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時空魔竜騎アースガルンプロット.  作者: 一ノ元健茶樓
プロットの章
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99/129

少女の終わり

 


 prof.ロランは、目を覚ました。

 精神体であるはずなのに、涙を流しながら。


「明るいな…」


 その大きな穴から射し込む光を見て、ただ呟く。

 上体を起こし、辺りを見る。


 そこには昨夜と変わらぬ風景と、賑やかな声が、上から聞こえて来ていた。


「急がないと…あなたの、あの人は、どこかへ行ってしまうわよ…」


 prof.ロランは、驚いて振り返る。

 するとすぐ後ろに、見知らぬ女性が立っていた。

 姿は透き通り、見えにくい。


「あら、やっぱり私が見えるのね…」


 そう言いながら、prof.ロランの肩に手を置く女性。


「うわあああああああああっ!!!!な、何だお前!どっから出てきた!なんで俺に触れる?!」


 驚くロランを後目に、地上を指差す。


「…行ってしまうわよ?あの人…」


 そう言われ、怪訝な顔をしたprof.ロランだが、突然我に返り背に翼を出して飛び立とうとする。


 そこへ女性は、手を伸ばし翼を掴む。


「いっ?!お前、なんで俺を掴め…うわあっ!」


 女性は、翼を掴んだまま手を振る。

 その勢いでprof.ロランは、地面を滑る。

 女性は、prof.ロランへと問う。


「あなたは天使なのかしら?」


「うるさい!アイツが待ってる。早く行かないと!」


 また飛び立とうとするprof.ロランの翼を、女性は強く掴む。

 身動き取れないprof.ロランは、女性を睨む。


「怖い顔をしているのね…私の名は、ミア。この地下の魔女と呼ばれるわ。私は、何が人と違うのか分からないけれど、皆は私を恐れるの?教えて下さらない?何故?あとアナタは天使なの?」


 prof.ロランは、ただ黙って魔女ミアを見つめ、翼を消した。

 突然無くなった翼を掴んでいた魔女ミアの手は、名残惜しそうにしながら布の中へと消えて行く。


「俺は天使じゃない。あと俺が見えているって事が普通じゃねぇよ。じゃあな…」


 恐る恐る、魔女ミアを警戒しながら翼を出して、飛び立とうとするprof.ロランの事を、魔女ミアは黙って見ていた。


「アナタと私は、結ばれた…いつかの時に、また出会うでしょう…形を変えたとしても…」


(?)


 prof.ロランは、それを怪訝に思いながらも少女を追うために飛び立った。


 prof.ロランの姿は見えなくなる。


「そう。私が…あの子と…もう1つの選択肢となるのね…」


 魔女ミアがその言葉を発すると、被っていた布が突然燃え出す。

 その中から魔女ミアの姿が現れる。


「ああ、眩しくもないし、暖かい日の光ね。存在するとは、いとも容易く、いとも長い年月を要するわ…」


 そう言いながらフワリと飛び立ち、地下の穴から上空へと飛び立って行く。


「さよなら。私を戒めた者達よ…永遠に」


 魔女ミアは、大きな穴へと向かって手をかざす。その手の先には、光の円が出来る。魔女ミアの全身が淡く光る。


「守護よ去れ、我が過去を消したらん。永久へと…」


 そう呟くと空から大きな燃える石が、落ちて来る。


 それは穴と同じくらいに大きい。


「…パトリオット・コメット…」


 魔女ミアは、飛び立って行く。


 その後方では、大きな爆発と燃え上がる粉塵が、舞い上がっていた。


 その少し前。


 少女と地下国家ドランの王ジュードは、事情を話す為に、兵士長や、少女の町の兵士達が居る、騎士団のキャンプへと来ていた。


「姿を見せれないまま、話をする事、許して欲しい…我々の国家は、危険へと晒されている。それは先刻の話通り、私の国に住まう魔女ミアのせいなのだ…彼女は、我が国を翻弄する。怪しい術で我が民を凶暴化させる。そして地上へと舞台を送り込む…」


