場の雰囲気は大切です
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すみません。
奈緒の言葉遣いを変えました。
あれから秋司にLIMEで連絡を送り、昼休み一緒に食事をする約束を取り付けた。そして昼休みになると同時に教室まで赴いた後、目的の中庭へと全員で向かったのである。
ちなみにだが、現地での待ち合わせではなくわざわざ教室まで迎えに行ったのにはもちろん理由がある。
一つ目はあの噂のせいでクラス内で秋司が今現在どういう状況に置かれているか。
クラスメイトではなく直接秋司を知らない生徒でさえも廊下でその噂話をして秋司に対して嫌悪の表情をしていたくらいだ。クラスメイトからもかなりの不評を買っているのは見ていなくても容易に想像がつく。
実際に見に行ってみるとやはりというべきか、遠巻きに見られ気分の良くない視線に晒されているようだった。
だがしかし最悪な展開にはなっていなかったようで安心もしたけれど。
ちなみに最悪な展開については派手なイジメが起こっているとかそんなレベルの話だ。……とは言っても現状が良いとは全く思ってはいないが。
二つ目は秋司には俺たちがいるというパフォーマンスをおこなうこと。
今イジメられていないとしても今後は分からないし、これから悪化した末に起こる可能性は十分にある。そんな中で俺達の仲が良い事をアピールしておけば簡単にはそんな事は起こらないだろうと判断した。
なにせ璃帆とリアはこの学園でも1、2を争うほどの人気者だ。教師にも信頼されているし余程のバカでない限り安易に敵対したくはないだろう。
それに俺自身も交友関係は広いから雀の涙程度には役に立つ…はず。
しかしこれは同時に多方面へと反感を買う行為でもある。噂を信じている人間にとっては人としてどうかと思う行動をする人間と一緒にいるなんて、あの人達も似たような人達なんだ……と批判的な目で見られることがあるからだ。
俺としても自分はともかく、2人を巻き込みたくないのが本音だ。だからこそ本人達の意思を大切にしたいと思い、事前に大丈夫かの確認を取ったのだが。
リアは「あはは〜。問題ないよー!私はね?私の後悔のないように生きるって決めてるんだ」と、
璃帆は「あのような低俗な噂に惑わされる程度の方々の評価ならば失ったところで何も困りませんから」
というありがたいお言葉を頂いた。
みんなと会話をしながらも、頭の片隅で今回の経緯を思い出しているうちに目的の場所へと辿り着いた。
その場所は中庭の奥まった場所にある自然をモチーフにしたというテラスだ。
木のテーブルに同じく3人は座れる木の長椅子がテーブルを挟んで1台ずつ並べられている。
屋根は針金状の骨組みに植物や花の蔦が満遍なく巻きついており、この場所だけ御伽噺の世界を切り取ったような、少し浮世絵離れした雰囲気となっている。……最初にここを見た時、学園はこんな区画を作り出して、一体何を目指しているのだろうかと遠い目になったのは懐かしい思い出である。
野外に建てられているといっても清掃は頻繁にされているようで椅子もテーブルの上も汚れは見当たらない。これならすぐに食事を始めても問題なさそうだ。
久しぶりに見るこの場所の情報を整理しながら座る俺の両側に璃帆とリアがまるで定位置のように寄り添い、その反対にはそれをみて苦笑する秋司と秋司の幼馴染(リア情報)だという相良奈緒さんが座った。
全員が座ったのを確認すると秋司に声をかける。
「悪いな秋司、突然誘っちまって」
「大丈夫だよ。僕の方こそ気を使わせてしまって……ごめんね」
そう言って項垂れる。…やべーな。これは相当きてるぞ。
それによって場の雰囲気が悪くなり、先ほどの秋司の発言と併せてそれらの事を考えて難しい顔になってしまった俺にちょんちょんと左側から腕をつつかれたのでそちらを振り向くと
ーここは任せてー
とアイコンタクトで知らせてきたので、俺もそれに頷くと秋司へと視線を戻したのだった。
ぱんぱん!
手を2回軽快に叩き、注目を集めたリアが場の空気を払拭するかのように明るい声で喋り出した。
「そういえばさ、奈緒ちゃんって雪にゃんとりっちゃんとははじめましてだよね?だったらまず自己紹介しちゃおうか〜?あ、もちろん秋司くんもね?」
その言葉に秋司は一瞬きょとんとした後、困惑したような表情を浮かべる。
「……えっと?僕も??一応1年の時はクラスメイトだったよね?」
「あはは〜…そうなんだけどね?クラスメイトっていってもいろいろあるでしょ?親友!って呼べるような存在から、同じ空間にいるってだけの人まで。
あたしにとって秋司くんって雪にゃんを通した雪にゃんの友達ってイメージなんだよ?
だからね?こうしてお昼ご飯を一緒にする機会に恵まれたんならさ?お友達になりたいでしょ?雪にゃんを通した・・・じゃなくて、あたしと秋司くんっていう間に何も挟まない純粋な友達にね?
………それに、りっちゃんはりっちゃんだし、ね?」
「あな……くっ」
不安や不満、負の全てを消しとばしてしまう、向日葵のような満面な笑顔でリアは語る。
その反対側、俺の右隣では最後の自分に対しての物言いに不満があったのか璃帆がいつかと同じような扱いに抗議をしようとしたが、場の空気が柔らかくなったのを察して口をつぐんだ。
それでも行き場のない不満をどうにかするように俺の手を軽くつねる。
その行為と滅多に見せない拗ねた表情が可愛くて小さく笑っているとそれに気がついたのか、頬を少し赤くし、さらに強くひねって………いた、いたたた!痛い!?
こほん。
俺達がそのように戯れて(?)いると反対側から咳払いが聞こえてきた。そちらへと顔を向けると……
「あはは〜。そちらのお楽しみのお二人さんもそれで良いかな〜?」
満面の笑顔……正確には目だけが笑っていないリアがこちらを見つめていた。
「だ、大丈夫だ。うん。それでいこう!俺も相良さんとは仲良くなりた「「それはダメ(です)!!」」いし…な・・・え?」
リアの提案に慌てて乗って、それとは別にせっかくこの場にいるのだからというのとこれからの事を考えて相良さんとも仲良くするべきだと判断した俺の発言を、両隣の2人に言葉に被せる勢いで拒否された。
「……べ、別にそんな個人的に雪にゃんは仲良くなる必要ないよ?うん!きっとこれから先の人生にも(あたし以外の)女の子なんて必要ないと思うし!」
「そうですね。人生とは取捨選択の連続です。そのような観点からも(私以外の)女性は雪斗さんには必要ありません」
…え?酷くね??フォローの為に喋った言葉で致命傷負わせるってどんだけなの。さすがの俺も泣いちゃうよ。
「……くくくっ」
密かに本気で泣きかけていた俺の耳に入ってきたのは声を押し殺した笑い声だった。
「秋司〜?お前まで、んな薄情なのかよ?」
その笑い声の主に対してジト目を向ける。……とまあ言葉では非難しているがきっと俺の顔はニヤけているだろう。
なにせようやっと秋司が明るい表情を見せたのだから。
「ごめんごめん。許してよ雪斗君。そういう事なら僕も自己紹介には賛成かな?奈緒もそれでいい?」
笑いを堪えながら謝罪と了解の意を示し、隣の相良さんにも確認を取る
「う、うん!私もそれで問題ないと思うのです!」
呆然としていたのか、秋司の声で意識をこちらに戻した相良さんも急いで頷くのだった。
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