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「肖像画 」  ゴーゴリ作をめぐって、  極私的ゴーゴリ論。

作者: 舜風人

ゴーゴリはロシア民衆の哀歓をペーソスあふれる語り口で描いた民衆作家として知られている。

「外套」「検察官」「鼻」「隊長ブーリバ」「死せる魂」などがその代表作だろう。


ところで、、ゴーゴリは、正確に言うと、ロシアの作家ではないです。

産まれは今のウクライナの寒村の小地主の子ですね。

今現在ウクライナ政府は

ゴーゴリはロシアではなくて、我が国の作家と主張していますね。


彼の父は農奴80人を抱え土地は1000ヘクタールだったそうです。

これでも小地主ですから大地主ともなると、もっと、すごいことになるのでしょうね?

ゴーゴリは地元の学校を卒業すると首都、ペテルブルグに役人になるために向かいますが、

一小地主の倅など、なんのコネもなくて、ダメだったようです。

で、、、失意の彼は、それなら文学で、、と、おもいたち、詩など発表するがこれもダメで

とこうするうちに、やっと、帝室林野官という下級官吏になれましたが

もちろんこれもまあ食うためだけでした。

この下級官吏時代の哀感はのちの「外套」とか「鼻」などにユーモラスに描かれれている通りですね。


さてそんな彼は、文学への思いたちがたく、故郷の民話や伝説に取材した、今でいうファンタジー小説を書くことを思い立ちます。

そうしてできあがったのが、ウクライナの歴史。民族・風俗。伝説。民話に彩られた、

短編小説集「ディカーニカ近郊夜話」です。


刊行されるや、それは「プーシキン」とか「ベリンスキー」の絶賛を浴びて、新進作家として華々しくデビューするのです。

確かのこの短編小説集は、いま、ウクライナが、わが国の作家と胸を張るようにウクライナの民族と伝統とロマンの宝石箱です。私が大好きな作品でもありますね。

これが機縁で彼はペテルブルグ大学で歴史講じるまでになりますが、、、そこはそれ、

彼は小説家ですから、学者には成りきれず、講義はつまらなかったそうですね。

彼も限界を感じて教職は、やめてしまうのです。

しかし彼の作家活動はこのころが最盛期?で彼の代表作をいくつも執筆しています。


その中の「検察官」という風刺劇、、喜劇が保守派の逆鱗に触れ、いたたまれず彼は国外逃亡?してしまうのです。

独逸、スイス、パリ、ローマ。

彼の長い逃亡生活?がこうして始まるのですね。

この外国暮らしの中でも盛んに執筆活動は続けています。

ローマ滞在を素材にした短編「ローマ」は未定稿ですが素晴らしい作品ですね。

しかし、このころ彼が本当に、熱情を注いだのが「死せる魂」という作品でした。

これの第一部がロシアで発行されるや、たちまち大評判になりますが、

今回も毀誉褒貶、相半ばするという書評でした、


彼は久しぶりにロシアに戻り、第二部の完成に心血を注ぎますが

主題をどう展開させるか煩悶して、ついには

狂信的な神父マトベイコンスタンチノスキーに、すがったために、洗脳?されたゴーゴリは

自分の文学は神への冒涜と言う妄想に狂悩し、

ついに第二部の完成原稿を焼却して、断食生活に入り、餓死して果てるのである。

まあ、、すさまじい最後ですよね。

ちなみに、、彼は生涯独身でした。



さて彼の伝記はこれぐらいにして


実はゴーゴリは多くの怪奇小説も書いているのです。

怪奇小説といっても、

今の言葉でいえば「ダークファンタジー」ですね。

たとえば、、

魔女に取り付かれて狂死する神学生を描いた「ヴィイ」これは映画にもなっていて私は見た覚えがある。

「妖婆・死棺の呪い」(1967)というすごい?邦題であった。ソ連映画ですね。結構よく出来た映画でした。もちろん原題は「ヴィイ」ですがね。「ヴィイ」、、じゃ日本上映しても、、誰も知りませんものね。で、こういう、扇情的な?邦題となったのでしょう。

ロシア・ソ連最初のホラー映画として知られていますね。

ま、さっきも言ったようにホラーじゃないですけどね。

ダークファンタジーです。



「ディカーニカ近郊夜話」の中にもキエフの民間伝承に題をとった怪奇物がいくつかある。


いずれもウクライナの農村の民族。詩情あふれる佳話である。

岩波文庫に全訳があるのでお読みください。

「あおぞら文庫」にもありますのでウエブサイトで読めます、

無料でね。

これはゴーゴリのデビュー作で、ウクライナに伝わる民話に題材を求めて、アレンジした、民俗色あふれる、とても楽しい魅惑的な物語り集である。

濃厚な小ロシアの民間伝承や風俗は色彩にあふれている。アラビアンナイトのロシア版といったらいいだろうか?

