君が私の本を読め
薄暗い部屋。机と僅かな明かり。
空間は、宇宙のようなキラキラとした星の輝き。
それ以外は、何も無い不思議な空間だ。
そこに1人、机に向かい何かを書いている者がいる。
ローブを纏い、フードを被り、男か女かも分からない。
こちらを向かずに1人、何かを語り出す。
《私は色々な本を読んだ。そして本が好きだ。
今までと、これからで、本をどれくらい読んだか。読むのか。それで分かるだろうか?
だが、まだまだ世の中には本が、溢れている。
そして本は、また生まれ、この連鎖は死ぬまで続くやもしれん。
死なないんだけれど。
そして、これは、私が本に飽きるまで続くのだろう。
だが私は、本に飽きない。どの本も書いたその人物の、性格や人生が読み取れるからだ。
私にも読みにくい本はある。
ストーリーがつまらない。
なんだか読みにくい。
生理的に受け付けない。などなど。
だが私は、それに屈しない。
挑むのだ。。。すると、どうだろう?
新しい世界が広がり、また本を読みたくなるではないか。
無限に続く、この紙と、文字だけの世界。
その中には無限がある。
そして今、私は感動と興奮を覚えている。
本を読んだからでは無い。
それは何故か?
それは今こうして自ら筆を取り!
自ら文を書き!
私が、本を作ろうとしているからである!!
何故、今までそうしなかったのか?
このような事が起きようとは、、、まさか夢にも思わなかった。
この手で無限を作る。それは神にも等しい作業だ、きっと誰かの救いになると信じてる。いや1人は、これで救われる。
しかし、これはヤツとの約束なのだ。
そして、この私が書いた本を、ヤツに届けたいのだ。
誰も信じないだろう。
ファンタジーで、空想の世界の出来事なのだから。
読みたいか?私の本を?
それなら、ほれ。さぁ。ページをめくってみぃ。
時間はいくらでもある。ゆっくりと読め。
読んでいれば、また次が出て来る。
あ、普通の人間は時間がそんなに無いんじゃったな。。。
おっと、長話しが過ぎた。
私も執筆に戻るとしよう。
まぁ、自分のペースで読むと良い。
まずは最初の1ページを…もし、気に入って…
最後まで読めたら…
また、そ、その、、、か、感想を、聞かせるんじゃ、ぞ。。。。
わ、分かったら、は、早く読まぬか!!まったく。。。》
そう言うとフードの人物は、話すのをやめる
そして、その人の、机の上には書きかけの本とは別に、黒く分厚い本と、青い石がついたペンダントが置かれていた。
青い石が、少し輝いたように見えた。
- ミシ郊外 村 ロッシーの家 -
ロッシーは、目を覚ます。
(なんだろ、何か夢を見ていた様な…)
そして昨夜の事を思い出し、身を震わす。
ベットから飛び起き、身支度をし、黒い本を持って、ヒックへ抗議をする為に、街へと駆けた…。
「ねぇ!なんなのよ!この本は!!」
ロッシーは、ヒックの顔に、昨日もらった本を押し付けて叫んだ。
「い、いだい、おぢづいでぐで、、、」
本を顔に押し付けられたヒックは、上手く喋れないようだ。。。
そして
私の物語は…
動き出したのだ。
本当に、とてつもない速さで。
私は、着いて行くだけで精一杯だった。
今思えば、そんな事なんて、悩まなくても良かったのかと、思ってしまう。
残りカスのような私の、少しだけのワガママ。
この胸の高鳴りを、大切にしていたいというだけの。
ミシへ向かう道中、ロッシーは、考えていた。
ヒックに、どう話を切り出すべきか。
どう責めたてるべきか。
しかし、その顔は、少し楽しそうだった。
ロッシーは、ふと空を見上げた。
青が、7割、雲が2割の空だ。
あとの1割は、光だった。
少し前に、出会った青年ヒックと話す事を。
ロッシーは、何故か楽しみにしていた。
こんな本を渡され、ファンタジーな話を聞かされたとしても、未だ心の何処かに、弾む気持ちが残る。
気がつけばロッシーは、本を抱えたまま、ミシヘと向かう、足を出す速さを上げていた。
息を切らし、光を浴びながら、山道を駆けている。
ミシへと着く、少し手前で速度を落とし、息を整える。
ミシの街の門の前に、ヒックが居ることを確認する。
汗を拭い、髪を気にする。少し背筋を伸ばし、門へと向かう。
森の山道から出て来たロッシーを、ヒックも確認する。
目と目が、合う2人。
ヒックは、笑みを浮かべる。
ロッシーは、笑みを浮かべそうになるが、眉間にシワを寄せる。
「よぉ、ロッシー。ちゃんと本、読んだか?!」
呑気な顔を浮かべたヒックが、開口一番に聞いて来るのを、ロッシーは、本をヒックに突き出す用にして、答える。
「ねぇ!なんなのよ!この本…」
ロッシーが、大声でそう言う言葉を、ヒックは、ロッシーの唇に人差し指を当てて大人しくさせる。
「分かった。どんな話でも聞く。あ!いい店見つけてあるんだ。静かで、ゆっくり話せると思うぜ!茶でも飲みながら話そう」
そう言うとヒックは、ロッシーの手を握り、門の方へは行かず、街の外にある。湖の方へと走り出す。
ヒックの視線が、ロッシーから離れた時。
ロッシーは、眉間のシワを緩め、ヒックの後ろ姿を見つめながら。
ただ、引かれる手を見つめ、走っていた。
なぁ、ロッシー。
これから話す事、起きる事を、どうか受け止めてくれよ。
今のお前のままで居て欲しい。
出来れば、この1ヶ月が永遠に続けば、良いんだが。
世界は、そう上手くしてくれそうも無い。
きっと、俺が守るから。
一緒に、乗り越えて行こうな。
2人は、ミシの街から離れていない、湖の近くにある、小さな茶屋へと到着する。
「着いたぞ」
「な、なんで走るのよ…てか!手、離してよ!」
怒り気味のロッシーは、掴まれているヒックの手を抓る。
「いててててっ!何すんだ!」
「こっちの台詞よ!」
そんな言い合いをしながら、2人は茶屋へと入り、庭の席へと腰を下ろした。





