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第6話 リィムとハッキネン

「不愉快です! 何でいきなり銃で撃たれた上にこんな変な所に閉じ込められているのですか!」


 既に目覚めていた小柄で小学生高学年位に見える少女、リィムは大声を上げながら怒り出していた。


「む~……この扉は対精霊術用の素材なのでしょうか? 精霊力は感じられたので術を使って見ても傷一つ付かないです。」


 先程から氷の槍を具現化させては扉を叩くが無情にも変化は無かった。段々と息が上がり始めたその頃、扉の反対側に足音が集まって来るのが聞こえた。


「困りました……せめて失った精霊が居てくれたら……」


 リィムは部屋の外に近づいて来た人達の足音や、装備がこすれる金属音が聞こえたので友好的では無いと判断する。


 扉から離れてベッドの影に隠れると同時に扉が開いて兵隊らしき人が大勢なだれ込んで来てベッドを中心に半円状に包囲される。


 兵隊たちはリィムを確認すると後方へと手を振り誰かを呼んでいる様だった。


「霧崎副官! 発見しました! 既に起きています!」

「そう、ご苦労様。後は私に任せてアンタ達は入り口で結界でも張って待機してなさい。」


 霧崎と呼ばれた背の長くスタイルの良い長髪黒髪の20代半ば位のメガネをかけた女性が白衣を着て部屋に入ると、兵隊たちはすぐさま入口へと戻って行く。


「あ、あなたは? 見るからにお医者さんの様にも見えますけど。」

「ふん、こんな子供がSランク? 冗談も酷いですね。」


 女性は小学生の様な容姿のリィムを見下した眼差しで見ると、悪意を持った視線を送っていた。


「まぁ、私は弱い者いじめが大好物だから~精霊も居ないSランク精霊使い様を嬲り殺して、あ・げ・る。」


「あんまり良い趣味とは言えませんね。と言うかオバさん誰ですか? それに私は16歳です! 子供じゃありません!」


「誰がオバさんよ! って言うか! 16歳なんて青臭いガキじゃないの……って16歳!? てっきり12,3歳位かと……」


 霧崎の言葉にリィムの表情が一気に強張った。触れてはいけない一言を発したと言わんばかりに。


「あー! 言いましたね! 人が気にしている事を! 絶対ぶちのめします! 年増のオバさんだからって許しませんよ!」


「誰がオバさんよ! 私はこう見えても26歳よ! まだ若いんだよ!」


「10も年上ならオバさんです! どうせ旦那さんはおろか彼氏すら居ないんでしょう? 弱い者いじめが大好きって言ってる位ですから性格も悪そうですしね!」


 今度は霧崎の方が言ってはならない事を言われたという表情をしている。そんな程度の低い口喧嘩を入り口で待機している兵隊たちは青ざめた表情で眺めていた。


「このクソガキ! 『霧崎 雪子』の名前に置いて誓願奉る! 顕現せよ! 『樋上神ヒノウエカミ!』 」


 霧崎が両手を祈る様に合わせると部屋中から氷の粒が現れると一点に集まり出す。するとブカブカの白装束に身を包んだ謎の精霊が現れた。その様子をリィムは驚いた様子で眺めていた。


「え? こんな普通に精霊って召喚できるんですか?」

「契約した精霊ならね! 契約精霊も居ないガキが呼べるわけ無いでしょう!」


 霧崎が勝ち誇った顔をしていると施設内に警報と同時にアナウンスが流れた。 


『個体名 『火神 聖』と契約精霊『ティルレート=アルセイン』を認識しました。判定SSSランク。データベースに記憶します。』


 内容を聞いた霧崎や兵隊たちは一瞬で表情を変えた。


「バカな!? SSSランクだと! 何かの故障なのではないか!?」

「え? 霧崎副官よりも上位?」

「データベースに登録された時点で公式記録だから間違える訳が!」


 動揺が走っている中、少女だけは不思議そうな顔をしていた。


「何でティルが居るのでしょうか? という事は……もしかして。」


 何かに気が付いたのか、少女は霧崎と樋上神をキッと睨みつけて、意を決した様に声高に叫んだ。


「マネをして見ればいいんですよね! 『リィム』の名において命じます! 来なさい『ハッキネン』!」


「な? ガキが何のマネを?」


 霧崎があざ笑う様な表情を見せるが、すぐにその表情は戦慄の表情に切り替わって行った。


 何故なら自分の時と同じように、氷の粒が出現するとリィムと呼んだ少女に吸い込まれる様に集まって行く。そしてリィムの姿が白金色の髪と水色の瞳に変化したのだった。


「久しぶりだな、リィム。」

「ハッキネン! 何で生きているのですか!?」

「それは……話すと長い。今は緊急。目の前に敵対的な奴がいる。」


 その変化を霧崎は信じられないと言った目で見ていた。


「な、何ですって! 精霊を召喚どころか最初から同化!? それに意識がどちらも有るという事は……『命名契約』なの!?」


「見た目の変化から見てそれ以外何が有る?」


「見た事無いから知らないわよ! 明らかに私とは違う同化……いや! このままではデータベースに記憶される! その前に!」

 

