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映画館の無いまち  作者: 恵梨奈孝彦
4/8

田園に死す

いつもの喫茶店で祐介と話している。ケーキをおごられることに、抵抗はなくなっていた。

今日の映画は…、なんていうか、変だった。

 七段飾りのお雛様が川を下ってきた。

 石がゴロゴロしているところで、みんなで柱時計を抱えていた。

 監督は歌人の寺山修司だそうだけど、学校で習った「マッチ擦るつかのま海に霧深し身捨つるほどの祖国はありや」の歌は、共感はできないにしても、わかりにくくはない。

 だけどこの映画は、あらすじさえもわからない。

「少年の『わたし』は、母親と二人ぐらしだったが、家を出たがっていた。『わたし』は、すがりつく母親を突き飛ばして、近所の若妻と駆け落ちをする。ここまでの映像が映画監督となった『わたし』の自伝映画だった。しかし、本当の過去は違っていた。『わたし』が駆け落ちの場所に行くと他の男が待っていて、若妻は『わたし』が酒を買いに行っていた間に、その男と心中していたのだ。妄想にとらわれている『わたし』は、妄想の中で母親を殺すことを決意するが、できなかった」

 祐介が映画のあらすじを語っている。

「わたしは、最後に主人公が、お母さんと仲良くご飯を食べているのを見てほっとしたけど」

「あれは、妄想の中でさえ母親を殺せない。つまり、母親の支配から抜け出せないって言うバッドエンドなんだけど」

「映画の観かたなんて人それぞれだからいいでしょ!」

 わたしは立ち上がると、祐介を残して喫茶店を出た。そのまま一階に降りて玄関を出ようとした。だけど、どうしても外に出ることができない。玄関のドアは開いている。出られるはずだ。だけどどうしても出ることができない。

 祐介が来た。まずい。このままでは、わたしが玄関で祐介を待っていたことになってしまう。仕方なく喫茶店までもどった。もう一度ここからやれば出られるかもしれない。玄関にもどる。出られない。祐介がついてくる。ほかに誰もいない。祐介だけ外に出られたらどうしよう。祐介も出ようとする。出られない。良かった。



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