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 ティアに、自分に起きたことを教えてもらうかどうかはまだ悩んでいた。予想外の時間経過のほうがショックが大きかったというのもある。



 ただ、どうしても聞いておかなくてはいけないことがある。

 父のことだ。

 ティアによれば、父は三年前に他界していた。

 最後まであなたのことを気にかけていたわと言われて妙な気持ちになる。



 不思議と激しい悲しみはなかった。

 代わりに、じわじわと、植物が水を吸い上げるような、ゆっくりと沁みていくような悲しさがあった。


 渡来という巨大財閥の総帥という立場にあって、普通の親と子の関係ではなかったように思う。それでも、父は父だった。

 出来れば、あの日の喧嘩のことを、謝りたかった。

 もう叶わない。父は遠くに旅立った後だ。





 しばらくして体力も付いてきたあかりは病室を出て歩き回れるようになった。




 膨大な時間の流れがどれほどの影響を人体に与えるのか何となくしか想像できなかったが簡単に歩けるようになるはずがない、リハビリが辛いのだろうと思っていた。




 結論から言えば歩行にそれほど時間はかからなかった。もっと言えば目覚めてから一週間で歩くまでに回復した。これも未来の技術のおかげかと、あかりはティアに聞いてみた。




「バイオポッド?」

「そう。あかりさん――あなたは」

 ずっと、羊水に近い成分の水で満たされたポッドに入っていたのよ、とティアは言った。それによってあなたの身体は殆ど劣化することなく時を過ごしていたのだと。




「あれ? でも私、ベッドで目を覚ましましたよ?」

「あの数日前に、あなたが目覚める兆候を検知したからポッドから出てもらっていたの」





「そ、そうなんですね……」ティアには兆候(それ)が察知できたということなのか、あかりは引っかかる。





 ただ、そうするとずっと水の中にいた――波間に漂っていたようなイメージは、(あなが)ち間違いではなかったのだとあかりは思う。





とにかく、あかりは今、驚異的なスピードで回復している。

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