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育成スキルは神スキル

【金沢22番ダンジョン】


ビルの間にポツンと現れたゲートには、出現した場所の市の名前と、何番目に出来たかわかるように数字が書かれている。


入り口にはまばらに人がいる。

初々しい学生集団に、ちょっと年配気味のおじさまだ。学生は興味本位、おじさまは私と同じく就職難民なんだろうと勝手に推測しちゃう。


ぞろぞろと皆んな穴の中へ入っていく。

私もその後を追うようについていく。


「はい、ここにカードをかざしてください」

「はい」

「あら、あなたここは初めてなんですね。初心者向けのダンジョンですけど、怪我がないよう頑張ってくださいね」

「はい、がんばります」


一人一人に丁寧に対応してくれているお姉さんは素敵です。思わず敬礼付きの返事を返してしまった。

恥ずかしさから小走りに中へ進むと、奥はそれほど広くなく下へ急な階段が続いている。


うへー、帰りキツそう。

傾斜45°はあるんじゃないか。


滑らないように恐る恐る下へ進む。

15段ほど降りると、開けた場所は出た。


わぁー、昨日入った場所より明るくて周りが見やすい。見通しが良すぎて、さっき見た学生を発見した。すでに戦闘態勢なのか、何かをリンチしている。


もう一度言おう。


周りを囲み、小さい何かを集団で襲っている。


……どっちが悪かわかんない。てへ。


なんてふざけていたら、背後を敵にとられてしまった。強い衝撃が膝を襲う。


おおう、膝カックン強烈バージョン。


イナバウアーよろしく、おもいっきり背をそらしバランスを保ってみる。衝撃ほど痛みがなかったのが幸いです。


「いきなり襲ってくるとは、卑怯だぞ!」


説教をしてやろうかと振り返ると。


ふるふるふる


「かあいい」


小さなネズミが怯えながらこちらを見ていた。

ネズミといってもハムスターに比べたら脚がカンガルーみたいにシュンとしていて、よく跳ねそうです。


無理。こんな可愛い子を殺すなんて出来ない。

おーよちよちよちと、しゃがんで手を出すと


「ごふっ」


腹に強烈な頭突きを受けました。

頭突きはそこまで痛くなかった。が、当たった衝撃でバランスを崩し、倒れ、後頭部を地面にぶつけてしまった。


「おーー、やりおる。やりおる。こいつ、策士だ」


自分の可愛さで相手に隙を作らせ、バランスを崩す攻撃をし、地面に叩きつける。


完璧な攻撃じゃないかー。え、なに、モンスターってこんなに頭いいの? 猿、いや、3歳児並みの狡賢さを持っておるぞ。


はっと気づいた時には、にやりと悪どい顔のネズミの腹の上に……?

え、待って。この態勢でなにされるの?


「はなーーー」


私の小さな鼻から血の涙が溢れる。

あんにゃろー、人の鼻潰して逃げやがった。


とりあえず、止血止血。こう、ティッシュを包めてスパッと。はい、変顔ー。

この恨み、家から持ち出した小学生の頃使った彫刻刀で晴らしてやる。


悪い子はいねーか。私の鼻を潰した悪〜い子はいねーか。


いた。


(たぶん) さっきのネズミに向け刃を振り下ろす。

が、簡単に避けられ、その弾みを利用し顔面を襲われた。


「あーーー、腹立つ!!」


キキキと笑うネズミの長い尻尾を踏みつける。

油断していたのか、慌てて逃げようとするが尻尾が靴から抜けれずもがいている。


「ふふふ、あーはっはっ。私を怒らせた自分を恨むがいい」


彫刻刀がネズミの背に刺さり、悲鳴をあげ動かなくなった。


パンパカパーン


脳内にファンファーレが響くと同時に、ネズミが光となって消えた。尻尾を残して。


「ドロップアイテム? へぇー、初戦でゲットできるとかついてる」


ラッキーとジャージのポケットに仕舞い込む。

今日は戦闘に慣れるためにあまり長時間いるつもりもなかったから、水も食料も持ってこなかった。

つまり、手ぶらだ。

ドロップアイテムが、ポケットに入るサイズでよかったー。


そうだ、さっきのファンファーレ。

確かこれって、初めてモンスターを倒したときに鳴るって聞いたんだった。

モンスターを倒すと、ステータスが貰えて、レベルとスキルが与えられるらしい。


すぐさま階段へ戻る。

その近くに、ステータスを確かめれる【真実の泉】があるからだ。水面を覗くと自分のステータスが現れ、ほかの人に覗き込まれても見えない仕組みになっているそうだ。


それを聞いた時は、「なにそれご都合主義。うまく出来すぎて笑える」と、テレビの前で1人爆笑してたわ。


そんなこともあったなと、真実の泉を覗き込む。

ふぁーと、揺れる水面に文字が浮かび上がった。


サイトウ アヤ レベル1

HP 6/12

MP 5/5

筋力 3

耐久 5

器用 5

俊足 6


スキル 育成(ポイント3)



………なにこれ。

さっきのネズミとのバトルで体力半分なんですけど。ていうか、ほぼ1桁って。


「ニートは身体弱いんだよー。運動不足なのー。仕方ないのー」


と虚しく声だけがこだまする。


ん、いや待てよ。

数字の低さばかりに目がいったけど、なんか面白いスキル付いてなかった?


