131/131
終章
「アンナ女王」
みんな私をそう呼ぶ。
天界の王国エンジェリカ、私はその女王だ。
傷つかないように、幸せでいられるように。かつて私はみんなからそう言われ、王宮の外へ出してはもらえなかった。どんなに贅沢な暮らしをしていても決して埋まらない、寂しさという名前の空白があった。
自室の窓から外の世界を眺めて憧れ、空を自由に飛ぶ鳥を羨んで、一人ぼんやりと毎日をすごしていた。
でも、もう今は違う。
私はエンジェリカの女王として、忙しくも充実した毎日を送っている。
行きたいところへ行き、見たいものを見ることができる。私にとってこんなに幸せなことはない。
苦労することも悩むこともある。何もなく幸せばかりなわけではない。ただ、愛する者がいて、大切な者がいる。だから少しくらい辛くても頑張れるのだ。
それはなにも女王だけの特別なことではない。
男性も女性も、働いていても家を護っていても、女王も平民も——誰もが同じように、毎日を生きているのだから。
これは、天界の王国エンジェリカに生きる、一人の天使の物語。