 そう話していた王ジュードであったが、少し息苦しそうにしている。

 薄らと王の姿が見える少女は、王の傍へと寄り添う。


「ここからは私が話します。王様は、どうか休んでいて下さい。地上の空気と光は、お辛いでしょう?さ、影へ…」


 歩く音だけがする。


「私と王様の出会いは、かなり前です。私は、国家ドランの夢見巫女によると、魔女ミアと今後何らかの繋がりを持ってしまうらしいのです。

 魔女ミアと国家の繋がりを断つ為に、王ジュード率いる特務隊に狙われましたが、その後、長い年月の間に改心をし、私との和平に応じてくれました…。

 彼らの行いには、正当性があり、私たちは許さないかもしれない。

 けれど私だけでも、それを許そうと思いました…。

 その気持ちは、今も変わっていません…」


 兵士長は、少女の肩を掴み声をかけた。


「けれど君が、地下の王国へ嫁ぐ事は無いだろう…それが何故、その魔女との関係を断つ事になるんだ…」


 そこへ兵士長の嫁が、割り込んで来る。


「そうよ、私もそれは疑問だし…それに…あなたに好きな人は居ないの…?そんなの契約結婚でしかないのよ?国を救う為だとは言え、他の解決策は無いの?」


 少女は、ただ下を向き、首を振った。

 そして、ゆっくりと口を開く。


「その、い、今は、好きな人なんてのは、い、居ませんが…も、もし、この先、誰か、でででっ!出来たとして!それが魔女ミアとの繋がりになるみたいなんです!」


 その場に居た一同は、思った。

 絶対に少女を地下などに行かせるべきでは無いと。

 その理由は、皆の心ごとに違った。


「そこの意味をもう少し詳しく聞かしてくれ…じゃないとお前を嫁になんて出さん!」


 兵士長は、突然ボルテージを上げる。


「そうよ!?お母さんだって反対なんだからね!」


 兵士長の嫁も自然と入って来る。

 そして周りからもガヤが入る。


「そうだ!もう俺たち兵士隊のお姫様なんだからな!」


「さっきの作戦だって、あんな怖い思いして!」


「どこの王様か知らねぇが、自分の嫁候補ならもっと安全な作戦を立てろ!」


「こんな可愛い子をお前にやれるかぁ!」


 キャンプは、一気にヒートアップし始める。

 そして皆が、立ち上がり王が居るであろう場所へと詰め寄ろうとした時だった。


 とてつもなく大きな爆発音がする。

 外から監視の兵士が、走って入って来る。


「た、大変です!空から巨大な燃える石が!地下の国が!爆発しました!」


「な、なんだと?!」


 そう言った地下の王ジュードは、姿を見せ外へと走り出す。

 布を被り光を遮断し、自身の術でも姿を隠す。


 その姿は、少女の目からも消える。


「…そんな…何が起こって…うっ!」


 すると突然、少女は首に苦しさを感じる。そして、少しずつ足が宙へと浮き出す。


『お前のせいだ…お前さえ居なければ…もっと簡単に…この世界を…我が国が…』


 皆が、外へと意識を取られている間に、少女は姿見えぬ者により、連れ去られてしまう。

 首の締め付けにより少女は、意識を失う。


 兵士長が、その気配に気付き振り返るが、そこに少女の姿は無かった。


(どこへ…行ったんだ…)


