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時空魔竜騎アースガルンプロット.  作者: 一ノ元健茶樓
始まりの章
3/129

信じろというの?それを?

 


 あれからロッシーは、村での仕事が終わると、一目散にミシの図書館へと走り、本を読み漁る日々が続いていた。


(明日が来なければ、ずっとここで本を読んでいられるのに…)


 そんな事を考えながら。。。


 何度も足を運んでいると、往復の時間と、図書館の閉館時間などを、計算出来るようになり、一日で本が何冊読めるのか?などと計算する。ロッシーは本を読むのが早い。1日にざっと10冊は読める。


 だが読める量は本の大小にもよる。その他、感動的な本の読後は、読み返してみたり、本の中に想いを馳せたりしていると、次の本になかなか進めなかったりするらしい。その場合、読める限界数は減る。


「なるほどぉ。こんな終わり方しますかぁ。なるほどぉ、なるほどぉ、ふむふむ…」


 ロッシーは特に気に入った本を、メモに残す習慣がある。また読むかはさておき、何か記録として残しておく。そうする事でまた、このメモを見た時に、読み終わった時の感情が、胸を熱くしてくれるような気がするのだと言う。


 そして今回も、胸に手を当ててジーン...と感動し胸を熱くしていると…

 頭に鈍痛が伝わった。

 ロッシーは、ここが図書館だというのも忘れて大声で


「いったあああああああああい!!!」


 と叫んでしまった。

 次の瞬間、口を手で覆われ息が出来なくなる。


「ば、ばか!なんて大声出すんだよ!そんなに強く叩いてないだろ!み、みなさーん、す、すいませんです!」


 こないだ図書館まで道案内してくれた、足が早い好青年だ。

 名前はヒックと言うらしい。


 ロッシーの大声で、周りがザワついたのを謝っている。

 自業自得だ。とロッシーは思ったが口には出さない。と言うより口を塞がれて喋れ無いでいる。


「(ふごぉでふがぁ!)」


 喋れないと言うより、息も出来ないでいた。


「お、悪りぃ悪りぃ。本の蟲ちゃん」

「ぷはっ、ちょっと私の事を殺しに来たの?!ってか、またその名前で!私の名前はロッシーよ!いい加減覚えてよね!アホヒック!」


 ロッシーとヒックは、あれから何度か道ですれ違う事があった。

 ロッシーは最初、図書館へ案内してくれたお礼や、村で採れた野菜などをあげて、村で育ち、本を読む為、この大帝都ミシへ来ている事を話したりしていた。

 それが1ヶ月程続いた結果、この様なちょっかいを出して来る程の仲になり、今ではこんなやり取りをしょっちゅうしている。


「ロッシー、お前ちゃんとメシ食ってるか?色は白いし腕も細い。背はちんちくりんで目も大きいから、余計に目立つ。よくそんなんで、畑仕事とか水汲みとか1人で出来てんな?」


 ロッシーは朝というか、早朝には起き、まだ空が暗いうちに畑仕事を終え、身支度をして山を越え、帝都の図書館が開くと同時に入り、図書館が閉まりそうな、暗くなる時間まで本を読んでいる。

 なので最近は、色も白くなり、元から体格は細い方なので、華奢に見えるのかもしれない。


 けれどロッシーは、まったくもって元気!健康体!チカラだって、そこらの男にゃ負けない自信があるようで、それをヒックに、意気揚々と伝えている。


「少し、メシでも食いに行かないか?俺と」


 突然の誘いに、ロッシーは目が点になった。この1ヶ月間で初めての事である。


「え?今から?」

「ああ、そーだよ。ちょうど本も読み終わっただろ?区切りがいいと思うが?」

「た、確かにそーだけど。。。」


(どっかで見てたのかしら…?)


 少し怪訝なロッシーを横目に、ヒックは本の山を両手に抱える。


「んじゃ決まり!ほらっ早く本を直してこいよ!あ、高いところのは俺が手伝ってやるから」


「それなら全部片付けて来てくれたまえ。私はその間に少しこの本を...」


 と、まだ読んでない本を、ロッシーは手にとって読もうとするが、ヒックのすこぶる怪訝な顔を見て、ロッシーは静かに本を閉じて返却作業へと勤しむ。


 …パクッ。

 モグモグ。。。


「んっ?!んまぁぁぁぃぞぉぉぉぉい!!なにコレ?!美味しい…」


 ロッシーは出された料理が、何なのか分からないが食べた。

 とても香ばしい甘い香りのする料理だ。


「そうだろぉ?!ミシ名物ナーウギの蒲焼きだ。俺もこの街に来た時に食べたが、腰が抜けたもんだ」


 そう言ってヒックも食べ始める。ほっぺたが落ちそうな顔をしている。2人はしばらくアハハ、エヘヘと言いながら食事をしていた。


「あ、ヒックって、ミシの出身じゃないのね。て、てか、なんでこんな高い料理を…私…なんかに…?わ、私…お金はそんな持ってないからね…」


 ロッシーは、(しまった)という表情になり。料理を食べる動作を止めた。


「...っプ!安心しろって!オメェがあんまりにも虚弱に見えたから、何か美味いもんでも食わしてやろうって事だよ!それと、あと頼み事があるんだ…」


 馬鹿に明るく笑っていたヒックは、急に真剣な顔をする。


「頼み?!」


 ロッシーは一瞬、安堵して食べ始めようとしたが、また料理を食べる手を止めた。

 そして目の前で頭を下げてるヒックを、ロッシーは引きつった顔で見下ろしていた。


「た、頼み事ってなんなのよ!?私、何も出来ないわよ!てかやっぱり裏があるんじゃない!先にゴハン食べさせるなんて卑怯だわ!愚の骨頂よ!!嘘つきヒック!」


 ロッシーは店内だというのも忘れ、椅子から立ち上がり大声でヒックを責めて叫ぶ。


「うわ!大声出すなよ!み、みなさーん…なんでも無いんです~。すいませんすいません。てか、落ち着けロッシー。(とりあえず恥ずかしから座ってロッシー)わ、悪いって、、、騙した訳じゃねぇんだよ。(あと恥ずかしいから早く座って)。。。何も絶対、お願いを聞いてくれってんじゃねぇの。とりあえず話だけでも聞いて欲しくて、こうやって食事に誘ったんだ…が…(早く座れよ!!)」


 ヒックは顔を上げて、ロッシーに困った顔を見せている。しかし、ロッシーはヒックを、軽蔑した顔で見下ろしたまま。


「もう、あなたの事は何も信じません!」


 と言いながら、料理をガツガツ食べている。ロッシーはとりあえず、食事を続ける様子であった。

 ヒックはそれを見て、少しバツが悪そうにハニカミながら、ボソボソと話を始める。


「まぁ話を聞いてくれロッシー、実は俺、不老不死なんだよな…」


「はぁ???」


 ロッシーの料理を食べる手が、また止まる…。


 ロッシーは思う。

 あぁ、早く図書館で本が読みたい。


 それだけで、幸せだったのだと気づいた。

 甘い話に裏がある。


 本の中の世界では、いつもそうだったと思い返しながら。。。






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― 新着の感想 ―
[良い点] 信じろというの?それを? まで読みました。 ロッシーの暮らしぶりが丁寧に描かれていて良かったです。 カワイイ☆(ウインク☆) は、面白かったです。 1日に10冊も読めるというのは凄いことで…
感想一覧
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