百鬼 不条理な獣
「店主!日本酒頂戴」
よく通る声でカウンター席に腰を落ち着かせ
「お客さんウチに日本酒は置いてないよ」
「じゃあ何が置いてあるだい?」
すると店主は困った顔して
横文字ばかり唱えやがる
「この店には俺の肴に合うモノがねぇ」
言いたげな表情してるが仕方ないだろうよ。
無い物は無いんだ。
「アンタの肴ってのは何かしら?」
見知らぬ顔にいきなりアンタと言われた事に
苛立ちを覚えつつも
「なぁに、単なる昔話だ」
俺の話に興味持った奴がいる事には
悪い気はしねぇ。
夜が更けてく。
酒のない煙たい昔話合戦。
アンタも獣。
「俺は不浄狸だ」