第二十六話 対決
異世界転生に勢力争いの要素を加えた作品の第二十六話です。
秩序の使者と対決マサキ達、戦いは激戦となる。
初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!
読んでくれたら、もしかするとなんでもするかもしれません!
俺とネイリーンには気まずい思い出となったメルデでの一夜だが、予定どおり旅の疲れを風呂と美味い酒と料理、そしてまともなベッドでの睡眠で癒した俺達は翌日には再びトリムに帰るために出発する。もっとも、この帰路の旅は秩序の使者との戦いが予想されていた。
「人の気配がする! 気を付けて!」
メルデの鉄門を出てから数時間が過ぎた頃、山道の傾斜が穏やかになり開けた野原が見え始めたところで先頭を進むルシェラが警告の声を上げた。
素早く臨戦態勢を取る俺達の前に、白いマントを纏った四人の人影が現れる。もちろん彼らはグロードの工房前で遭遇した秩序の使者達だ。事前の相談では野営時に襲ってくると想定していたが、正攻法で来るようである。
「あなた方を待っていました。単刀直入に伝えましょう。そちらが持っているミスリル銀の鏃を、あの強情なドワーフが提示した倍の金額で買い取らせて下さい。そうして頂ければ、あなた方は被害を出すことなくこの場から離れることが出来ます」
おそらくは彼らのリーダーなのだろう、グロードと交渉していた黒髪の女性が俺達に条件を持ち掛ける。その言葉は丁寧だが、内容は随分と脅迫めいている。要は『死にたくなければ言うことを聞け!』である。ドワーフを非難しているが彼女こそが傲慢だ。
「待たせていたところで悪いけど、断るよ!」
「まあ、そうでしょうね。・・・では、力で決着を付けましょう!」
アリサが迷うそぶりも見せずに回答を告げると、黒髪の女は苦笑を浮かべて手を上げる。答えは聞かなくてもわかっていたという感じである。それでも交渉から始めたのは戦力的に自信があるのか、あるいはそれが秩序のやり方なのだろう。
女の合図を受けて、あのイケメン戦士と謎のエルフが武器を構えて前に出る。それに対抗する為、俺とネイリーンが相対する。
俺の剣の腕はまだ半人前だが、ネイリーンに二人の相手を任せることは出来ない。ルシェラの得意とする武器は弓であり、アリサは魔法に専念した方が戦力的に有利となる。エルフの相手は俺がするしかないのだ。
槍を半身にして構えるエルフに対して、俺も右半身して剣の切っ先を向ける。槍と剣の違いがあるもののお互いが軽めの鎧を着る戦士職のせいか、戦闘スタイルが似るようだ。
俺にとって本格的な戦いはこれが初めてだが、既に一号達サキュバスとやりやった経験があるためか、恐怖心を感じつつもどこか落ち着いていた。もう、ゴブリンから命懸けで逃げ出していた俺はいない!
「てい!!」
気合の声とともにエルフはその得物で俺を串刺しようと一気に間合いを詰める。当然ながら俺はそれを阻止するため剣で槍の穂先を払う。だが、その動きをエルフは予想していたのだろう。素早く穂先を引くと改めて突きを繰り出した。
「くそ!」
エルフの反応の早さに悪態を吐きながら俺は攻撃を辛うじて避ける。間合いが詰まったので反撃の機会はあったが、それを諦めて俺は自分から後ろに退いて体勢を整えた。
今更だが、エルフの近接戦闘スキルは俺を上回っている。今の攻撃を避けることが出来たのも、最初から守りに専念していたからである。欲を出して下手に攻めれば直ぐにでも串刺しにされていたと思われる。
「おのれ! 逃げずに私と勝負しろ!」
今のやり取りで俺の実力と意図を見抜いたエルフは非難の声を上げる。もちろん、その挑発に乗る気はない。互いに四対四の戦いである以上、俺がこのエルフを自分に引きつけておくだけで、アリサ達は対等に戦えるのである。
タイマンならジリ貧だが、パーティー戦なら敵の一人を長く受け持つだけでも勝利に貢献出来るのだ。そして、俺の遅延作戦によってエルフの性別が判明する。声からするとこのエルフは精悍な美女のようだった。
「マサキ、離れて!」
ルシェラの指示を聞いて俺は更に後ろに後退する。下がると同時に風切り音が響き、エルフに矢が吸い込まれようとする。だが、エルフ女は槍を車輪のように両手で回すとルシェラの矢を払い落した。恐るべき槍捌きである。
「風の精霊よ、その力を持ってあの者達の声を奪え!〝サイレンス〟」
ルシェラの援護は防がれてしまったが、俺とネイリーンが壁になることで稼いだ時間でアリサが魔法を完成させていた。
彼女の魔法の標的とされた敵リーダーとその隣の魔術士タイプの男は突然かき消された自分の声に狼狽えたように口をパクパクさせている。一見すると間抜けな様子だが、声を消すことでアリサは敵の魔法を封印したのである。これで戦いの主導権は俺達が握った。
もっとも、黒髪の女リーダーはそれで諦めるような様子は見せず、自らも腰の剣を拭くと、号令と思われるパントマイムをして仲間とともに間合いを詰めてくる。おそらくは乱戦に持ち込んでアリサの範囲魔法を防ぎ、接近戦で戦いの流れを変えるつもりなのだ。そして、敵側もこれまでの戦闘で俺達の弱点を見抜いたに違いない。
そう、黒髪のリーダーはエルフ女と協力して一番弱い俺に向かって来た!