 その事を深く考える暇も無く、キャンプ付近で、大きな爆発音がする。


 空から燃える岩が、降り注いでいた。

 その狭間に1人の姿が見える。


 魔女ミアであった。


「何処なの?!出て来なさい!繋がりを持った私に、もう誓約は無いわ!私をダシに使ったお礼をしてあげるからっ!」


 その形相は、恐ろしくも楽しそうであった。

 その鋭く美しい瞳に、気を失った少女の足だけが、走って行く姿が見える。


「ふぅん。そういう手に出たワケね…次の地下の魔女は、その子に…」


 落ち着いた感じでそう言うと、すぐにその後を追う。

 その後ろから兵士隊の巨大機械兵器や、四角い箱、馬などで皆が追いかけて来る。


 兵士長達は、宙に浮く女と、その先に見える奇妙な足を交互に見る。


「どうなってんだ…ちくしょう!」


 兵士長は、そう言いながらも魔女達を追う。

 走る王よりも、空を飛ぶ魔女と馬などで駆ける兵士隊の方が早い。


 その距離は、縮まる。

 足は、平原の木陰を見つけ向かう。


 そこで足は、姿を消す。


(くそう…一体、どういう事だ…私がこんな目に会うなど…この娘、もう生かしてはおけん…)


 王は、木陰で自身の身を隠し、少女へと布を被せていた。


 そして王は、腰から短剣を取り出し、少女へと振り下ろす。


『起きろ!おいっ!?クソッ…!』


 突然、木陰から眩い光が弾け飛ぶ。


「な、なんだ?!クッ、眩しい…っ…め、目が…ッ!」


 王は、その眩い光に、振り下ろしていた短剣を止め、目を覆う。


「…ありがとう…と、言っておくわね。天使さん…」


 その場にいつの間にか到着していた魔女ミアが、prof.ロランへと言葉をかけると同時に、王を掴み空へと飛ぶ。


 少女は、少しだけ意識が戻る。


 大きな木から零れて来る日の光。

 けれど左側からも、暖かさを感じる。


 少女は、目線を其方へ向ける。

 すると誰かが居ることに気付く。


 空の光か何かなのか。

 少女からは、その姿が逆光で見えなかった。


「あ、あなたは…だれ?」


『今は気にするな…また、会うさ…今度こそ幸せになれよ…』


 彼は、そう言い残すと大きな翼を広げ、羽ばたいて行く。


(…天使…さん…?)


 少女は、光を見つめ遠ざかる姿を、遠のく意識の中で焼き付けた。

 それと同時に、空では爆発が起こり、魔女ミアの笑い声が響き渡る。


 兵士隊は、少女の元へと駆けつけ保護する。

 魔女ミアは、何処かへと飛び立ってしまった。


 それから数日が過ぎる。

 少女は、自身の家で目を覚まし母と父に再会する。


 兵士隊への挨拶や、街の人達との会話、職場へと足を運び、少しずつ自分の世界へと戻って行く。


 身体に異常な所も無く、平凡な世界を送る。


 魔女ミアについて兵士隊は、調査を続けていた。

 その情報は、少女まで届いては居たが、少女は自分の生活を続ける事にしていた。


 周りからも、その事について何も咎められはしなかった。

 以前の様に、呼ばれる事も無い。


 普通の生活へと進んでいた、かに見えた。


 ある時、少女は辞表を出す。

 そして貯めていた資金で、小屋を作る。


 あの草原の、あの爆発した近くに。


 そして少女は、あの時の事件で、親を失ってしまった子供達と暮らす事となった。


 国からの援助と自身の資金で、彼女は地下の民のシスターとなり、地上と地下を行き来する生活を過ごす事となった。


 それから数年が経つ。


 突然、声をかけられたシスターは、振り返る。


「…すまないわね。私のした事で、まさかアナタに迷惑をかけてしまうなんて…」


 その女性の表情を見て、シスターは微笑み、手を伸ばす。


「そんな悲しい顔をしないで。これもまた運命。あなたにも理由があるのよね?なら、仕方の無い事だわ。私もしたい様にした結果がこれなんだから」


 それを聞いた女性は、鳩が豆鉄砲を食らった様な顔をする。

 そして、笑い声をあげる。


「私は、あの王に騙され、この国で魔女と名付けられ、何でも私のせいにされた。都合の良いように。あの王は、私が他所から来たという理由だけで、私を、魂を、あの暗く、誰の助けも繋がりも無い場所へと縛り付けた…けれど…」


