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真夜中は殺人者  作者: 恋刀 皆
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第4話「To Here Knows When」

 さぁ、これからは高校一年から成人、二十歳になるまでの僕の概要だ。

俺の宿命ゆきこくんに出逢えるまで、あともう少し。


 高校でも小中と相変わらず、イジられる役割は変わらなかったが、

小中の頃より少し広いせかいに移り、新しい人間関係の中で、

イジメを受けているという感覚は、だいぶナリをひそめた。


 部活もやりたかったサッカー部に入れたし、

義務教育ではないから、授業も寝放題。

俺は自分の将来など何も考えていなかった。


 だが、例え政治家や官僚に万が一なれたとしても、それがなんだというのだ。

人間は大きな肩書きをもったところで、幸せになれる訳ではない。

みんな、居心地の良い場所を求めて、

揺れて転がり、おさまるべきところへ行き着くのだ。


井の中の蛙でさえも、井の中で終生を過ごす事を覚悟すれば、

それはせかいそのものだ。

大海を知ろうとも、またさらに宇宙が広がっているのだから。

個人で何処までのせかいを知っても、

例え天才と呼ばれる者が存在していたとしても、

その能力の差など、せかいから見れば、誤差に過ぎない。


井の中の蛙、井の中を知る、かな。


 えっと、それでは高校時代を思い出そう。

ゴトーにアツシ、マルにキド、シギョウにノムラ、ホンダにキノシタ、

コジマ先生にフクシマ先生、カンペイにタダヨシ……色々思い出すなぁ。

嗚呼、高校は別だったけれど、ニワとの出会いは忘れちゃいけない。


そして……ポケベルなんてのも流行ったなぁ。


 サッカー部だけは、真面目に取り組んでいた。本当にやりたい事だったから。

練習は厳しめだったけれど、

部活というものに、生まれて初めてやり甲斐を感じた。

1500m走でも5分を切れる様になった。

ま、日本記録に比べたりしたら、それこそ“井の中の蛙”だけれど。


 プロサッカーリーグもこの頃が黎明期だったから、

俺はまだ戦術の知識さえ全く知らなくて、

サッカーについて、俺より詳しい友だちから色々と教わっていった。

工業高校で、デザイン科以外はほぼ男子校だったから、恋も全くしなかった。


 のちにキャプテンとなるアツシと、

副キャプテン(カタチだけ)の俺はよく気が合って、

そのお宅にはしばしばお世話になり、

煙草もアツシから教わった。(良い子は真似しない様に)


 俺の人生の大きな汚点となる出来事も、アツシの家で起きた。

その前に、俺の家でその準備段階が構築されてゆくのだが、

それは、アツシ、キド、マル、そして、

女子マネージャーであるホンダが我が家に来る事で起こった。

どんな流れでそうなったのかは忘れてしまったが、

俺の家にてホンダの胸を揉むというイベントが発生した。


今思い出してみても、なるほど、確かに女性の胸というものは、

男性の本能を刺激するのは確かな事実の様だ。

一度揉むともう一度揉みたくなる。


 そこで一度目の経験から、もう一度ホンダの胸に触れてみたくなり、

アツシの家で、アツシの彼女であるホンダの胸を揉みたいと思った。


 どういう思考経路を辿ったか意味不明であるが、アツシに許可をとれば、

ホンダの胸を揉めると思い、アツシに尋ねて許可を得て、

ふたたびホンダの胸を揉む機会を得た、ホンダは疲れて別室で寝ていたので、

胸も揉みやすいだろうと内心昂揚した。


 しかし揉み始めて30秒程でホンダが目を覚ましそうになり、

俺はビビって離れた。

その後に襲いかかってきた罪悪感の波は今でも忘れられない。

愚かな行為に手を染めてしまった。それ以来、女性の胸は一切触っていない。

俺は下衆以外の何者でもないが、この件は思い出すだけで気持ちが悪くなる。


 そして、次に打ち込むのも、また下衆で、俺の人生の恥部だ。

小学校の頃に万引きをして、母を泣かせた事は記述したけれど、

なんと高校生になってまで、

集団で万引きをするという行為に手を染めてしまい、

結局は捕まり、ふたたび親不孝をしでかし、高校では謹慎処分になった。

しかし、万引きは犯罪である事はもう分かっていた為、流す涙もなく、

淡々と受け入れた。


 それと同時に、ある夜父が、兄と僕に、母と離婚するかもしれないと告げた。

不思議な事にとても悲しくて、

とても嬉しい感情両方が芽生えたのを憶えている。

悲しくて泣いたし、嬉しくて泣いた。結果的に両親は離婚しなかったけれど、

そのおよそ二十年後、父は俺に、「結婚はするな」と忠告して亡くなった。


 あとはこれも人生の中での大きな後悔、サッカー部最後の試合での出来事。

俺も部活は真面目にやっていたので、高校二年からは、ゴールキーパーとして、

憧れの一軍に上がれた。けれど、ある日スイーパーのアンドウという部員と、

練習中にまずい接触プレイがあり、左手の小指を骨折してしまい、

ボールに触れる事自体も困難な状態に陥った。その後試合にも出られず、

代わりに一年下のキノシタというゴールキーパーが出場する事になった。

その中で、キノシタのプレイが、隣の芝生に見えて、

俺は少しずつ自信を喪失してゆく、

今でも左手の小指は元に戻らないまま少しゆがんでいるが、


俺達の代、最後の試合まで、俺はキノシタに正キーパーの座を奪われた。

そこで、試合は相手校に圧されたまま前半を終了しハーフタイム、

コーチのコジマ先生が、「心也? 後半出れるか?」と訊ねてきた。


俺の当時の内心は、キーパーはキノシタのまま、

敗北感を味わいながら部活動を終えるのだ、

そう思っていたから、

「今のままでお願いします」と、惨めに返事をしてしまったが、今は解る。


みんなが、この試合に負けるなら、最後に俺に出ろと思ってくれていた事が。


 俺はいつも逃げる負け犬だ。

その事に当時気付けていたのなら、絶対に出場すべきだった。

負け犬でも負け犬なりの意地を見せるべきだったのだ。


サッカー部のみんな、ごめん、ありがとう、俺は間違っていた。


それでも、サッカー部に入った事は後悔していないよ。


………………

…………

……


 高校のサッカー部は俺の青春と呼べる大切な時間だった。


けれど、高校を卒業して人に言われるがまま就職し、


ミドーとバンドを組み、


その中でリーダー、マッツンと出会った、バンド活動に費やした時間程、


俺にとって最低で、かつ最高の時間は、この四十年間を振り返っても、


いまだにして、どこにも存在していないし、


俺はそこで永遠を裏切り、永遠を見つけた、








それが何かを訊ねられても、今はこんな言葉しか思いつかない……、



のっぴきならないじょうじ

なにいってんの?

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