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大学受験

 認定試験の結果が告げられたのは十月の中旬だった。あかりの予告通り、合格。

「で、あかりは大学どこ受けるの」

 あかりは進路相談で、研究室のティアの部屋に来ている。




「えーとね」と、国立大学の工学部を告げる。

「ふーん。まあいいんじゃない?」

「ノリが軽くない?」

「あかりならいけるんじゃない? そんな気がする」

 ティアなりの確信がにじみ出ている台詞だった。





「でもごめん。見識を広めるとか言っときながら、一つしか未来を見せられなかったよ」

「いいよ。あれで充分。あれ以上なんて、なかなかないよ」

 もともと、受験は再来年とかを予定していたのだ。来年いきなり挑戦するのはあかりの都合が変わったからに他ならない。







「多分、工学系で合ってると思うし」

 あかりにとっての未来を実現するための手段。それには、知識と実践。





「でもそうなると、また勉強だね」

 年明けに実施される通称『共通学力検査』。かつてはセンター試験、共通試験などと呼ばれていたが、最近はこの名称で落ち着いている。この試験自体で合否は決まらないものの、何点取ったかで受験できる大学が決まってくる。あかりが希望している国立大学では六十五%以上の得点が望ましいとされている。






「それで、ティアに出願とか、諸々をお願いしたいんだけど」

「オーケー。まかしといて」

 時間はそんなにないが、出来るだけのことをやるしかない。





「そうだ。やっと公表されるよ。B班の研究成果、人体のデータベース化――正式には|パラメーターチューニングシステム《PTS》って言う名称になったんだけどね。政府との調整が済んだんで来年にも発表される。ひとまず幾つかの病院に機材を提供して使って貰う。海明にもいっぱい手伝って貰った。いやー、ホント大変だった」




 ティアは頭を掻く。最近二人が忙しかったのはこれが原因だったのだろう。

「やったね。ティア」

「うん。予定は未定、だけどね」

 ドアがノックされる。





「ティア、この書類なんだけど」

 入って来たのは海明だった。可愛らしい来客に気付き、にこりとする。





「あらあかり。合格おめでとう」

「海明、もう書類は勘弁してほしいですよ?」

 食傷顔を海明に向けた。





「何を言って……あなたじゃないとこれは無理でしょうが」

 ティアは渋々タブレットを受け取ると、目を通していく。

「あかり、大学はどこに行くの?」と海明。



 あかりは国立大学の工学部だと告げる。

「うん。いいんじゃない? 行けるわよ」

 ティアとほぼ同じことを言う。





「ほいこれ」ティアがタブレットを返す。

 受け取る海明。少女の顔を見た。




「分からないところは教えてあげる。私は案外、現代文とか古典とかいけるからね」

「あ、じゃああたしは自然科学とか、数学とか、英語」

 対抗してか、ティア同じようなことを言ってくる。




「うん。二人とも、頼りにしてる」

 素直に返事をするあかりを愛しそうに見つめる二人。





「うん。やっぱあかりは可愛いよ。ねえ海明?」

「ティア、そんなことは当たり前よ?」

 二人で意味ありげに頷き合う。






「ちょっ……ちょっと、()めて」

 ほんのり上気した顔で咎めた。

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