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妙メモリー

いじめてしまった時の話

作者: みょめも

これは僕の黒歴史……いや黒歴史という言葉を使うのも憚られるくらい思い出したくない出来事だ。

でも忘れることはできないし、忘れてはいけないのでここに残そうと思う。


あれは僕が高校3年生の頃だ。

当時の僕といえば部活でも勉強でも思うようにいかずイラつき、仲間とつるむ毎日を送っていた。



「このクラスでいじめがあるらしい。」



ある日の帰りのホームルームの時間、担任がそう切り出した。

瞬間クラスがざわついた。

みな程度は違うが、それに近い事をしていたのだろうと察した。

僕は思い当たる節があり、背中に汗をかいた。

担任は続けた。



「ここで話し合いをすることも可能だが、それは被害者加害者を晒し者にするようで好きじゃない。この後、17時まで生徒指導室にいるから。心当たりのある者が自主的にくるよう願っている。」



ホームルームが終わり担任が出ていくと教室内は再び噂話でざわついたが、帰宅する生徒、部活へ行く生徒が散り散りになり、やがて教室には誰も残らなくなった。



「……いじめ、か。」



自分の犯した過ちを他人に指摘され初めて感じた罪悪感は、高校生の僕には想像以上に重いもので、後悔の念が込み上げてきた。

そしてその罪悪感は、もしかしたら許してもらえるのではないかという儚い期待とともに僕の足をある場所へと運ばせた。


ガラガラ


扉を開けると、底には西陽に照らされた担任と、その傍らに立つ上腕二頭筋。



「来てくれたか。」



西陽を背にして上腕二頭筋の顔には陰が落ちていた。

担任は僕と上腕二頭筋に向き合い座るよう促し話し始めた。



「今回、上腕二頭筋がいじめられていると相談してきた時には、正直驚いた。まさかいじめていたのがいつも一緒にいたお前だと聞いたときにはな。」



僕は俯き目をあげることが出来なかった。

上腕二頭筋がどんな顔をしているのか見たくなかったからだ。

なぜそんな事をしたのか、それを聞かれただひたすら事実を説明した。

最近、部活でも勉強でもうまく結果が出ずにイライラしていたこと、そこにちょうど上腕二頭筋がいたこと。

相手は誰でもよかったこと。



「つらかった。」



上腕二頭筋の目から涙がこぼれ落ちた。

半年もの間、いじめを受けていた彼の気持ちを知らないふりして過ごしていた。

いじめればいじめるほど強くなるとばかり思っていたのだ。



「僕のやっていたことは、いじめだったんですね。」



部活が終わった後や、朝早く登校しておこなっていたのがいじめだったのか、と途方に暮れた。



「いじめは良くない。いじめそうになった時にはまず本当にそれが正しいことなのか考えるべきだ。万が一、いじめてしまったとしても、冷静になれ。そうすれば自ずとやらなきゃならないことは見えてくるはずだ。」



仕方ないな、と担任はため息をつくと僕と上腕二頭筋の手を取り合って言った。



「この後、上腕二頭筋のケア、してくれるよな。」



すると部屋の扉が開き



「ちょっと!何で俺をいじめてくれないんスか!?」



西陽に照らされて大腿四頭筋が立っていた。


「サッカー部なのに!!」

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