第3話「Touched」
自分語りを三話続けてみると、違和感を覚える様になった。
気付いて当然の事柄だけれど、今までの人生を正確に語り尽くす事などできない。
つまり、あれはどうしてそうなったのかな?
これは美化し過ぎではないだろうか?
等々の断言できない思い出の方が、圧倒的に多いという事。
人生には「限定的絶対」が存在するとは思うけれど、
「絶対」はこのせかいで覚えた事はない。
せかいは矛盾するからこそ、他者を愛せるのだろうから。
完璧な絶対を覚えてしまったら、
それはもう人間と呼べるかどうかも定まらない。
おそらく神仏の領域となるのだろう。
人生とは大いなる勘違いに過ぎないというのが、現在の僕の持論だ。
だからこそ、僕は僕の物語を不安定な詳細さで語る事よりも、
僕の喜怒哀楽の水準を、「限定的絶対」とまで覚える事柄だけを打ち込む。
およそ十歳までの記憶は、僕に提示できた。
たった十年間だけれど、僕に関わってくれた人物はまだまだ大勢いる。
ナオちゃんにコバタン、セーゴにニッくん、デンダにナンちゃんコイちゃん、
数えてしまえばまだまだ語り足りない。
しかし、僕の記憶は断片的な為、思い出が淡すぎて、
それが僕の人格形成に、どの様な影響を繋いでくれているのかが分からない。
現在の思い出を僕に提示して、未来の僕の編集に期待しよう。
それでは、僕の小学五年生から中学三年生までを思い出してゆこう。
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……
小学校五年から六年までは、担任の先生が苦手だった。
なぜなら、体罰を与える様な教師だったから。
PTAでも問題にはなっていたらしい。
僕は思い出のしおりなどで、
「ひょうきんな人」とクラスメイトには思われていたらしいが、
僕の主観では、よく先生に殴られて笑われていただけだ。
笑わせるのと笑われるのでは大違いだ。
担任からは部活動には必ず入る事とされていた為、
季節ごとに、
野球部に入ったり、水泳部に入ったり、サッカー部に入ったりしていた。
その最たる原因は、小学校のグラウンドが、余りにも狭かったので、
複数の運動部が同時に練習できないという有り様の為。
小学校の運動場にものぼり棒はあったので、
おそらく学校でも自慰行為をしてはいたのだろうけれど、記憶は薄い。
それよりは、実家のドアノブふたつに掴まって行っていた記憶の方が余程濃い。
小学五年生まで、その行為を誰かに咎められた記憶も無い為、
僕はその行為の恥ずかしさを教えられずに生きてきてしまった。
しかし、小学五年生で精通した日から、
のぼり棒による自慰行為は終わりを告げる。
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なんか……真面目に打ち込んでいるとシンドいから、僕から俺に戻る。
四十年間を振り返っても、一人称は「俺」を使っていた期間の方が長いし。
特に読んでもらいたい人達は、僕の家族くらいだし、
真面目もほどほどにしないと息が詰まる。
一人称を変えると、思考形態も変わるかも知れない。
せかいじゅうで一番愛しい女性には、
チンピラで、さらにその子分とまで評価をくだされた、
チンピラくずれに成り下がろう。
一人称を「僕」にしたのは、
僕として生きてゆく事に納得したからだった。
あと何故、メスブ○やメス○レイという言葉は存在するのに、
オス○タやオスド○イという言葉は、中々浸透しないのだろう!?
僕は倖子君のオス○タだブヒブヒ。
まぁ、現代もまだまだ所詮その程度という事か……。男の性、女の性。
それと何かの本で読んだが、
「僕」と「俺」と「私」をよい塩梅に含んだ一人称があったらいいよね?
