第3話 鳴海 蓮とガラント
「うっさいな……ん? コレは殺気か?」
レンは施設内に響き渡る警報で目を開けた。すると見慣れない機械だらけの部屋にベッドで寝ていた事に気が付いた。
「ここは……確か俺達は7人で下校中に……そうだ、何かサラマンダーみたいな火トカゲを見かけたと思ったら、変な格好をした奴に銃で撃たれたんだ!」
直前の記憶を思い出した少年は勢い良くベッドから立ち上がると、自分の体に異変が無いかを確認する。
「撃たれたはずなのに傷も無い? それにこの部屋の中の感覚はどこかで……?」
自分の周りの環境を観察しようとしたが、そんな時間も無く殺気を放っていた人物達が一か所しかないドアを開けて侵入してくるのが見えた。
「目標補足! 居たぞ! 起きている! 総員構えろ!」
複数の兵隊が勢い良く入って来ると横一列に並んでマシンガンを構える。そして隊長らしき人物が声を上げると一斉に銃弾が発射されたのだった。
「はぁ!? いきなり銃って!」
レンは慌ててベッド影に隠れる。銃撃をやり過ごして脱出を考えるが、出口は敵の後ろで、交互に撃っているのか弾幕が止む様子が無かった。
「何でいきなり人生のピンチなんだよ! 意味わかんねぇ! と言うか……何だこの部屋の空気の感覚は? なんか懐かしい様な?」
どこか懐かしい感覚に襲われながらも、現状の弾丸の嵐をどうかしなければいけない。そんな時、再び激しく警報音が鳴り響いた。
『個体名 『火神 聖』と契約精霊『ティルレート=アルセイン』を認識しました。判定SSSランク。データベースに記憶します。』
施設内にアナウンスが流れると同時に弾幕が止まる。ゆっくりと顔を出してその様子を見ると全員が唖然としているのが見えた。
「火神の名前? それに精霊? まさか呼べるのか? そうか、この感覚は精霊力か!」
レンはアナウンスでとある可能性に気が付くと意識を集中させる。そして自分の中に有る何かを呼び出すように声を上げた。
「居るなら来い! 『ガラント=イクディテンス!』」
叫ぶと同時に付近の空気中から水分が集まって行くのが見える。段々と粒となり更に集まり水球となり、段々と大きくなっていった。そして人型へと変形していく。
「久しぶりだなレン。元気そうで何よりだ。」
「全然元気じゃねーよ! 今の現状を見て物を言え!」
レンと同じ姿の水色の髪と瞳をした精霊がベッドの上に仁王立ちで具現化すると、その場にいた兵隊たちはどよめきだした。
「おい、何で精霊が?」
「普通、急に具現化しない筈だろ?」
「どっから出て来た?」
「まさか召喚する程の精霊使いなのか?」
兵隊たちは混乱し始めると逃げようとする者、銃を構えて身を守ろうとする者等指揮が乱れ始めた。
「今なら何とかなりそうだな。来い! 『同化』だ!」
「ヤレヤレ、扱いが雑なご主人様だ。折角呼び出したんだから可愛い女の子の一人や二人位は居てくれても良いのに。」
「……相変わらずの軟派体質は治って無いんだな。」
「精霊は恒常性の存在だ。変わる訳無いだろ?」
レンが溜め息をつくと、ガラントはベッドから飛び降りてレンの前に降りると手を握る。そして水泡が舞い上がる様にガラントから立ち上がるとレンの中へと吸い込まれる様に消えていった。
「しょ、小隊長! どうするんですか!?」
「いきなり精霊を使いこなせる訳が無かろう! 全員構えて撃て! 装備を対精霊用に切り替えろ!」
「「「ラジャー!」」」
兵隊たちは再びマシンガンを構えて撃ち出す。その弾丸は普通の物では無く、対精霊用の弾丸に切り替えられていた。
「さて、主導権はお前だレン。行けるか?」
「やってやるさ。力を貸せよガラント!」
レンは隠れながら水の日本刀と、複数の拳大の水の球を具現化させた。そのうちの一つを手に取ると水の刀の峰の部分にまるでクロスボウの球をセットする様に置くと、相手が居る天井部分を狙って勢い良く水球を発射した。
「いけ! 水圧弾!」
水圧弾は天井に当たると見た目からは想像もできない程の大量の水になって兵隊たちの頭上に降り注ぎ始めた。
兵隊たちはまるで滝に打たれたような感覚になり身動きが出来なくなる。その隙にレンはベッドの影から飛び出して一気に間合いを詰めた。
「その物騒な武器を叩き折らせてもらう!」
「まぁぶった切るんだがな。」
流れる様な身のこなしで接近すると、レンは水の刀で次々と兵隊たちの銃や装備を切り裂いていく。
中には掴みかかろうとする兵隊も居たが、体の周りに浮かんでいる水球を操作して相手にぶつけると、弾けると同時に大量の水が相手を押し流して壁に打ちつけて気絶させた。
「貴様……本当に覚醒したばかりの精霊使いなのか? その精霊は何処から!?」
隊長らしき人物がコンバットナイフを構えながらも質問する。しかし言葉と裏腹にその足は恐怖に震えていた。
「ん~『こっち』じゃ初めて使うな。むしろ何でこの施設は精霊力がこんなに満ちているか聞いてみたいね。」
「こっちだと? どう言う……」
そこまで言いかけると男は急に力無く膝から崩れ落ちた。そしてその後ろから別の3人の兵隊とよく見知った顔が現れたのだった。
「危なかったっすね。コイツ後ろに自爆覚悟の手榴弾を忍ばせてたっす。」
「と言うか……この場合は私達だけ危険で、ヒジリさんとあの方は平気で切り抜けそうだけど。」
「まぁ、間違っては無いな。Sランクオーバーからしたら対精霊用装備なんて子供の玩具だからな。」
3人の兵隊は倒れた兵隊たちを拘束し始める。そしてその後ろから現れたヒジリがレンを確認すると安心した表情を浮かべていた。
「レン君、無事だったんだね。」
「火神も無事だったか。まぁさっきの放送でティルが出て来たなら無事だと思っていたが。」
『個体名『鳴海 蓮』と契約精霊『ガラント=イクディテンス』を認識しました。判定Sランク。データベースに記憶します。』
「ふむ、ティルがSSSでガラントがSか……まぁ妥当だな。」
「おい! ちょっと待て! 何で俺がティルちゃんより二つもランクが下なんだよ! せめてSSとかにしてくれよ!」
「ホ、ホラ、ティルは少し特別な精霊だから……」
納得しているレンと不服そうにしているガラント、それをなだめる様にヒジリが慌てていると3人組は拘束を完了して戻って来た。
「姐さん。早く行くっすよ! 次はこっちの通路です。」
「次の部屋は……『六波羅 凪』って女の子が居る筈です。」
3人組は誘導する様に部屋を出て通路を警戒しながら進んで行く。
「ナギも居るのか!? と言うか……火神。アイツらは何なんだ?」
「え、えっと……何か上官に殺されるから守ってくれって言われたんだけど……」
「要するに私達を殺そうとしている上司が居るんだけど、私達の方が強いから寝返ったって事ね。」
ティルが簡単に説明するとレンとガラントは「はぁ?」と言った間抜けな声を出しつつも納得した様子でついて行く事にしたのだった。




