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良き人

今度こそアギノの部屋から完全に出て、廊下を歩きながら話をする。

 歩く度に、ちりん、と鈴が小さく鳴り、本当にアギノの世話係になったのだと、少し、くすぐったい。


「闇獣の世話係の仕事の都合上、勤務日数は、特別休暇や病傷休暇以外は、週7日。代わりに労働は、一日一曲演奏すれば終わりだ。まぁ、気が向けば、アギノの話し相手でもしてもらえれば助かる。給与は、以前提示したものでいくつもりだが……」


 ここまでで、不満や、不明点は? と尋ねられ、首を振る。


「いいえ。むしろ……好待遇すぎでは?」


 さっきの演奏だって、だいたい五分くらいだ。毎日働くといっても、一日の労働時間が、五分。それは、果たして、労働と言えるのかも微妙な気がする。


「そんなことはない。あなたなら、と思ってはいたが……アギノに気に入られる人材は貴重だからな」


 そう言って、ふっと微笑んだガロンさんは、あぁ、と付け加えた。


「アギノの世話係の間は、公爵と同程度の地位が保証される。政治的発言力もあるから望むなら議会にも参加……」

「!? い、いえ! 必要ありません」


 ここここ、公爵……? 

 王家の血も入っていないし、領地経営もしてないのに……?

 それに私は、もともとは他国の人間だ。


「それだけ、重要な立ち位置ということだ。だからこそ、鈴には防御機能もつけてある」

 鈴は、安全ベルのような役割も果たすんだったわよね。


「わかりました。……精いっぱい務めます」

「そう気張らずとも良い。あなたがすでに日々努力しているのは、さっきの歌で十分わかった」


 そう言って微笑むとガロンさんは、扉の前で足を止めた。

「……ここがあなたの部屋だ。気に入ると良いのだが」


 ガロンさんに促されて、扉を開ける。


 部屋は一言で言い表すなら、とても豪華、だった。

 アドルリアにいたときだって、こんな豪華な部屋には住まわせてもらったことがない。

 公爵と同程度の地位……というのがわかる。


 思わず、ごくり、と息を呑んでいると、ガロンさんは呼び鈴を鳴らした。

「はい」

 その音で、出てきたのは、綺麗な女性だ。金髪に、青の瞳が印象的だ。


「ユグ、こちら、ラファリア。ようやく決まった、闇獣の世話係になる女性だ。ラファリア、こちらは、ユグ。あなたの侍女となる女性だ」

「初めまして、ユグさん」

「初めまして、ラファリア様。私のことはどうか、ユグと」


 ユグは、そう言って深く腰を折った。

「わかりました。よろしくお願いします、ユグ」

「ユグ、あとのことは、頼んだ。……ああ、そうだ、ラファリア」


 ガロンさんは、去ろうとして……それから、私のバッジを指さした。

「それは、良き人にしかつけられない魔法がかかってる。……俺が何がいいたいか、わかるか?」

……良き人。マーガレット様のような純真さのない私が?

「あなたは、十分魅力的だということだ。もっと、自信を持っていい」

 そう言って私の頭をくしゃり、と撫でると、今度こそガロンさんは、去っていった。

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