花。

 記憶よりもさらに美しかった。こんな聖花を守れる、花奏師になれて、誇らしかった。


『ラファリア?』


 私――ちゃんと、聖花たちとお別れ、できたかしら。

 最後の演奏の時、またね、って言った気がする。さよなら、っていえばよかった。今までありがとうって。


「私、わたし……」

 自分が苦しいことばかりだった。

 初恋が叶わなかったことが、苦しくて、自分が逃げることばかり考えていて。


『ラファリア、大丈夫?』

 心配そうに、体をこすりつける、アギノにはっとする。


 ――そうだ。

 今の私は、もう花奏師じゃない。闇獣の……アギノの世話係なんだ。


「いえ、……心配かけてごめんなさい、アギノ」

『ううん。でも、顔色悪いよ。ボクはもうお腹いっぱいだし、今日は、もうゆっくり休んで』


 そういって、アギノは、もう一度体をこすりつけた後、ベッドに飛び乗った。

 そして、丸くなったアギノに、布団をかける。


「ありがとうございます、アギノ」

『うん。あのね、ラファリア……』


 アギノが、紫色の大きな瞳で私を見つめる。


「はい」

『……まだ出会ったばかりだけど、ボクはラファリアのこと、好きだよ』

 好き、という子供のように純粋なアギノ言葉は、まっすぐに私の胸に届いた。


「……はい」

『うん。……それだけ。じゃあ、また明日』


 心配そうなマギリの視線を受けつつ、自室に戻った。

 

胸元に手を当てると、ちりん、と鈴がなる。

「……うん」


 聖花たちとちゃんとお別れできなかったことは、私の後悔だけれど。

 花奏師としての仕事に手を抜いたことは一度もない。


 ……だから。この後悔を忘れず、アギノの世話係として頑張ろう。


◇◇◇

(花奏師長視点)


「ううーん」

 私は、首をかしげていた。

「聖花のことですか?」

 同僚に尋ねられ、ええ、と大きく頷く。

 昨日から、なんだか聖花の様子がおかしいと思っていたけれど。


 わたしは、師長として、花奏師が演奏を聞かせた後の、聖花を見回るのが仕事だ。今日の聖花……特にマーガレットさんの区画の聖花がおかしいのだ。

 具体的に、何をどう……と言われたら、困る。

 困るけど、いつもと聖花が違う。昨日のものとは違い、これは確信だった。


「まぁ、区画を増やしたからかしらね……」


 マーガレットさんたっての希望で、ラファリアさんが以前担当していた区画は、マーガレットさんが担当している。


 区画を増やしたことで、聖花たちに演奏が行き届いていないのかしら。


 それなら、演奏時間を、今後はもう少し長くするか、何回かにわけて行うか……。

 そういう指示を出した方がいいわよね。


「マーガレットさんは……」

 同僚の方を見ると、首を振った。

「陛下のところです。どうも、陛下が風邪をひかれたみたいで、その見舞いに」


 マーガレットさんは、まだ正式ではないけれど、竜王レガレス陛下の婚約者だ。

 だから、体調を崩された陛下のそばにいるのは、不思議ではない。


「……わかったわ。戻ってきたら教えてくれる?」

「はい。わかりました」


 いつ頃戻ってくるかわからないけれど、聖花は国の繁栄にも関わるから、このまま野放しにしておいて、いいとも思えない。


 窓の外を見る。

「……聖花たちが、早く元通りになればいいけれど」


 白く輝く美しい聖花。

 そんな聖花に音楽を届け、守ることに憧れて、花奏師になった。


 その聖花に対する憧れの気持ちは、今もまだ胸に。


ラファリアさんだったら……。

 わたしと同じように、聖花に憧れていると言っていた彼女。

 彼女だったら、この事態をどう受け止めるだろうか。


 そこまで、考えて苦笑する。


 わたしは、思った以上に彼女に期待してたのかもしれない。

 いや、そうだ。実際、次の花奏師長は彼女しかいないと思っていた。


 それでも、今ここに彼女はいない。


 現実を受け止めなければ。


 同僚が淹れてくれたコーヒーを口に含みながら、どうしたものか、と考えていた。


いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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