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エンジェリカの王女  作者: 四季
〜 第三章 天魔の因縁 〜

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87話 「宣戦布告の朝」

 翌朝、私はディルク王に呼び出された。場所は教会。前にいったことのある場所なので一人でも行けたのだが、自分も行くからという理由で、エリアスがそこまで連れていってくれた。


 そういえばエリアスは昨夜呼ばれていたけど、それと関係する話なのかな?

 ただ呼び出されただけで何の話かは聞いていない。気になる。


「アンナ、来たか」


 教会へ入るとディルク王がそう言って迎えてくれる。

 そこには私が思っていたより大勢の天使が集まっていた。親衛隊員、王の側近、その他諸々。しかもみんな深刻な顔をしている。

 何かあったのだろうかと不安になるような場の雰囲気だ。


「簡潔に言う。昨夜、カルチェレイナ妃から宣戦布告の手紙が届いた」


 ディルク王が述べた。


 私は暫し言葉をなくし固まってしまう。耳に入ってきた言葉があまりに信じられないものだったから。


 ——宣戦布告。

 冷たい氷の剣を突きつけられたかのような気分だった。頭が話に追いつかない。


「エンジェリカは戦争になる」


 私は夢でもみているのではないか。こんなこと、あるはずがない。たった今聞いた言葉を現実とは思えなかった。いや、正しくは、頭が無意識に理解しないようにしていたのだろう。


 戦争が起こればどうなる。多くの罪なき者が命を奪われ、街は破壊されて美しい風景は失われてしまうだろう。

 そんなことは許されない。許されてはならない。


「戦争なんて駄目よ! 別の解決方法を考えなくちゃ!」


 半ば無意識に叫んだ。

 予想外に大きな声が出てしまい、周囲に驚いた顔をされる。私は慌てて口を押さえる。


「……あ、ごめんなさい」


 また勢いで叫んでしまわないよう気をつけなければ。


「各々先ほどの指示通りに動いてくれ。アンナは少し残ること。ではこれにて解散とする」


 ディルク王が告げると、集まっていた者たちはぞろぞろと帰っていく。


 どうやら話があるようなので私はその場に残った。エリアスも残ってくれる。彼は私の後ろに立つ。

 三人だけになった教会は、先ほどまでとはまったく違う雰囲気だ。とても静かでピンと張り詰めたような空気。自然に緊張してくる。


 あんな話の後だから尚更。


「では少し話をしよう。ほんの少しだけだ」


 ディルク王がゆっくり身をこちらへ向け、低い声で話し始める。その表情からは疲れていることが見てとれる。


 私は前もって一応確認しておく。後から色々と言われればややこしいから。


「エリアスはいてもいい?」


 確認の問いに対してディルク王はしっとりと頷く。

 エリアスはひざまずく。何でも王の前ではそうするものらしい。いつだったか忘れたが以前彼からそんなことを聞いたことがある。


「カルチェレイナ妃はお前の命を狙って戦争を仕掛けてくる。それは分かっているな?」

「えぇ」


 私のせいで戦争になるなんて絶対に防がないといけないわ。一番簡単な話、私がカルチェレイナに殺されれば終わりなのだろうけど、それはそれで嫌だし……なかなか難しい。


「戦いの間お前は外へ出るな。敵が来てもひたすら立てこもるように」

「立てこもる?」


 私は戸惑い繰り返した。

 囮になれとでも言い出すものかと思っていたので少々意外だった。ディルク王が私を危険に曝さない作戦を考えるとは驚きだ。


「その通り。カルチェレイナの部下・四魔将も今や二人。多くの雑魚兵を連れて来たとしても、エンジェリカの勢力を結集すれば十分勝てる」


 そんなに上手くいくものなのだろうか……。


 そもそもカルチェレイナの戦闘能力は未知だ。ヴィッタとルッツは単体でかなり強い。それに、また新たなメンバーを補充してくる可能性もある。



「話は聞いた!」



 突如ライヴァンが姿を現した。どうやら大きな像の陰に隠れていたようだ。

 aのような謎のポーズをとった後、ライヴァンはスタスタとこちらへ歩いてくる。


「カルチェレイナの軍についてなら僕に聞きたまえ!」


 あまりに急な登場で、さすがのディルク王も困惑した顔になっている。いきなり出現したうえ謎のポーズを見せられたのだから仕方ない。

 慣れていないと普通に引くわよね。今ではそんなものと思うようになったが、私も初めはよく返答に困った記憶がある。


「お前は……ライヴァンか」


 ディルク王は厳しい表情をしつつ静かに言い放つ。


「そうさ! 僕ならカルチェレイナの軍の戦力を知っているのだよ!」


 なるほど、と私は納得した。彼の発言が意味不明でないのは珍しい。

 ライヴァンは元々四魔将だった。つまりカルチェレイナの軍について知っている。それにカルチェレイナはライヴァンが生きていることを知らないので、情報がばれるとは考えないだろう。

 彼に情報を聞くというのもアリかもしれない。


「お人好し王女! 麗しい僕に情報を聞きたいと思ったなっ!?」


 心を読まれた……。

 ディルク王もいるというのに大袈裟にビシッと指を差されると正直ちょっと恥ずかしい。


「……分かった。ライヴァン、少し話を聞かせてくれ」

「ま・か・せ・て!」


 ライヴァンは再び謎のポーズをきめる。


「ではアンナ、話はここまでだ。速やかに帰り絶対に部屋から出るな」


 ディルク王のその言葉を最後に解散になった。

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