そんなお言葉を拝読した時、確かになぁ、と俺は思った。
日本語が永く受け継がれてゆくのなら、ぜひ発明していただきたい。
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…………
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俺は頭が悪いので、
際立った思い出を箇条書きにして、自分を紐解いてゆこう。
小学五年生から六年生の頃、
○精通してビビった。
○飼い犬ビル(兄命名)がいなくなった。
○リスもいなくなった。
○実家の大きな水槽の中に無邪気に花火を入れて、
中に居た金魚を、結果的に殺した。
○兄が傷ついた鳩を連れてきて、
ポポと名前を呼ぶと兄によって飛んでくるくらい懐いた。
○車道で親猫が轢かれて死んでいたので、仔猫をひろって俺がミルクをあげた。
○後日家の玄関に、鳩のポポの血糊が、
俺がひろってきた仔猫がやったのではと疑われる。
○川で亀をつかまえたら、その後卵を産み、地中に埋めたが孵らず。
(以上七件からもう二度と生き物を飼う事は止そうとこれまで誓いを立てている)
○そろばん塾に通う。
○そろばん塾の先生に、
“慌てる乞○は貰いが少ない”と教えを受ける。(名言名言)
○トモヤスという女の子を好きになった。
(しかし、彼女はシミコウという二枚目のダチが好きだったので、淡く消えた)
○担任に今でも理不尽と思える程の体罰を受けまくる。
○どの部活でも、大体二軍どまり。水泳だけは人並み。
○学芸会で誰もやりたがらないので、主役になる。
○体毛がどんどん濃くなり、醜くて自分の身体が嫌いになる。
○万引きが流行り、応じたけれど、一回目で即座に捕まり、母泣かす。俺も号泣。
○追加項目の為のスペース。
ぁあ……現時点ではこれぐらいかなぁ、あとは未来の俺が編集すればいい。
あとは、このくらいの頃に兄が大学へゆく事が決まり、
別れ際がどうしようもない程悲しくて、
新幹線を見送りながら、泣いてしまった。
もう少し時が経つと、姉の結婚も決まり、晴れ姿を見て、
やはり泣いてしまった。
姉や義兄は、俺に愛情を向けてくれていた。でも俺は無関心だった。
愛情を知る事で、自身に愛情がない事を思い知らされた。
だから、俺は、僕になった。
………………
…………
……
中学一年生から中学三年生まで、
○中学一年の頃は成績が中の上くらいだったが、どんどんダダ下がり下の下へ。
○勉強も学校も大嫌いなので、
両親に高校には行きたくないと訴えたが却下される。
○人生に色々諦めて、適当な高校を探すしかなくなる。
○兄や家庭教師が時間を割いて勉強を教えてくれたのだが、
やる気がないので効果なし。
○部活は野球部に入る。
(本当はサッカー部に入りたかったがイジメの影響で流されるまま、情けない)
○修学旅行の夜に他の生徒の部屋で遊んでいたら、
先生に見つかり、廊下に正座させられる。
○文房具は堂々とアニメグッズでかためていた。
○中学二年はキタザワという女の子が好きだった。
○しかし中学三年にはイチノミヤという女の子が好きだった。(尻の軽い男だぜ)
○タカシって友達とサッカーのPK勝負をして、
負けてイチノミヤに告白する約束に。
○男は正々堂々と、イチノミヤの自宅に向かい、お伺いしたが不在で告白できず。
○その後、電話したら、なんとOKされる。
○最初のデート一回だけで速攻フラれる。
(確かに今はあのデートコースではダメだと悟る)
○野球部でもパッとせず、万年二軍。
○殴られたり、叩かれたりしていない教師の数の方が少ない程、
体罰を受けまくる。(俺はヤンキーでは決してない)
○コバタンという悪友にアニメ、マンガ、ゲームを教わる。
○コバタン、なんでそんなにお金持ってんだと疑念を抱く程、
エ〇マンガを借りまくる。
○兄の大学からの帰省が嬉しく、そして、お土産のイカ飯の美味さに驚愕する。
○女子グループ数名にヴァレンタインのチョコを頂く。(有難や)
○しかし、ホワイトデイのお返しをした記憶がない。(最低だ)
○追加項目の為のスペース。
以上から、中三までの俺に、僕からアドバイスできる事。
俺? やりたくない事、しなくてもいいよ?
どちらにせよ責任は俺が取らされるんだからね?
両親でさえもこのせかいに産み落とした、僕への責任など取ってはくれない。
それに、
総理大臣もホームレスも、同じ人間だよ?
どちらも凄いし、大した事ない、普通の事なんだ。
苦しかったよね? 俺も苦しかった。ごめんな無理させて。
これからの君の人生に大きな展望はない。
だけど、ひとつだけ、僕が生きててもいいと思えるものは、必ずできるよ?
永遠という、唯一、人生に意味を見出せる夢がね。
かんどうした
そして
きがふれた