 少し顔を落とす女性にシスターは、微笑みながらも寂しい様な顔をする。


「辛かったでしょう?ずっと、今まで…」


 それを聞いた女性は、シスターから、そっぽを向いて歩き出す。


「…アナタにも…言わなくてはならないわ。ありがとう…って…」


 そう言い残すと女性は、何処かへと飛び立ってしまった。


 シスターは、それを笑顔で見送る。


「どうか天使の加護がありますように…魔女ミア…」


 2人にとって、これが最初で最後の会話となる。


 空を飛行する魔女ミアへと近づく者が居た。

 prof.ロランである。


「おいっ!もしアイツに変な事したら、俺がただじゃ済まさねぇからな!」


 魔女ミアは、それを聞いて吹き出す。


「…アンタって本当に馬鹿なのね。それじゃサヨナラ。私が見張っておこうかと思ったけれど、アナタに任せるから。繋がりがある以上、また何処かで会うかもね…」


 そう言い残すと魔女ミアの姿は、薄く消えて行く。


 透き通る目からの光りを残して。


 そしてprof.ロランは感じた。


 時空に吹く風の流れを。



 そして、数十年が経ち。

 シスターは、生涯、婚約はせず、自分が育てた者たちに看取られながら、その生涯を綴じた。



「おかえりなさい!」


 女神アルテアは、少女が目を覚ますと同時に叫んだ。

 その姿は、ここから旅立つ時の姿にもどっていた。

 長い夢から醒めた様な少女は、上体を起こす。


「どうだ?!気分は!?」


 ゼウスもまた、叫び声を上げながら少女へと近づく。


「あ、アルテア様に、ゼウス様…私は…」


 ゼウスは、少し落ち着いた様子で、少女へと話かける。


「無事に戻って来れて何よりじゃった…」


「そうです。本当に…」


 2人は、優しく微笑みながら少女を見つめる。


「ありがとうございます…。あれ?あの人は居ないんですか?」


 それを聞いた2人の目は、鋭くなる。


「いやぁ~、ホント。何なのかしらね。あの人は!」


「まったくもって、何なんだろうな!奴は!」


 すると、後ろから突然現れたprof.ロランが叫ぶ。


「うるせえ!俺が聞きたいわ!なんで俺の声が届かねぇで、アルテアの加護のスーパーパゥワァだけ有効だったんだよ!変な細工したんじゃねぇだろうな!?この変態女神!」


「誰が変態女神ですか!?そもそも貴方が中途半端な存在だからいけないんじゃ無いんですか?!prof.ロラン!神でも天使でも無い、ましてや人でも無い貴方が…」


 そう言った時、アルテアは自分で言った事に驚く。


「ごめんなさい。prof.ロラン。私ったら…」


 それを聞いたprof.ロランは、落ち着いていた。


「いや、いいんだ言う通りそのまんまだし。俺も悪かった」


 そう言いながらprof.ロランは、少女の近くへと行く。

 立ち上がり2人の喧嘩を見ていた少女は、prof.ロランの見たこともない表情に戸惑う。


「なぁ?」


 少女に呼びかけるprof.ロラン。


「な、何?なんだかいつもと…」


「助けて欲しい。俺を。お前のチカラで。きっとお前だ。その為に此処に来たんだ…お前は…」


 少し後退る少女。


「な、何を言って…」


「頼む!俺はやっと気付けた。だから…」


「分かったわ…」


 prof.ロランの目は見開く。


「あなたは私を助けてくれた。ううん。アルテア様にゼウス様。それに…私が今まで生きて来た全ての人が、私を助けてくれた…。覚えてはいない。だけど私には分かります。私は、あなたを助けるべきなのだと…」


 少女は、その目を閉じる。

 そして胸の前で手を組み、祈る。


 少女の頭上が輝き、辺りを照らす。


「こ、これは…」


 prof.ロランと、アルテアにゼウスも驚愕する。


 少女の頭上の光は、収束して行く。

 そしてそれは、円となり光の輪を創り出す。



「私は…私の名は…ロッシー。その失いそうな存在を統べる者…」



 目を開いた彼女は、少女では無くなっていた。






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