黄色い僕と黄色い君
僕は歩いている。
このコンパスがどこを指しているのか。
知らずに僕は歩いている。
何故歩いているんだろう。
砂漠なのか、はたまたうっそうと生い茂った森なのか。
僕はどこに向かっているんだろう。
何故一人で歩いているんだろう。
どこに向かっているんだろう。
ここはどこ?私は誰?
何故歩いているんだろう。
疲れたからすこし休もうか。
よし、休み終わった。
ここはどこだろう。
あれ、あそこで何かうごいたぞ。
やあこんにちは、あなたはだれ?
-やあこんにちは。僕は君だよ。
不思議なことを言うなあ。君は君じゃないか。
-そうだよ。僕は僕で、君は君さ。
-だから、僕は君で、君は僕なんだよ。
そうかあ、君は僕だったのか。
でも僕は、黄色くないよ?
-そうだね。でも色なんて一緒さ。
-もっと言うと顔も体もちがうね。
僕はそんなにもじゃもじゃな毛じゃないよ。
爪も伸びてないし、牙もない。
-そうなんだ。
-僕も爪や牙が無かったら人気者になれたかなあ。
君は人気者になりたかったのかい?僕もさ。
-そうだったんだね。
-じゃあ人気者になるにはどうしたらいいかなあ。
じゃあ、赤いシャツ着てみるってのはどうだい?
-それじゃあ完全に君と被っちゃうじゃないか。
そうか、個性は大切だね。
-それはなんだい?いい匂いがする。
これははちみつだよ。僕の大好物さ。
-いいなあ。ますます君が羨ましいよ。
君が好きなものはないのかい?
-そうだね、僕はケチャップが好きだな。
じゃあケチャップを持ち歩くのはどうだい?
-可愛くないよ。
そうだね。
-難しいなあ、なんかいいアイデアないかな?
アイデアが思い浮かぶと頭の上に電球が浮かぶんだよ。
-なんだいそれ、浮かぶわけないじゃないか。
比喩表現だよ。君には難しかったかな?
-随分と上から目線だなあ。
そりゃそうさ。今のとこら僕の方が人気者だからね。
-そうだね。何も言えないや。
雨が降ってきた。雨宿りしよう。
-そうだね、何かいいアイデアが浮かぶかもしれない。
僕も一緒に考えるよ。
-君は優しいなあ。僕も優しくなりたい。
そうだね。優しいと嬉しいよね。
-僕は嬉しいなあ。どうもありがとう。
君は素直だなあ。僕も嬉しいよ。ありがとう。
-さて、何から始めよう。
そうだね、まず爪を切って牙を抜いてみようか。
-痛くない?
わかんない。
-痛いのはやだなあ。
でも人気でないよ。
-そうかあ、なら仕方ないね。
ほら頑張って。手伝うよ。
-わあ、抜けた。これでいいかい?
うん。随分可愛くなった。
-本当に?ありがとう。
本当だよ。人気が出そう。
-嬉しいなあ。街にでてみるよ。
いや、まだ雨が降ってるから濡れちゃうよ。
-いいんだ、僕は嬉しいから。
そうか。気をつけてね。
-うん、ありがとう。
こちらこそ。ありがとう。
-じゃあ、また。
うんまた。
彼は行ってしまった。
表に出た途端、雷に打たれていたように見えた。
何かいいアイデアが浮かんだのだろうか。
頭に電球どころの話ではない。
相当なアイデアが浮かばないと雷はでないだろう。
まるで10万ボルトだ。
人気者に、なれたらいいね。
赤いチークをほっぺにぬるといいよ。
きっとかわいい。
僕は歩く。
次はどこに着くんだろう。
僕は歩く。