もう一度水面を覗くと、やっぱりあった。


【育成】


聞いたことがない名前のスキルだ。

え、もしかしてやっちゃったこれ。

人類初のスキルげとーな気がするんですけど。


うーん、スキルの詳細は鑑定持ちじゃないとわかんないから、自力で理解するしかない。


ポイントってなんだろう?

うーん、レベルが1なのはネズミを倒した経験値がノーカウントなだけなのかな?


むむむ、これはもうちょっと頑張ってバトラないといけない予感。


くるっと、階段とは逆の方向。

目指すはネズミ、ダッシュでぐいぐいダンジョンを進む。見つけたネズミの尻尾を踏みつけ、彫刻刀を下ろす。何度か踏み外したが、鈍臭い子がいたのでなんとか仕留める事が出来た。


また泉に戻り、ステータスを確認する。


「むむむ、どういうこと? 」


レベルは1のままだ。なぜか、育成のポイントが6に増えていた。HP などもレベルと同じで数字に変化がない。


「これは家で考えますか」


ダンジョンを後にし、ゲート横にある買取ショップへドロップアイテムを買い取ってもらう。


「お疲れ様です。初日にドロップアイテムが出るなんてラッキーですね」


尻尾は580円の値がついた。

このネズミは2カ所の低級ダンジョンにしか現れず、討伐数もそれほどないためドロップアイテムの数が少ない。その上、アクセサリーとして人気があるため結構高い金額がつくんだって。


ドロップアイテムでモンスターの素材が出る事自体、数をこなさないとないらしいから、本当に運がよかったんだね。


こんな尻尾1つで、ご飯代が浮くなんて世も末だわ。


お金を受け取り、家まで歩いて帰った。

ここから家まで40分かかるけど、体力作りと節約のため徒歩ですよ。徒歩。




「うへぇー、着いた」


すぐさま自室で着替える。

ネズミが小さかったからか、それほど目立った汚れがジャージについてない。けど、気持ち的に新しい服へ替えたかった。 


彫刻刀にはしっかり血の後が残ってたので、洗面所でゴシゴシ洗う。あ、でも錆びないか心配だな。


再び部屋へ戻って、スキルについて考える。


育成って言うと、ゲームとかを思い浮かべる。

放置系の育成ゲームはよくやったなぁー、勝手にレベルが上がって楽々。


「けど、ポイントってなんだろう」


ふと、目についたのは家庭用ゲーム機とソフト。


「そういえば、RPGモノってたまにレベルでステータスが上がる以外に、ポイントを割り振るタイプがあったっけ」


だったら、私のこのスキルもそういった育成なのかもしれない。が、そこで止まる。


「ステータスが見れないのにポイントをいじれるのかな? なんか矛盾してないか? 」


と文句を言っていると、ポーンと、目の前に私のステータスが現れた。って、え?


「鑑定以外でステータス見れるなんて初耳なんですけど、て、え、これって好きなように自分をいじれるってこと? 」


試しに、筋力の数値の隣にある→に触れてみる。


「おお、3から4にあがった。あ、ポイントが1つ減っている」


ということは、マジで自分のステータスをいじれちゃう系の素敵スキルってことか。


「すごい。マジ有能……ってあれ? なんで彫刻刀の文字がここに? 」


真実の泉には映し出されなかった文字。装備の文字があり、彫刻刀と書かれている。


「え、いやーまさかね。 え、でも出来たらやばくない? 」


恐る恐る、彫刻刀の文字に触れる。


「キターーー、マジ神スキル」


なんと、彫刻刀にレベルが現れ、レベル2となった。まさか、自分だけでなく、装備まで育成できるとは恐ろしい子。


この後、残り4ポイントを何にあてるかで1日が過ぎていった。



「ふふふ、完璧」


寝る間も惜しんで考えた結果、彫刻刀に全振りした。


「ステータス自体はレベルで上がるだろうし、このスキルでしか出来ないことをするべきだよね。うんうん」


ということで、彫刻刀ちゃんを育ててみることにしました。ふふふ、どんな威力になるのか楽しみだわ。


やり遂げた達成感からか、電池切れのオモチャみたいにベットに倒れ込み眠りについた。


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