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仕事終わりにヤニ吸ってたらどこか残念な年上女性に執着されてた件  作者: 熊鏡
本編

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第22話

喪に服していました


 死にそうな修羅場を潜り抜けている。


「A社の対応どうなってる!?」

「先方に問い合わせて今日中に暫定対応します!!」

「B社の件取り急ぎ詰めてくれ!」

「承知しました!!」


 バタバタとした仕事の中で、なんとか修羅場の内容以外も進めていく。

 A社とB社は今回特殊な条件で出た特注対応だが、それ以外にも通常の発注はある。今回生えたのは対象の会社で新たに立ち上げるラインが有り、それには現行製品では細かい仕様に対応できないことがわかったからである。


「技術部の方にもどこまで対応できるか確認してください」

「そうだった!!担当は技術部の方にヒアリングしてくれ!!!」


 あーーーーー。死ぬ。


 ————————


「真壁。七瀬。残業を頼めるか」

「はい」

「承知しました」


 A社対応は俺。B社は七瀬の担当である。実際今日はメール対応で済んだが、明日は製品仕様を出して先方と会議を行う必要があった。


「やばすぎやばすぎやばすぎ。死んじゃいますよこれ」

「今日の残業はまだ楽っすけど。明日以降がやばそうですね」

「本当にそれはそう。全然死んじゃう!!」


 死んだような顔をして席を立つ。


「ヤニですか」

「ヤニでーす」

「私も吸おうかなもう」

「おすすめはしないっすよ」


 当たり前にね。


「吸うなとは言わないんだ」

「説得力ないし、喫煙は自分で判断してするもんです」


 大人だしね。


「まぁね〜」

「自分で判断できるタイプでしょ?七瀬さんは」

「当たり前じゃないすか」


 自信ありげじゃん。


「ま、行ってきますね〜」

「サボっちゃダメですよ〜」

「うぃーす」


 ——————————


 いつも通りの喫煙所について、優奈さんに遅くなる連絡をする。

 いつの間にか作られていた合鍵をもらっているため、どれだけ遅くなってもまぁ問題はないんだが、それはそれとして連絡したいからした。


「…スー、スゥ。はぁあああああ…」


 あああああああああヤニキマる…


「今日は先輩定時か」


 まぁいいことだよ。羨ましいけど。


「いいなぁあああああ」


 漏れ出る羨み。


「まぁ、頑張るか」


 一際大きく紫煙を吐き出して。俺はまた残業に戻った。


 はぁ…


 デスクに戻り、残業に戻る。俺は死ぬ勢いで資料をまとめて這う這うの体で優奈さん宅に帰った。



 そうして、俺は優奈さんに連絡して合鍵で優奈さん宅に戻った。


「ただいま」

「おかえり」


 玄関先でエプロン着用のまま優奈さんが出迎えてくれた。


「づがれだ」

「お疲れ様」


 抱きしめて迎えてくれる優奈さんが可愛い。


「(計画通り)」

「ん?なんか言いました?」

「なーんにも。ご飯できてるよ」


 ヘニャヘニャとした声はやっぱりいつも通りで。帰ってきて人がいて出迎えてくれるのがこんなに嬉しいなんて。


「…どうしたの?」


 いつになっても離さない俺が気になったのか、心配げに聞いてくれる。

 そんなところも好きだ。


「幸せに浸ってました」

「そっか…じゃあ後でまた抱きしめさせてあげるから。まずはご飯食べなさい」

「わかりました」


 渋々腕を緩めて、俺は手洗いうがいして食卓についた。

 ご飯は唐揚げにサラダ。味噌汁に白米。これがいい。


「美味しそう…」

「おいしいよ」


 ニコニコと笑って優奈さんは対面につく。二人向かい合って、手を合わせて。


「「いただきます」」


 まずはサラダを食べて。唐揚げを食べる。


「…おいしっ!!」


 濃いめの味付けに、ジューシーな鶏肉。ご飯がすすむ味付けだ。


「でしょ??」


 ふふん。と、自慢げな優奈さんに興奮気味に言葉を返してしまう。


「本当に美味しいですよ。濃いめの味付けにご飯がめっちゃ合います」

「でっしょ〜〜!?」


 ああすっごい自慢げ。自慢するだけはある美味さだが。


「こんなに楽しいなら毎日でも過ごしたいくらいですよ」

「きなよ」


 瞬間。濁ったような。どろりとしたような。艶と昏さが混ざったような眼で、彼女は笑った。

 何かを間違えたような。決定的にダメな選択肢をとったような。そんな焦燥感が胸をよぎる。


「まぁ、今じゃないですけど」

「ちぇー」


 すん。っと、先ほどまでの雰囲気に戻って、俺は思わず胸を撫で下ろしかけた。


「もう少しかな」

「?何か言いました?」

「んーん。何も」

「そうですか」


 あっぶねぇえええええええ!!

 なんかこう、マジで危なかった気がする。首を縦に振ってたらマジでやばかった気がする。


「じゃ、ご飯食べたらお風呂入っちゃってね」

「はい。あ、洗い物手伝いますよ」

「いいよ。それとも…」


 一緒に洗い物して一緒にお風呂入る?

 蠱惑的な笑みで問いかける優奈さんにギョッとして、俺は慌てて取り繕う。


「明日仕事できなくなるんで今日は大人しくしときます」

「今日は(・・・)、ね。いいよ」

「ありがとうございます」


 なんで俺感謝してんの?


「まぁ金曜は覚悟しておいてね」

「土曜出勤なければ」

「それがあったねちくしょう」


 ああ、すんごいおもろい顔してる。


「ま、また修羅場終わったらデート行きましょ」

「絶対だよ?」

「絶対です」

「破ったらすんごいことするからね」

「すんごいこと!?」

「すんごいこと」


 こわひ。


「腰は使い物にならなくなると思ってもらっていいいよ」

「終わった」


 物理的に絞られて終わるじゃん。


「んふふ」


 ちょっと妖しい笑顔やめて!!


「ま、そういうことだから」


 楽しみにしてるね。蓮くん。


「うす」


 この後のことは覚えてない。なんか、風呂上がったら泥のように寝てた気がする。




 ——————————


「あーあ。寝ちゃった」


 どさまぎでえっちなことしちゃおうかと思ってたのに。

 目の前で、本当に無防備な顔で寝ている彼を見て、私は笑いが堪えきれなかった。


「こんなに私のこと信頼してくれてるんだね。じゃあ、あとは依存してもらうだけかな?」


 そうすれば、そうすればもう大丈夫。


「そうすれば、わたしの勝ち」


 彼のそばで。彼を支えて、私なしで生きられないようにして。


「ずっと一緒。ずっと、ずうっと一緒」


 そうなれば、私の勝ち。


 その言葉は、夜闇に消えていった。


 

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