エルフが繰り出した突きを俺は剣で捌く。だが、その後ろから現れた黒髪女の一撃までは対処出来ずに小剣の一撃で右脚を擦るように切りつけられる。続いて再び小剣の切っ先が俺の顔に飛び込んでくるが、これは頭を下げることで辛うじて避けた。敵リーダーは左右の手に同じ小剣を持った二刀流使いだった。
「ぐあ!!」
「マサキ、もう少し耐えて!!」
脚に走った激痛で俺は悲鳴を漏らす。一番近くで戦っているネイリーンが心配の声を投げ掛けてくれるが、彼女も盾を持った重装戦士を相手にしており、しばらくは俺を助ける余裕はないだろう。
「く!」
エルフ女が俺に必殺の突きを繰り出そうと構えるが、危機一髪のところで彼女の肩に矢が突き刺さる。ルシェラの援護である。俺は彼女にありったけの感謝の言葉を思い浮かべた。
だが、俺の命運はそこまでだったようだ。敵リーダーは俺自身の身体を使ってルシェラからの射線を防ぐと、左側から双剣で襲い掛かって来た。右手からの攻撃を自分の剣で弾く俺だったが、もう片方、左側の剣の切っ先が俺の脇腹を捉える。
革の鎧とその下の皮膚と肉を切り裂き、肋骨を擦る嫌な音が俺の身体に響く。同時に熱湯を掛けられたような錯覚を下腹部に得る。それが自分の血だとわかる頃には俺は地面に膝を付いていた。
「「「マサキ!」」」
アリサ達の声が俺の鼓膜に響き、ネイリーンが危険を冒してまでこちらに駆け寄ろうとする様子が、薄くなった俺の視力に映る。くそ! それじゃ、ネイリーンまで危険になるだろう!
「く、来るな!」
俺は必至の想いでそう叫ぶと、今度はアリサを敵として向かって走り出した黒髪女に、今出来る精一杯の攻撃を繰り出した。
「〝ドレイン〟!」
俺はほぼ無意識に左手を突き出して暗黒魔法を発動させる。元々大ダメージを与える魔法ではないし実力差もあったが、これで一矢報いることは出来る!
「!!」
背後から俺の魔法攻撃を受けた敵リーダーは、体勢を崩すと声にならない悲鳴を上げたようだった。瀕死と思われた俺が思いがけない魔法を使ったのだから驚くのも無理はない。
いずれにしても俺の身体の痛みは敵から吸い取った体力によって僅かに軽減される。この場でステータス表を見ることが出来ないのではっきりしないが、少なくても死の淵からは脱したようである。
その間に俺の警告でネイリーンが戦線に復帰し、アリサも白兵戦に向けて剣を抜いていた。そしてルシェラは俺が戦っている間にも矢を射続けていたのだろう。エルフ女を牽制しながら残った魔術士にも矢傷を負わせていた。
「ミルダ! 撤退しよう!」
自陣営が不利だと判断したエルフ女が仲間に呼び掛ける。それでリーダーの黒髪女も戦局を把握したのだろう。身を翻して後ろに退く。イケメン戦士も徐々に下がり四人は合流する。アリサが魔法を唱えようとするが、それより先にエルフ女の魔法が完成し、秩序の使者達はこの場からその姿を消した。
「・・・消えた?!」
「おそらく〝リターンホーム〟だよ。移動系の魔法で特定の場所に術者とその仲間を転移させること出来る。なんとか追い払うことが出来たみたいだ・・・それよりマサキ! 大丈夫なのか?! 今直ぐ〝ヒーリング〟を掛けるから!」
「そうです! マサキ、大丈夫なのですか!!」
俺の疑問にアリサが答えてくれるが、直ぐに身体を支えて魔法の詠唱を開始する。それと同時ネイリーンもやって来て反対側から抱きしめられた。
「死に掛けたけど・・・その甲斐はあったな」
二人からの手厚い介抱と回復魔法を得て傷を癒した俺は苦笑しながらそう呟いた。
ご愛読ありがとうございました。一日一回、三千字程を目標に更新しますのでこれからもよろしくお願いします。
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