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空から降って来る命

空から命が降って来る。


それも一つではない、無数に。


地上から見上げていれば、

まるで空が命で覆い隠されているようだ。


そのままじっと動かないでいると、

空から降って来た命の重みに

自分の命も押し潰される。


それだけで命が二つ消えてしまった。



「ヘルシティ全体を

人質にさせてもらった


ここで暮らす者達、

その数百万の命は

今や私の掌中にあると知って欲しい


死にたくなければ

魔王の首を差し出せ


ただそれだけで

君達の命は助かると、

約束しよう」


勇者の声が

ヘルシティ全体に響き渡っている。


みなは空を見上げたが

それらしい人影はまるで見当たらない。


ただ雲一つない青空が

どこまでも続いているだけ。




連続猟奇殺害事件

いわゆる切り裂きジャック


そして多発する連続爆破テロ


次々と起こる事件に

王都民達は不安を感じ


鬱憤や不満を爆発させる者達もいた

各地で小さな暴動が起こり

暴徒化する者達


仕舞いには勇者狩りなどと言う

極めて無責任な私刑までがまかり通る


不安定な社会情勢


人間との大戦、

その戦時下を思えば、

それもまだまだ

マシな状況ではあったのだが


王都民達は平和の世界の中で

いつしかそれが

当たり前だと思うようになっていたのだ


まるで先の戦争など無かったかのように



はじめ、勇者の声を聞いた王都民達は

ただただ困惑するだけだった。


鼻で笑い、嘲笑する者達もいた。


それはそうだろう


いきなりこの巨大なヘルシティを

人質に取ったと言われても、

よく意味が分からない。


そう、みな半信半疑だったのだ、

勇者の力を見るまでは……。



「どうやら、みなさんには

まだ信用してもらえていないようだから


これから、

嘘ではないことを証明しよう


ただ、これは

みなさんの私に対する信頼が足りなかった、

その結果が招いたことなのだから


どうかそのことを自覚して


ちゃんと反省して、

罪の意識を感じてもらわないと」


数百という者達、

その体が突如として宙に浮く。


必死に手を伸ばして、

地に戻ろう足掻く者達。


だが彼等、彼女達の体は

次第に高度を上げて行き、

はるか上空へと連れ去られた。



「本当は私も

こんなことをしたくはないのだけど


やはり他人を疑うってことは

悪いことだからねえ


その罰を受けてもらわないと


この社会全体でね」


勇者の言葉と共に、

上空に連れ去られた王都民達は

落下をはじめる。


――単純な落下


だが空を飛べない者達にとっては

間違いなく即死となる高さ。


魔族の中には

空を飛べる有翼種も少なくないが、

どうやら空を飛べない者だけを選んだらしい。


慌てふためいた王都民は

落ちて来る者達を必死で助けようと


魔法を使ったり、

有翼種が空で受け止めてようと試みたが


それでも救えたのは

わずか数人に過ぎない。



地上に次々と衝撃音が響く。


だが、音がした方を

誰も振り返ることが出来ない。


恐怖で、それを見ることを

体が拒絶しているのだ。



――私の頭上にも影が落ちて来る


落下の第二波か?


巨体なミノタウロスの姿が

どんどんと近づいて来る。


どっちに避ければいいのだ?


右か、左か、前か、後ろか


何よりもまず

恐怖のあまり足が動かない。


今まさにミノタウロスの体が

私の顔に接触しようとしている……。





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