 霧崎は樋上神を向き直すと手を差し出す。


「さぁ、『樋上神』。契約にのっとり、我が敵を屠る為に我が身に降りたまえ!」

「心得た。ただし、力及ばずに死すとも恨むなよ。」

「え? ちょっと、それって……」


 困惑する霧崎を無視して樋上神は手を握ると霧崎の体が吸い込まれる様に消えたのだった。


「精霊主体の同化ですか……でも私達と違って精霊の意識しか出てない様ですね。」

「同調契約でも低同調ならそうなる。ポンコツが例外。」

「タツミさんは同調契約でも意識有りましたもんね……才能ってやつですかね?」

「強いて言うなら『努力』の才能。」


 リィムとハッキネンの会話をのんびりとした雰囲気で聞いていた樋上神はゆっくりと近づく。そして間合いが1メートル程になると同時に大量の氷の刀を空中に具現化させた。


「良いですか? ワシも契約故に本気で行かせて頂きますぞ。《《大精霊》》様。」

「分かってても契約には逆らえない。精霊の嫌な所。」


 ハッキネンは氷を小刀を一本具現化し、着けていた雪月花の髪止めをもう片方の手に持つと、そちらも奇妙に形を変えて二本目の小刀に変化した。


「行きまする。」

「来い、楽にしてやる。」


 宙に浮いていた氷の刀が次々とハッキネンへと襲い掛かる。それをハッキネンは危なげなく二刀流の小太刀で打ち砕いて行く。


「流石です。回避どころかこうも簡単に砕かれるとは。」

「全力を出せ、時間の無駄。そして中に居る人間に格の違いを見せる。」


 淡々とハッキネンが攻撃を捌きながら言うと、樋上神は満足そうな笑みを浮かべながらさらに大量の氷の刀を具現化させて襲い掛からせる。しかしその全てがハッキネンによって打ち砕かれたのだった。


「コレは布石。さぁ、大技を出せ。」

「流石です。では行きますぞ! 『氷葬陣こおりとむらいのじん』!」


 砕かれた刀の破片が一斉にハッキネンに襲い掛かる。破片を小刀で砕くと更に小さい破片がそのまま襲い掛かった。


「どんなに細かく砕けても貴方様に襲い掛かります! 砕けば砕く程回避は難しくなりまする。」

「なるほど、ならば避けない。」


 ハッキネンは小刀を振るのを止めると同時に大量の氷の破片の刃が突き刺さり、覆い始めると姿が見えなくなるまで刺さり続けた。


「……流石でございます。」


 その様子を見た樋上神は満足そうな笑みで膝をつき、頭を垂れた。


氷塵纏衣ひょうじんてんい、氷よ隷属せよ。」


 返事をする様にボソリと言うと、突き刺さった筈の氷の刃はチリ状になると無傷のハッキネンの姿が見えた。そして氷のチリは白いモヤの様になって包んでいた。


「私の最大の精霊術がこうも破られました。完敗でございます。私はこの日ノ本の国を守る為に契約しましたが、貴方様の様な大精霊様が現れて下されば安心して眠りにつけまする。」


 そう言うと樋上神の姿は消え、霧崎の姿が現れたのだった。


「な! 樋上神! 勝手に何を!」

「契約解除されたか、これではただの人だな。」



『個体名 『リィム』と契約精霊『ハッキネン』を認識しました。判定SSSランク。データベースに記憶します。』


 契約を解除されて慌てふためいている霧崎に更なる知らせがアナウンスされた。


「す、SSS(スリーエス)ランク!?」

「さて、お前には色々と聞きたい事が有る。覚悟しろ。」

「そうですね、戦いの最中にレンさんやナギ、ユキのアナウンスも流れてました。みんなの所へ案内してもらいます。」


 契約精霊に見放され、今後の事を考えて茫然自失となっている霧崎の首根っこを掴むと引きずる様に部屋を出て行く。


 その様子を見ていた兵隊たちはまるで神でも見るかの様に土下座しながら過ぎ去るのを待っていたのだった。

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