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エンジェリカの王女  作者: 四季
〜 第三章 天魔の因縁 〜

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98話 「本心に従え」

 森の方からドォンという地響きのような音が聞こえてきた。

 それと同時に迸る白い光は、私やカルチェレイナがいる王宮近くまで届いた。例えるなら雷が落ちたような感じ。


 カルチェレイナに指示されているのか大人しくしていたヴィッタは、轟音を聞き飛び上がっていた。外見に似合った愛らしい部分を初めて見た気がする。もっとも、「彼女の愛らしい部分を知ってどうする?」という話だが。


 光と音が収まった後、カルチェレイナがニヤリと笑みを浮かべて言う。


「今の爆発、エリアスね」


 私もそんな気はした。

 あれほどの爆発を起こすような聖気を持った天使は多くない。指を折って数えられるくらいだろう。その中で森にいる可能性がある者といえばエリアスだけ。


「貴女に捨てられたショックで衝動的に自殺を試みたんじゃない?」


 カルチェレイナは愉快そうに笑っていた。


「エリアスは自殺なんてしないわ。絶対に」


 私はすぐに言い返すが、正直、本当のところは分からない。

 あの強いエリアスのことだ、そんなことは起こらないと信じたい。だが、絶対に間違いが起こらないとも言いきれない。彼は時折凄く感情的になるから。


 ……でも大丈夫かな。


 もし彼に何かあったら、私が解任したせいかもしれない。私は彼を守るために解任したというのに、それによって彼が傷ついたなら本末転倒だ。


 エリアスのところへ行ってあげたい。

 こんな、力のない私だけど、一刻も早く彼を助けに行きたいと思った。


「エンジェリカの王女、どこを見ているの? あたしを見なさい。貴女はあたしが——」

「ちょっと待ったぁぁぁっ!」


 カルチェレイナの言葉を珍妙な大声が遮る。数秒後、視界に黒いコウモリのような羽が入った。


「……ライヴァン。貴方、生きていたのね」


 セットされた黄色寄りの金髪、瑞々しい紫の瞳。いつものことながらきまっているドヤ顔。


「行きたまえ!」


 ライヴァンは私に向かって叫んだ。

 もしかして味方してくれるの? 悪魔なのに……。


「そうはさせないわよ」


 カルチェレイナが水色に輝く蝶を放ってくる。ライヴァンは黒い塊を次々放ち、私に一斉に迫ってくる数多の蝶を撃ち落とした。

 今までライヴァンのことはただのバカだと思っていたが、今は不思議なくらい頼もしく感じられる。危機的な状況だからか。


「こちらのセリフさ!」


 ライヴァンはS字のようなきめポーズをとりつつ言い放つ。


 ……うわぁ。


 ライヴァンは何を言ってもかっこ悪い。ある意味才能だ。いつか平和になったら、「謎のポーズを止めてみては?」と提案してみようかな。それで少しはましになる気がする。


「雑魚悪魔の分際で……。ヴィッタ! こいつを殺しなさい!」


 非常に不愉快そうな表情を浮かべるカルチェレイナ。一方、久々に指示をもらったヴィッタは、パアッと嬉しそうな顔になる。


「ヤーン! カルチェレイナ様に頼られてるぅ。キャハッ! ヴィッタ、殺りまぁす!」


 ヴィッタは高らかに宣言すると、ライヴァンに向けて赤いリボンを伸ばす。ライヴァンはそれを黒い塊で弾き防いだ。


 刹那、彼のすぐ近くに姿を現すカルチェレイナ。彼女は気づき遅れたライヴァンの腹に強烈な蹴りを加えた。ライヴァンは後ろへ直線を描くように吹っ飛ぶ。

 その様子を見て、思わず悲鳴をあげてしまった。カルチェレイナがあまりに躊躇いなく蹴ったものだから。


「裏切り者は許さないわよ」


 カルチェレイナの黄色い瞳は、裏切り者であるライヴァンへの憎しみに満ちている。

 私はライヴァンを止めようと思った。これ以上誰にも傷ついてほしくないから。


 だが、蹴りを食らった彼は、案外普通に立ち上がる。


「ふふ……分かった。よく分かったよ。カルチェレイナ、麗しい僕に嫉妬しているな!?」


 天使より悪魔の方が強い。それは聞いたことがあるが、実際に見てみて改めて感じた。

 そもそも肉体の耐久力が違う。それに加えてパワーもあるとなると、天使が不利なのも無理はない。


「王女、もたもたせずに行きたまえっ!」


 ライヴァンはバカでイタいが、それでも一応は四魔将にまで上り詰めた男だ。カルチェレイナのことを知っているというのもあり、即座に敗北することはないだろう。


「でも……」


 しかしライヴァンを残してエリアスの方へ行く決心がつかない。迷ってもたもたしている私に彼が言い放つ。


「本心に従えっ!」


 心臓に突き刺さったみたいだった。


 その一言のおかげで覚悟を決めることができた私は、一度ライヴァンを見て大きく頷いた。彼は片手で前髪を掻き上げながら、もう片方の手の親指をグッと立てる。


「この親切な僕に感謝することだ!」

「そうね、行ってくる。ありがとう」


 自分のことを親切だと言いきってしまえるところが凄い。彼らしく、愚かさ丸出しだ。


 最後に一瞬ライヴァンと視線を合わせ、私は森の方へ走り出した。

 爆発のおかげで大体どの辺りかは見当がつく。だが一刻も早く会いに行きたい。そして、冷たい態度をとってしまったことを謝りたい。


 ——お願い、エリアス。どうか無事でいて。

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