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エンジェリカの王女  作者: 四季
〜 第一章 天使の国 〜

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20話 「いざ、対面」

「でもどうやってライヴァンを探せば……」


 根本的な問題が残ってしまっている。今私にはライヴァンの魔気が感じられない。


「僕が教えるよ」


 そう言ったのはノアだった。


「貴方にはライヴァンの居場所が分かるの?」


 それに答えたのはジェシカ。


「ノアは気に対する感度が高いの! 聖気にも魔気にもね。だからライヴァンの居場所だって簡単に分かっちゃうわ」

「変な意味じゃないよー」

「うるさい。アンタは黙れ」


 二人は相変わらず謎なやり取りを繰り広げているが、今はそんなことをしている場合ではない。一刻も早くライヴァンを追わなければ。


「ノアさんお願い。ライヴァンのところまで案内して!」


 私が頼むと、ノアは嬉しそうに頬を緩め、「うんうん、もちろんだよー。僕に任せて」と弾んだ声で返してきた。


「じゃあ一緒に来てねー」


 歩いていくノアの後ろに私とジェシカが続く。彼の感覚を頼りにライヴァンのいる場所まで向かうことになった。



「多分この近くだよー。ライヴァンの魔気を強く感じるねー」


 ノアがそう言ったのは、王宮の真ん中にある広間に着いた時だった。ここは王の間へ直接繋がる一歩手前の場所。つまり、王の間に一番近い大切な場所である。それゆえ普段は王を護る親衛隊の天使たちがいる。しかし今は皆悪魔との戦いに駆り出されているので、広間は不気味なくらいの静けさだ。


 ちょうどその時だった。カッカッと地面を蹴る固い足音が耳に入り、私たち三人は慌てて石像の陰に隠れる。


「エンジェリカの秘宝も手に入れたことだしそろそろ帰還するかな。……いや、それだけでは生温い。僕は王妃の一番になるため王を殺し王女を捕らえる。そのぐらいしなければ……」


 向こうから歩いてきていたのは予想通りライヴァンだった。そんな独り言をブツブツ呟きながら歩いている。


「……やばくない?」


 石像の陰に隠れつつジェシカが小さく呟いた。彼女にしては非常に小さなひそひそ声だ。


「王様を殺すとか、ちょっとまずいよねー……」


 引いたような顔をして言ったのはノアだった。


「ブローチのこと、言うわ。ちゃんと返してもらわなくちゃ」

「でも王女様。今出ていくのは危険じゃない? さっきの独り言聞いた感じ、あいつ、王女様のことも狙ってるみたいじゃん」


 確かにそれはそうかも。でもだからって譲れない。


「あのブローチは大切なものなの。母からもらったのよ。このまま盗られたままにしておくわけにはいかないわ」

「そうかもだけどっ……」

「いいんじゃないかなー?」


 唐突に口を挟んだのはノア。また右サイドの髪を指で触っている。やはり呑気だ。


「僕はいいと思うよー。王女様だって一人の天使だもん、譲れないことはあるよねー」


 しかしながら、なかなか良い発言をするものだ。


「やっぱりあたしは心配だよ。あいつに会って、王女様に何かあったら嫌じゃん」

「そこは僕らがフォローすればいいところだよねー」

「そうかもしれないけど……」


 ジェシカは不満そうに黙る。


 直後、ライヴァンが急にこちらを向いた。石像をじっと凝視している。


 ……ばれた?


 でも彼が私たちの存在に気がついているとすれば、攻撃を仕掛けてくるなりなんなりするはずだ。だがそれはない。


「気のせいか……」


 ライヴァンは首を捻りつつ小さく独り言のように呟く。もしかしたら私たちの気配を微かに感じたのかもしれない。


 私は覚悟を決めてから、ジェシカとノアにお願いする。


「私、行くわ。ライヴァンと話をしてくる。だから攻撃されそうになったら守ってほしいの」


 自分勝手な願いとは分かっているので言いにくかったが、二人は私の頼みを快く引き受けてくれた。


「それは当然じゃん。あたしたち王女様の護衛だし」

「うん。傷一つつけさせない。僕らに任せてよー」


 本当に頼もしいことだ。


 私だってそこまでのバカではない。もちろんライヴァンの前に立つことに恐れがないわけではない。だが一度やると決意したことをやはり止めておくと言うのは嫌だ。


 私はその場で立ち上がった。


「お人好し王女!?」


 ライヴァンは少し目を見開き驚いたように言った。石像の後ろから突然現れるなどという珍妙なことをしたわけだから、この反応も当然といえば当然か。


 また何かされるのでは、という湧き出る不安を抑えて彼の方へ歩み寄っていく。


「わざわざやって来てくれたのかい? これはラッキー! さすがは神に愛された僕っ!!」


 発言の意味が分からないので流して言い放つ。


「私のブローチを返して」


 するとライヴァンは挑発するような顔をした。


「ブローチぃ? そんなもの、この僕は持っていないぞぉ?」


 だが残念なことに、服の隙間から赤い宝石がしっかり見えてしまっている。

 なんとも滑稽である。


「その隙間から見えている赤い宝石のブローチよ。それは私の大切なものなの。返しなさい」


 ライヴァンはブローチを隠せていると思っていたらしく一瞬戸惑ったがすぐ冷静を装う。


「なっ、見えっ!? ……ふ、ふんっ、まぁいい。残念ながらこれはあげられないのだよ」


 偉そうに言っているが、あげられないも何も、そもそも私のものだし。泥棒しておいてよく言えたものだわ。


「あげられない、ですって?」


 するとライヴァンは謎の派手なポーズをきめる。


「エンジェリカの秘宝は王妃にあげるから渡せないということだよ! 君は本当に物分かりが悪いなぁっ!」


 ライヴァンだけには言われたくない。正直そう思った。

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