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猫の手は借りたくない

作者: 鳴指 十流

 夜の町。

 外には誰もいない。月の光に照らされている家々からは、何の動きも感じられない。昼間は人の多い商店街も、大きなマンションも、駅前の広場も、みんな静かに眠っている。いや、違った。ひとつだけ、まだ起きている場所があった。公園だ。ここに、今、たくさんの小さな光が見える。ざっと四十個程。どうやら、猫の目のようである。猫が公園に集まっているのである。

 はじめに、にゃあお、と猫の鳴き声がした。それに続いて他の猫たちも鳴き始める。

 にゃあお にゃあお にゃあお にゃあお にゃあお にゃあお

 辺りは、しばらくこの鳴き声で満たされていた。

 にゃあお

 最後の一匹のようだ。途端にまた、辺りは静かになる。

 それではこれから、集会を始めます。

 どこかで声がした。公園に集まった猫たちの一匹のようである。人間の言葉で話していた。

 猫たちのパチパチという拍手。もっとも彼らの場合『足』であるが。拍足。

 ……ん? なんだかおかしい。猫がなぜ足を叩ける? 猫は四足歩行……、あっ、猫が立っている! 後ろ足だけで立っている。そして、前足の方で拍手(拍足?)をしている。これは驚き。まあそんなことはいい。さてこれからどうなるのか。なりゆきを見守るとしよう。

 今人間たちは眠っています。建物も植物も、我々以外は全て眠っているのです。なので安心して我々はこうして集会を開けるのです。

 猫の代表くんがいう。ははは残念だったな。実は君たち以外にも起きているものがいるんだよ。そう、僕だ。ははは残念だったな。はははははは。

 さて皆さん、今日ここにお集まりいただいたのは他でもない、今地球を占領している人間たちについてです。まったく彼らの我々に対する仕打ちはひどいものです。最近では、近所の人の子たちに無惨にも殺された我々の仲間もいます。覚えているでしょう、……うう、うう。

 代表くんがすすり泣きを始めた。それに続いて他の猫たちも泣き始める。僕もすこし泣いた。だって悲しいじゃないか。僕は猫を殺したその子供を許せなかった。誰だそいつは。あっ、僕だ……。

 失礼しました。じゅるる、じゅるる。

 代表くんが鼻をすする。

 ……とにかく、人間たちをこのままにしておいていいのか、ということなのです。我々をまるで玩具のように弄ぶ彼らを私は許せません。彼らによって名前を与えられ、求めてもいないのに餌を与えられる。我々は人間たちの快楽と自己満足を満たすだけの存在なのです。人間死ねええええええ! 人間失せろおおおお!

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!

 ななななんだ!? 突然代表くんが叫び出したかと思うと、その背中から真っ黒な巨大な手がにょきにょきっと生えてきた。

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!

 他の猫たちも同様、叫び出したかと思うと、背中から黒い大きな手。僕はだんだん怖くなってきた。このままここにいれば、彼らに殺されるんじゃないか。もう帰ろう。僕が公園から出ようとしたそのとき!

 あっ、誰だ!?

 しまった、気づかれたか。僕は後ろを振り返りもせず、全力で駆けた。

 まてええええええええ!

 猫たちが追ってくる。怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる逃げる。僕は足を止めなかった。後ろからたくさんの猫たちの気配を感じる。

 次の角を曲がれば、僕の家だ! 僕は走った。力の限り走った。そして見えてきた、曲がり角……。やった、もうすぐ僕の家だ! 走れ走れ走れ。

 角を曲がった。そのとき、ちらっと後ろを見た。僕は全身の毛が逆立つのを感じた。猫たちの黒い手が僕の頭を掴んだのと同時だった。

 ぶちっ。




 

 

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