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時空魔竜騎アースガルンプロット.  作者: 一ノ元健茶樓
始まりの章
5/129

ペンダント

 


「ヒック?誰だそれは...っ!?」


 屋敷の主人は、震えるような声で叫ぶ。


「私のヒックを!返しなさいっ!!」


 黒髪の女の顔は、怒りの表情へと変わり、強い光が部屋を覆う。その強い光は、辺りを一瞬、何も見えなくする。


 そして目を開けるとロランは、何も無い真っ白い空間に居た。

 本当に真っ白い。周りには何も無い。

 下にも上にも、あるのは〖白〗だけ

 感覚が、おかしくなる。


 浮いてるのか、地面に四つん這いになっているのかも分からない。ただ手と膝には何かに当たっている感触がある。


 黒髪の女が、ロランを見る。


(あ、、、)


 ロランは気づくのが遅かった。隠れてた壁が無くなってしまって、丸見えになっているのだ。

 まだ感覚が気持ち悪いが、地面はあるようだ。走れる。

 考える前にロランは、黒髪の女と反対方向へ、全力で走った。

 屋敷の主人がどうなったか?などは、一切考えず、ここがどのような空間かも考えない。ロランは、ただ『助かりたい』それだけを考えて走る。とにかく、あの女から離れなければならないと思って。


 が、何かに足を引っ掛けて、直ぐに転ぶ。


 この真っ白い空間でも、転けると痛いのだと、ロランは少し思った。

 ロランは自身の足を見る。あの女の黒い髪が、足にまとわりついていた。

 いつの間にか、黒髪の女が微笑んで、間近に立っている。

 ロランは、この空間の事と恐怖で、頭が混乱して声も出せない。


 女は両手を広げ、微笑みながらゆっくりと口を開き囁く...


「あぁ...私の愛しいヒック...ここに居たのね」


 (ヒック?誰だ?)


「あなたよ」


 (え?コイツ何を言って...)


「ダメじゃない、そんな口のきき方しちゃ...」


 (?!俺の考えてる事が分かるのか?!)


「もちろんよ。あなたのママなんだから。私は、あなたの考えてる事なんて、カンタンに分かっちゃうわ...」


 黒髪の女は、とても優しい笑みを浮かべている。。。


 (ママ...?確かに俺に親は居ない。

 コイツが俺の母親?!こんな化け物みたいな奴が?!

 そんな訳、、、あああっ!もう!

 頭がおかしくなりそうだ!!!!)


 気づけば黒い髪の毛が、ロランの周りを囲んでいた。

 そして黒髪の女の身体が中心から、十字に青白く光る。

 眩い十字の光が消えると、黒髪の女は居なくなり、青白く光る球体がそこにはあった。


 その球体から、細長い蛇の様な動く触手が、何本もヒックへと伸びている。それはロランのあちこちに噛み付く。


 (うわっ…し、死ぬほど気持ちが悪りぃ…) 


 ロランは、気を失いそうになる。


「あぁ、ヒック…私の、ヒック…」


 そして小指を噛まれた時、ロランは気を失う感覚に襲われたが、すぐ正気に戻る。


 (はっ!?)


 いつの間にか、黒髪の女は居なくなっている。

 辺りを見回すと屋敷の主人の部屋だった。

 ご主人様が倒れている。

 とロランは思う。


 他には誰も居ない。。。数十個あった黒い繭も無くなっていた。


 ロランは、屋敷の主人様を抱えて、外へ出る。屋敷の火は、不思議と消えている。遠くからジュードの声が聞こえた。


「おぉぉぉい!ロラァァァン!!!」


 そうだ、俺はロランだ。

 ヒックなんかじゃない。

 ヒック?ロラン?俺は?なんだ?誰だ?

 少し頭が揺さぶられた感覚があったが、すぐ元に戻った。


「ロラン!町のみんなを連れて来た...って赤ん坊や他の連中は?」


 俺は、首を横に何度か振りながら、抱えていたご主人様を地面に下ろし、そこで意識が途絶えた...。


 ロランは、その後5日も眠りつづける。

 屋敷は解体され、建て直し作業が進む。

 屋敷の主人は、あの時の記憶があまり無い様だが、ロランを命の恩人だと言って、執事長へと昇格させた。


 と言っても今や、この主人とジュード、そしてロランの3人が屋敷の住人となる。


 他のメイドやご婦人方は、あの火事で亡くなってしまったらしい。ただ骨も何も見つからないので、族の仕業じゃないか、との噂も流れた。


 ロランもあまり、あの日の記憶は定かでは無い。そして、あの日見た光景を思い出さないようにしていた。


 しかし。


「俺の胸には、見覚えの無いペンダントがある。これはあの日、急に俺の首に出現した。どう頑張っても外す事は出来ない。。。」


 そう言ってヒックは、胸元に手を入れ、青い小さな宝石が付いているペンダントを、ロッシーに見せた。


 それを見てロッシーは、一瞬驚いたが。


(胡散臭い)


 と素直に思った。


 月がミシの街を照らし、星は空に輝く。

 2人の未来が、明るく進むように。





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