アルデーテへ向け出発
グレンと少し話をした後、鈴はホットミルクで体が温まり心地よく眠りについた。そして、辺りも明るくなり始めた早朝に三人は町へ向かうため出発した。
かなり寝ぼけ眼だった鈴だが、歩いていると次第に目がさえ始めた。イナトはもしまたモンスターや食屍鬼が現れても困らぬようにと大きな姿のままだ。
「昨晩は眠れましたか??無理をさせてしまってスイマセンでした」
ノアは鈴の横を歩き、心配そうに首をかしげた。気を使ってくれているのだろうと、笑みを浮かべ首を振った。
「食屍鬼は吃驚しましたけど、キャンプみたいで楽しかったです」
多少のアクシデントはあったが、火を焚きそれを囲んで料理をして食べるのはキャンプのようで楽しかったのは事実だ。ありのままの事を伝えると、ノアはホッしたように息を漏らしていた。
一夜を明かした場所からかなり歩いた頃、風に乗って潮の匂いが漂ってきた。人の声も疎らだが聞こえ始め、イナトはいつもの姿に変化し定位置である鈴の肩に飛び乗った。
段々と木々が少なくなっていき、真っ青な海が姿を現す。いつか行った沖縄の海を思い出す透き通った水にテンションがあがるのを感じた。
「アルデーテには船に乗っていくんです」
あれですねとノアが指を指した先では海には大きな船が停泊していた。木で作られた足場を歩いて、いろんな年代の男女が船に乗っている。
三人も船に乗るため木の足場を渡り、船に向かう。順番に並んでいた鈴は、チラリと乗り口に視線を向けた。お客は乗員にお金を渡して船に乗り込んでいる。
「……金は大丈夫だ」
お金がいるのかとモゾモゾ探そうとする鈴をグレンは止めた。エッ??と頭にハテナが浮かぶ鈴を含んだ三人の番、先を歩いていたノアは乗員にあるバッジを見せた。
「アルデーテからモンスターの討伐依頼を受けました。私とこの男は王都の討伐ギルドメンバーです」
グレンも懐からバッジを見せる。乗員はそれを見ると目を丸め、すぐさまにピシッと敬礼をした。
「お勤めご苦労様です」
「この子の運賃はこれを」
ノアは銀貨を数枚乗員に渡す。えぇ返さないとと焦る鈴の腕をグレンが引く。
「行くぞ、後がつっかえる」
グレンが指摘するとおり、後ろには人がまだまだいる。鈴はあわあわしていたがとりあえず船の中へと入った。
中に入ると待っていたのは、豪華な装飾をした照明にフワフワの絨毯、広々としたそこはテレビで見たことのある豪華客船の内部のようで鈴は開いた口がふさがらずいた。
確かに乗るときに、大きすぎじゃね??と真顔にはなったがこれほどまで豪華な船だと思いもしなかった。となればお金は高額=返さねば!!と懐を漁ろうとする鈴をノアが止めた。
「さぁ行きましょう。アルデーテにつくまでには少し掛かりますから、あっちには飲み物や食べ物もあります、朝食を取りましょう」
「いや、その前にあのお金」
「……女性にお金を払わせる男だと僕は思われているのですか??」
ニッコリと効果音が尽きそうなほどノアは満面の笑みを浮かべた。返す言葉を失い口がパクパク虚しく動いた。
「男の顔を立てると思って、奢らせてください。それに昨晩のお詫びでもありますから」
そこまで言われると、食い下がる事も出来ない。気が引けるが素直に、好意に甘えようと鈴は頭を下げお礼を言った。それに満足したノアは鈴の頭をひと撫でし腕を引いた。
遠くで船の出港を知らせる大きな汽笛が聞こえ、緩やかに船が動き始めた。
向かうは、水上都市アルデーテ。