全8編の物語からなりその全てが妖怪や魔物の登場する奇譚となっている。


以下あらすじを紹介することとしよう。



「ソロティンツイの定期市」


 失われた赤い長上着を探す悪魔が定期市に現れるというお話と市場の人々の人情話を絡めた好編。


「イワンクパーラの前夜」


 一年に一度蕨の花が咲きそれを手に入れたものは埋蔵金を見つけられるという。

 主人公は悪魔と妖婆に魂を売り富と恋を手に入れるが結局は良心の呵責に苦しみ発狂してしまう。


『5月の夜、または水死女」


 月夜に水の精が遊び戯れるという伝説と、ウクライナの5月の情景が活写される、村の人物の

 描写が面白い。



「紛失した国書」


 悪魔に取り付かれた男を救おうとしてかえって大事な国書を奪われた主人公が妖女と深夜カルタを

 して勝ち、国書を取り戻すというお話。


「降誕祭の前夜」


 冬のウクライナの農村風景や農民が活写された好編、悪魔や妖女も登場するが全然怖くない。

 


「恐ろしき復讐」


 魔法使いが自分の娘に邪恋を抱き婿を殺し果ては娘まで殺してしまい、最後は自分も破滅するという

 恐ろしいお話。他のお話は滑稽な面がたっぷりあるがこれはそれもない、シリアスドラマ仕立てと

 なっている。



「呪禁のかかった土地」


 悪魔が宝を見つけられないように様々な恐怖を使って宝を守るというお話。


「イワンフヨードロビッチシュポーニカとその叔母」


 これは全然空想的な要素のないお話。(悪魔も出てこない、)

 ある主人公の幼年時代から青年時代を、事細かに描きつくしている。



挿絵がまたいいですね。恐らく原書の挿絵でしょうがウクライナの往時の風俗がじかに見れてこの挿絵は抜群です。




さて、、、、、


タイトルにも書いておいた「肖像画」は芸術と才能の相克を扱った芸術家小説である。


絵から何かが抜け出すというのはよくある設定で、怪奇小説の定番でもある。

このテーマは「肖像画」が、オリジナルでない。

民話や童話など古くからいくらでも同様なテーマのお話があるのだ。

たとえば「聊斎志異」などには、絵から抜けでる美女のお話がたくさんありますね。

「ドリアングレイの肖像」もそうですが絵というのは一種不思議な雰囲気をかもしますね。


絵から抜け出すとか絵の美女に恋するとかそんな話は昔から物語に書かれています。

テレンス・ヤング監督の「鏡の回廊」(1947年)という日本未公開映画も、絵の美女に恋してしまうというファンタジー映画でした。私の大好きな映画の一つです。


さて「肖像画」に戻ります。


「肖像画」は、ゴーゴリが1835年に発表した論文・小説集『アラベスキ』に収録された同名の短編小説です。

いわゆる「ペテルブルグもの」の1作で、眼光するどく形相すさまじい老人を描いた肖像画にまつわる物語です。

貧乏画家の青年がこの絵を手に入れて持ち帰ると、夜、絵から老人が抜け出し懐から金袋を取り出すという夢を見ます。

ふしぎに思った青年が朝、改めて額縁を調べると、

絵の額縁から本当に金袋が出てきて、画家は金持ちになり、それを元手に、一躍、流行作家となります。

しかし、美術学校時代の友人がイタリアから帰国して開いた展覧会の絵を見た主人公は、

自分の画力のなさを恥じ、自信を喪失して、自分の絵を並べてみているうちに老人の幽霊に憑かれ狂死してしまいます。


その後、肖像画は競売にかけられることになりますが、競売場に現れた画家が言うには、、


この絵はもともと例のイタリアから帰国した画家の父親のものでした。

父親からこの絵は不浄なもので、見つけたら破棄せよと厳命されていたものだったことなどを画家は語りはじめます。

画家の話が終ったとき、さあでは、その肖像画を燃やそうかとみると、肖像画はいつの間にか?跡形もなく消え失せ、その場にいた一同は唖然とするのでした…。


その肖像画は、、今もどこかで、売れない貧乏画家を、たぶらかしているのだろうか?


、、、、、というお話です。



売れない画家、はっきり行って才能がない画家ほど哀れなものはない。

だが、モジリアニもゴッホも生前全く売れなかった。

そう考えると売れなくても何でも自分を信じて突き進むしかないのかな?とも思う。

自分が信じられるか?本当に満足できるのか。それでいいのか、自恃があるか?

そこのところが、判断基準だろうか?


しかし、さてこの「肖像画」という作品である。

では、もしこの売れない貧乏画家がひょんなことからこの妖しい絵を手に入れることがなかったら、この貧乏画家はどうなっていたのか?

私はふとそんなもう一つの結末を考えるのである。


恐らく一生売れないで、平凡に終わっただろう。

あるいは画家を放棄して1庶民に帰一してうずもれて死んだろう。


でもこの妖しい絵に出会って、一時的とは言えいい夢を見させてもらって流行画家になれた、


でも最後は狂死する人生だった。


もしこの怪しい絵に出会わなかったら、

全く売れないで、画業も放棄してうずもれて一生終わっただろう。

さて?

どっちの人生がよかったのか?

まあ、、

究極の選択だろう。


ほとんどの人が


大スターや

大画家や

大作家になりたくて


でも?

成れるのは10万人に一人でしょう?

誰もが「美空ひばり」になれるわけないんですものね?


でも?

この「肖像画」の主人公の無能な画家も


謎の絵の魔力(金力?)によって一時的にせよ、

流行画家になれた?のですから

わたしからいわせれば、

もって、


瞑すべし、、でしょうね。


そのあとで、狂死したって、、まあ、、いいじゃないですか?


人間どうせいつか死ぬんですから?


という私の見解?ですよ。


だって


誰もが、、


人生で輝けるというわけではない。


いやそれどころか


全く光ることすらなくて、、無名で、、


一生終わる人がほとんどですよ。


だからもし


人が一瞬とはいえ、


人生で



「星の時」



持てたなら


後は、まあ、悲惨な末路でも


その人生は


祝福されるべきものだったといえるのではないだろうか?


私はそう思いますけどね。


そう、思うのは私だけでしょうか?


、、、、、、、、、、、、ということで?


なにやら?


ゴーゴリから

遠く離れたお話で終わってしまった今回でしたね?


それでは


また





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