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大魔王はブラック企業の平リーマン

「なあ、お前今年のボーナス幾らだったんだよ」

「査定は下がったので、それ以上聞かないでくだせえ」

 中魔王はへこへこしながら答えた。

「それより大魔王さんはどうだったんですか?」

「お前よりも評価が悪かったなんて言えるものか」

「その正直さが命取りなんでしょう。お優しいのです、あなたは」

 中魔王の言葉が、大魔王の胸を抉った。

「そ、それがどうした。勇者のパーティを蹴散らす数が減ったからと言って、下僕の育成に尽力していただけなのだ。本気を出せば取り返しはつく」

「はあ、そうですか。それより今年はコロナが流行ったことで勇者たちも外に出にくいそうですよ。ダンジョンでクラスターが発生したら、戦闘どころじゃないですからね」

 実際勇者たちのダンジョン攻略が激減してしまったことで、ノルマを達成しにくくなったのは言うまでもない。

「くそー、また極大魔王への昇進が遠のいていくう、うう」

「大魔王なんだからいいじゃあありませんか。ボクなんか万年中魔王ですよ」

「二十四時間いつ勇者がやってきてもいいように筋力トレーニングに励まねばならない一方で、手下の育成と資金繰りに追われる始末。はあ、嫁のエキドナに会いたい」

 産休で地獄に帰ったエキドナは、毎日とぐろを巻いて待っていてくれている。皮膚を溶かす毒舌が恋しいと大魔王は叫んだ。

「ライフワークバランスの欠片もないですよね。せめて福利厚生を拡充してほしいですよ」

「例えば変身に必要な魔力の供給とかな」

 それに対して、財源がなくて無理ですね、と中魔王が呟く。

「我々したっぱの魔王は結局、いつまでたっても魔王のままです。上のポストはどんどん狭くなりますから」

「あーあ、変わり種の神様にでも転職するかな」

「今は神殿に行かなくてもネットで転職情報が流れているらしいですから、選択肢の一つにはなりますね」

「勇者にやられて貰った労災も底を尽きたし、産まれてくる赤子を養わなきゃならないし、一体どうしたらいいんだ!」


 これは生活苦になり、ワクチン開発に思い至った大魔王と中魔王の壮絶な物語の序章に過ぎない。

 魔王会社からは勇者を救ったと責められ辞任を強いられた挙げ句、救った勇者からは命を狙われることになる。

 エキドナに離婚を申し込まれた大魔王に未来はあるのか。

 コロナに翻弄された大魔王の挑戦は続く。

魔王でいるのも楽じゃない!

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