表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【12/19書籍発売】竜王陛下の運命になれなかった私が、魔国で愛されお世話係に!? 聖花を癒やす弦歌の乙女(旧:運命は、手に入れられなかったけれど)  作者: 夕立悠理
運命の相手編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/75

香り

「はい。もちろん」


 特に断る理由もないものね。

 頷くと、マギリはとてもうれしそうに、ありがとうございます、と笑った。


「俺は、執務があるので今日はいけないが……」

 ガロンさん、しょんぼりしてる?

「では、また後日、一緒にアギノに会いに行きませんか?」

 別に私は今日でこの国を去るつもりはないのだし。

 明日だって、明後日だっているものね。


「! ……そうだな」


 ガロンさんが柔らかく微笑む。

「では、行ってきますね」

「あぁ、また」


 ガロンさんに手を振り返して、執務室を出た。


 ガロンさんの執務室と、アギノの部屋は遠くない。

 マギリとユグの話などをしながら、歩いているうちにあっという間に着いた。


「アギノ、おはようございます。ラファリアです」

 ノックをして、声をかける。

『ラファリア! 入っていいよー』

「ありがとうございます。入りますね」

 そっと扉を開けて中に入る。

 今日のアギノは、布団にくるまっていなかった。


「闇獣があっさり入室を許可したなんて……そんなことが……」

 マギリは、頭を押さえながらぶつぶつと何か言ってたけれど。


「アギノ、調子はどうですか?」

 アギノの元まで行くと、アギノは、座っていた椅子から降りた。


『きみのおかげで、ばっちりだよ。でも、少しお腹すいてきちゃった。……って、どうして、あほマギリも一緒なの?』

 あほマギリ……。

 昨日の、ばかガロン、でも思ったけれど、もしかして、アギノって口が悪い?

「それはもちろん、私も演奏を聞いてみたいと思ったのですよ」


 マギリはきらきらと目を輝かせていた。

『ふーん。どうでもいいけど』

 アギノは、私の足元に、体をこすりつけた。


「アギノ?」

『ラファリアは、ボクの世話係なんだからね』

 そうでしょ、ときゅるんとした紫の瞳で、アギノに見つめられ、私は……。


『!!』

 思わず、アギノの頭を撫でた。

 とても柔らかくて、温かくて、心地がいい。……と感じてから、はっとした。


「アギノ、ごめんなさい!」

 昨日、アギノを恥ずかしがらせてしまったから、二人の時とかに許可を取って、撫でようと思っていたのに。


『ラファリアなら、別に……いいよ』

 やっぱり恥ずかしかったのか、横を向いて、だけれど、アギノはそう言ってくれた。


「ありがとうございます」

 それが嬉しくて、思わずまた撫でる。……すると。

「闇獣が、触れるのを許してる――!?」

 そう叫んで、マギリは倒れた。


「え、マギリ!? 大丈夫ですか?」

 慌てて、マギリの体を揺するけれど、返答はない。


『どうせまーた仕事、徹夜でしたんでしょ……そんなのはほっといて、今日も演奏を聞かせてよ』

 アギノはそう言って、ね、とさらに体をこすりつける。


「ですが……」

『ラファリアの演奏を聞いたら、起きるよ』


 精神や傷を癒す力だったら、徹夜明けにも効くかしら。


「わかりました」

 ひとまず、アギノの許可をとって、マギリにアギノの布団をかける。


「今日は、なんの楽器がいいですか?」

『歌う、だけじゃないの?』

 興味津々、といった様子で瞳を輝かせたアギノに大きく頷く。


「ハープと、バイオリンと、ピアノとフルートと……」

『うーん。どれも素敵そうだけれど、ラファリアの声が好きだから、歌ってほしいな』

「わかりました」


 私の声を好きだと言ってくれて、とても嬉しい。


 ぎゅっと目を閉じて、意識を集中する。

 今日は、どんな曲にしよう。


 そういえば、今日は、晴れていた。そうね、せっかくだから、温かな日差しが木々の隙間から降り注ぐような、そんな曲にしよう。


 息を吸い込む。

 想うのは、アギノとこの国のことと……あとは、またしても徹夜明けのマギリのこと。


 心を込めて、大切に一音一音、歌う。


 アギノのお腹が満たされて、もっともっと、この魔国が繁栄しますように。

 徹夜明けのマギリの疲れが取れますように。


 そう、願って。


 最後は、柔らかな余韻を残して、音を消す。


 ……どうだったかな。気に入ってくれると、いいのだけど……。

 目を開けて、アギノの方を見ると――。

『すっごーい!!』

 アギノは、そういって私に飛びついてきた。


 落ちないように、慌てて抱きとめる。

「お腹は満たされましたか?」

『うん! とってもいっぱいになったよ』

 そういって、頭をこすりつけてくる。

 ……ふふ、可愛い。


 思わず、口角を緩めていると、アギノはすんすん、と私の匂いを嗅いだ。

『うんうん、聖花の香りも薄くなってきてるし、本格的にボクの世話係って感じ!』

 ガロンさんも私から聖花の香りがするって言っていた。私には、感じられないけれど。


「アギノ、聖花の香りって……」

「ううーん」

 アギノに尋ねようとしたとき、大きなうめき声が聞こえ、そちらの方を向く。

 ……マギリだ。マギリは、大きな欠伸を一つした後、起き上がった。

「久しぶりにこんなにゆっくり眠れた気がする……それに体が軽い」

 マギリは、きょろきょろと辺りを見回し、それから私とアギノを見て、ぱちぱちと瞬きした。


「世話係殿、演奏は……、それに胸に抱いているのは闇獣ですか!?」

『演奏なら、さっき終わったよ。あほマギリの体が軽いのは、ラファリアのおかげ。ラファリアの演奏には、不思議な力もあるんだから』

 えっへん、とアギノが得意げに胸を張る。

「なるほど、不思議な力が……演奏が聴けなかったのは残念ですが。世話係殿、ありがとうございます」

 丁寧に頭を下げた、マギリに慌てて首を振る。

「いえ、私はそんな……仕事をしただけなので」

『そうだぞ。マギリに聞かせたのは、ただの『ついで』なんだから! それに、こんなに触っていいのは、ラファリアだけだからね。勘違いしないでよ、あほマギリ』


 ねー、と言って、アギノに頭をこすりつけられ、くすぐったい。


 優しくアギノの頭を撫でて、アギノを胸からおろす。


「ところで、アギノ。……さっきも言っていた、聖花の香りって?」

『ああ、ラファリアにはわからないんだっけ。聖花……というか、ボクたちはね――気に入った人間に香りをつけるんだ』


いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

もしよろしければ、ブックマークや☆評価をいただけますと、今後の励みになります!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

いつもおよみくださり、ありがとうございます!本作が書籍化されます!
書籍のリンクです
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