第10話 魔力とは
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
光輝はこの世界について詳しく知るため、ノルスに聞けることをなるべく聞くことにした。
『では教えて欲しい事とは何でしょうか?』
(まずこの世界と日本ではどういった違いがあるんだ?)
『お答えします。この世界と日本の違いとしては魔力があるか無いかです。
(魔力があるか無いか…?どういうことだ…?)
『この世界では日本では空想や想像と思われている魔法と魔力が存在しています。この世界では魔力と魔法という不思議な力が生活の一部となり、人々支えています。』
(魔力と魔法が生活の一部?どいうことなんだ?)
『この世界では魔力と魔法を使い、水道やガスといった日本でも必要なライフラインを造っています。例えばエレベーターの構造も日本とこの世界では大きく違い、魔力によってエレベーターが動いているということはもうご存知ですよね?』
(ああ…。確かこの世界のエレベーターはエレベーターの一番上と一番下には大きな魔力水晶版があって、その水晶版からこのエレベーターを浮かせることのできる魔力が出ていたその力を利用してこのエレベーターは上下に動いているということだよな?)
『はい、その通りです。この世界はですが今の光輝さんにはイメージしにくいものでしょう。イメージ映像を画面に出すので私をポケットから出して下さい。』
光輝はポケットからiP●oneを取り出した。すると画面に電源が入ってノルスが説明を再開した。
『日本のエレベーターは主に【ロープ式】と言う方法で、【かご】と【釣合おもり】で重さのバランスを取って、機械でロープを巻き上げて制御しながらかごを上下移動させています。』
(なるほど…。)
『ですがこの世界のエレベーターは【魔力水晶版】だけで【かご】を上下に動かしています。』
(どうやって…?)
『まずこのエレベーターは【魔力水晶版】・【かご】・【魔力水晶版】とかごをサンドイッチの具のように魔力水晶版でかごを挟んでいます。この魔力水晶版には釣合おもり・巻上機・制御機・ロープと同じ役目ができます。これによって上下にある魔力水晶版が魔力と魔法を使用してかごを上下に動かしその階によってかごを浮かせることを可能にしているのです。』
(仕組みは分かったけど、魔力と魔法って具体的には何なんだ?)
『では簡単な例を出しましょう。光輝さんとりあえず私を持ってそこの椅子に座って下さい。』
(分かった…。)
言われるがままに、光輝はベッドから腰を上げて近くにあった椅子に腰かけた。
『それでは魔法と魔力を使用してこの椅子を少し浮かせます。』
そういうとノルスは椅子を5cmほどゆっくり浮かした。
『ではここから時速5kmでこの椅子を1mほど動かします。そのままでお願いします。』
そしてノルスは座った光輝を1mほど浮かせて移動させた。
(それで…、これはどういうことなんだ…?)
『先ほど椅子を浮かせて移動しましたが、光輝さんはこれに似た乗り物に乗ったことはありませんか?』
(乗り物…。…自動車か!!)
『そうです。実はというと自動車と先ほどの空中移動には少しだけ接点があります。自動車はガソリン・電気を利用してエンジンを蒸かして車を動かします。先ほどの空中移動も少し似ていて、椅子に魔法を発動させてそこに魔力を注ぐことによって椅子を動かしたのです。』
(つまり魔力はガソリンや電気と言ったエネルギーで、魔法は魔力を有効活用するための機械みたいなものか…。)
『その通りです。魔法を応用すればこの世界では瞬間移動といったことも可能になります。』
(魔法って本当にすごいんだな…。)
『ですが魔法を発動するには魔力を込めなければなりません。魔力が無ければ魔法を使うことはできません。』
(ということは今の俺は魔法を使えないのか…。)
『今のままではこの世界に馴染めず、暮らす際も不便な思いをするでしょう。』
(…待ってくれ、じゃああの時杖から出た小さな炎は何なんだ…?)
『光輝さんは魔法を使いました、けれど魔力を込めていませんでした。なので、炎はとても小さなものになってしまったのです。』
(それは一体…?)
『実はというと魔法は【ファイア】などと詠唱しただけで発動するとても簡単なものなのです。ですが魔法に魔力を込めなければ魔法は発動したとしてもとんでもなく威力や規模が小さくなってしまうのです。』
(なるほど俺が魔力を込めてないからあんな魔法になったわけか…。)
『この先の事を考えて魔力を込める練習をしましょうか。簡単なことですし、すぐできるようになりますよ。』
そう言うとノルスは光輝の手のひらに大きなビー玉のような球体を出した。
(これは…?)
『球体を見ていてください。この球体に魔力を込めます。』
ノルスがそういうと球体は白く綺麗に輝き始めた。
(…!?)
『この球体は魔力を込めることによって光ります。これを使って魔力を込める練習をしましょう。とりあえずこちらの球体を持ってください。』
(でも俺は生まれ変わった人間だけど魔力なんか使えるのか?)
『この世界に対応するために光輝さんに掛けられた転生魔法には転生する世界に合わせて日本では出来ないことが出来るようになります。その一部として転生した世界の言語の習得・文字の読み書きもできるようになります。』
(へぇ…、ん?ちょっと待ってくれ。じゃああの時俺がトレトアイル語を読めると思ったのって…?)
『転生魔法の影響ですね。今はまだ文字が馴染んでないので、完全に読み書きはできませんが数日すれば完全に問題なく読み書きができるようになるでしょう。』
(そういうことだったのか…。)
『それでは本題に戻して、魔力を込める練習をしましょうか。』
(分かった。)
『魔力を込めるのは少しコツがあります。まずは球体を持っている手に自分の身体の熱を集中させてください。』
(…。)
光輝は言われた通りに身体の熱を球体を持っている側の手に集中させた。
『上手く熱が集まっています。そしてその熱をその球体に流すイメージをしてください。』
今手に集まった熱を球体に伝えるようにイメージした。すると
「…!!」
球体は綺麗に白色に輝き始めた。
『光輝さん、ここまで魔力を込めるのが上手なら何度か練習すればいつでもすぐに意識しなくても魔力を込められるようになりますよ。この球体はあなたに差し上げますので暇なときに練習してください。』
(ありがとう)
『では話が大幅にずれましたが、日本とこの世界の違いについて話を戻します。』
(あ、話ずらしてごめん…。)
『構いませんよ。ではこの世界と日本の違いについてですが、魔法と魔力が存在するこの世界では日本よりもとても便利で環境に良い暮らしをしています。ですがこの世界は医学・工学・科学といった日本ではとても発達しているものがほとんど発展していません。』
(どうして…。)
『先ほどにも言ったようにこの世界は魔力と魔法が存在しています。確かにそれによって暮らしは格段に日本よりも上です。しかし魔力と魔法によってほとんど何でもできる為、この世界の人々はもっと便利に・もっと知りたいといった精神や探求心を医学・工学・科学に向けている人があまりいません。』
(なんでそんなことに…。)
『なんでもできてしまう。それはある意味文明の発展を妨げてしまいます。例えばこの世界で車を作ったとしてもこの世界では売れることはほとんどないです。その理由としてこの世界には転送装置が存在するためどんな遠い場所にでも一瞬で行くことが出来ます。転送装置はあまり場所も取りませんし、僅かな魔力を込めるといった簡単な手順を踏めば使えるのでとても便利です。しかし車は大きさによっては場所を大きく取りますし、音もうるさく、運転技術だって必要になります。つまりこの世界の多くの人々にとってはただの大きなガラクタに過ぎないのです。』
(あんなに便利な車がガラクタなのか…)
『それだけではありません。この世界の建物の多くが木製で造られています。日本のようにコンクリートように頑丈な素材で造られた建物なんてたいして存在しません。日本は災害が多く、人々を守らないといけないため、建物は頑丈に造らなければなりません。ですがこの世界には魔法と魔力が存在しています。災害が来たとしても魔法で防げばいい話ですし、コンクリートのような素材は作るのが大変ですから、いちいちそんな素材使って建物を建てて建物を丈夫にして災害から家を守ろうとしても魔法でどうせ防げるのであればこの世界ではコンクリートのような素材で建物を造ったとしてもほとんど意味が無くなってしまうのです。』
(じゃあ医学も…。)
『はい。事故などで失った手すら治すことが可能な魔法がある世界です。魔法で病気のほとんどを治してしまうため、病気の原因や病気がどのように起きてしまうのかを探す必要が無いのです。探したところで意味が無いのです。』
(魔力と魔法があるか無いかだけでここまで違うのか…。)
『この世界では光輝さんが知らない常識やルールが存在し、日本では当たり前だった常識やルールの一部が存在していません。ですので、最初は慣れないと思われますが、この世界で生活していくうちに慣れてくると思いますので違いがあるという認識を少し持っていれば問題ないでしょう。』
(分かった。しかしそれ以外にも日本とこの世界には違いはあるのか?)
『もちろんあります。この世界には地球に存在した鉱物・動物・植物の全てがこの世界には存在していますが、それに加えて地球に存在しない鉱物・動物・植物も存在しています。また料理や調味料も地球に存在しているほとんどがこの世界にも存在しています。ですが一部調味料・料理が無いことがあります。そしてこの世界独特の料理や調味料が存在しています。まあ大まかな部分を除けばそのくらいになります。』
(この世界独特の料理か…。)
『この宿屋のレストランかギルドのレストランに行けばあると思われますが食べてみたという願望があるのですか?』
(…まだこの世界に来たばかりだし、慣れてないことも多いから今は止めておくよ…。)
『分かりました。では他に知りたいことはありませんか?』
(今日はもういいよ、ありがとうノルス。)
『いえいえ。分からないことがあればいつでもどうぞ。それではおやすみなさい。』
こうしてノルスは光輝との会話を終えた。
(…。)
光輝は一日を振り返っていた。いきなり女の子に投げられたこと。自分は死んだといきなり神様に伝えられたこと。生き返るチャンスがあると言われたこと。高度10000mの高さから落とされたこと。ノルスと出会ったこと。ルルシアの言葉で冒険者になろうと思ったこと。剣を初めて振るったこと。
たった1日でいろんなことが起こった。とても不思議な気分だった。そんな余韻にしばらく浸ってから、光輝はウィルトから送ってもらった服を部屋にあったタンスにしまって、シャワーを浴びて部屋着になり、電気を消して部屋のベッドに横になった。お腹は減っていたものの、疲れてしまって何かを食べたいとはあまり思えなくなっていた。
光輝は先ほどノルスに貰った球体を天井にかざして、球体にまた魔力を込めていた。何度見ても飽きない光は眠気を強くしていった。
もしかしたらこれは夢で全てが嘘なのかもしれない。明日になったらまた自分の部屋にいるのかもしれない。そう一瞬思ったが強くなる眠気に考えを飛ばされて、目を閉じた途端光輝は眠ってしまった。
「…ウィルトよ。」
「何でしょうゼウス様…。」
「私はあの女神をこの天界から追放しようと思う。」
「本気ですか…!?」
「君からあまりよくない話はよく聞くし、私も見ていて耐え難いのだよ…。」
「すみません…。私が不甲斐ないばかりに…。」
「君のせいではない。自分を責めないでくれ。」
「はい…。」
「確かに少し前にあの女神は心に大きな傷を負ってしまった。これは私にも大きな責任があることなのだ。だがこのままではあの女神は自分のことを永遠に自分の中に閉じ込めてしまうことになる。」
「…。」
「覚えているかウィルトあの女神が神様になったばかりの頃を…。」
「ええ…。とても立派な神になり、これからみんなを引っ張って行く存在になるだろうと思っていました。」
「あの女神は私たちが何を言おうと、もう心を開いてくれないだろう。だが短い人生を生きていて、私たち神々とほとんど変わらない存在である人間にならあの女神の心を変えられるかもしれん…。」
「何故そう言い切れるのですか…。」
「私は昔に妻であるヘラの愛を踏みにじり、地球にいた他の女に浮気をした。だがそんな時にわかったのだよ。人間は短い人生でありながらも私たち神々と同じように生きていると。」
「同じように生きている…。」
「人間の世界は天界とは違いとても不便な世界だ。だが工夫を施して少しでも暮らしを良くしたり、それぞれを支えあって生きている。あの時君も言っていただろ、人間と神はほとんど変わらないと。」
「…確かに。」
「この天界は簡単にこの先に何が起こるかということを見ることが出来る。だが人間は先が見えなくとも生きている。だからこそ人間は見えない未来に希望を持って生きられるのだ。」
「見えない未来に希望を持つ…。」
「我々神々にはそんなことはあまりできないし、我々がそんなことをあの女神に言ったところで心変わりなどしてくれないだろう。だが人間ならその心すら変える可能性が残っている。」
「ですが…。」
「安心しなさい。あの女神の力は私が封印しておく。…だが欲を言えばあの女神の事を少しでも知っている人間がいれば私としても心強いのだが…。」
「そんな人間がいる訳…、ん?」
「どうした?」
「一人います…。」
「本当か。」
「ええ、こちらです。」
ウィルトは手元にある一枚の書類をゼウスに渡した。
「ほぅ…。この人間もかなり心に傷があるな…。もしかすればあの女神の心を変えるかもしれない、そして彼の心も変えてくれるかもしれない。」
「確かに彼なら何とかしてくれるかもしれませんね。」
「だが彼にはまた申し訳ないことをするわけだ。これは我々神のわがままだ。だから彼にはあまり期待しないようにしよう。」
「はい…。」
「ウィルトよ、私はこれから他の神々の許可を取らなければならない。許可が降りたら君にも手伝ってもらうことになるが構わないかね?」
「分かりました。手伝いましょう。」
「ありがとう。では仕事に戻りなさい。」
「はい。」
天界は見えないところで怪しい動きを始めていた。




