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第11話 霊装銃

 稲葉が会議室から去ると同時に入れ替わりで、髪を茶色に染めて長い髪を後ろで丸く束ねたメガネの女性が入って来て自己紹介を始めた。


「続きは司令の秘書である、私こと「霧崎 晴香」が説明をさせて頂きます。」


「霧崎……もしかして?」

「はい、「霧崎 雪子」は双子の姉です。私は精霊使いになる程の才能は無かったものでして……お恥ずかしながら司令の秘書を仰せつかっております。」


 姉の雪子と戦ったリィムは外見が似ている事からすぐにピンと来たようだった。他のメンツは一瞬見ただけなので気付いていなかった様子だ。


「それでは皆様にお渡しする物があります。こちらのスディレットの隊員カードになります。皆様Sランク以上ですので金色になっております。」


 そう言うとテーブルの上に一人一人の名前が彫られただけの金色のカードが置かれていくと、全員が各々のカードを手に取って眺める。


「名前が彫って有るだけのカードですか?」

「その様ですね? 何か特殊な仕様ですか?」


 リィムとクリューエルがカードを指で弾いたりしながらお互いのカードを見合っている。


「そのカードは中に特殊なICチップが入っております。紛失しても本部の方ですぐに位置が特定できますのでご安心を。ああ、後プライベートの時は見ない様にしておりますのでご安心ください。各々からの連絡が無い限り調べる事は致しません。」


「……つまり、このカードに関しては私達の命令でしか調べられないという事だわよね? そして紛失してこのカードの拾われた場合、その意味に気付いた人は消されるという事かしら?」


 少し考えたのちにナギが気付いた事を質問すると、晴香は笑顔で頷いた。


「左様でございます。なので余計な人に迷惑を掛けない為にも紛失と盗難には充分ご注意ください。」


「怖いシロモノだな……」

「そ、そうだね……気を付けて持ち歩こうね。」


 タツミとヒジリは冷や汗をかきながら財布の中へカードをしまう。


「それと任務に向かう際ですが、基本的に検査の時以外は施設内も外と変わらない精霊力しか有りません。なので精霊様のお力を借りる為に精霊弾を利用する事になります。精霊弾を使用しない場合は精霊様は召喚できませんのでご注意ください。」


「そう言えば……さっきから精霊達が静かだけど……精霊力も感じなくなってる?」


「ユキの言う通りですね。いつの間にか濃度が下がってハッキネンの存在も感じなくなってますね。」


 言われて気付いたのかリィムとユキが精霊達が静かだった事に気が付いた。


「そしてこれが精霊弾を使う為の『霊装銃れいそうじゅう』になります。任務時以外はお渡しできませんが、SSSランク以上の方々は特権の行使で常時持つことが出来ます。」


 晴香は淡々と説明を続ける様に小さめのハンドガンをテーブルに置いて見せた。


「こんなの持ち歩いてたら面倒なだけだ。俺はパスだな。」

「わ、私も……さ、流石に普段から隠すのは自信ないかな。」

「カッコ良さそうですけど……トラブルの種を自分から持つのは愚の骨頂ですからね。私も不要です。」


 タツミ、ヒジリ、リィムの3人はそれぞれの持論で常時所持を断った。その様子を見た晴香は嬉しそうな表情を見せた。


「賢明な判断かと思われます。一時の力に溺れずに思慮深さを持てるという事はとても素晴らしいと思います。では皆様の分はスディッレット日本支部で厳重に保管させて頂きます。ですが……」


 晴香は8種類の弾丸をテーブルに置いた。その弾頭は色分けされており、それを見た瞬間に全員が気が付いた。


「コレは……まさか属性ごとに違う弾丸? と言うか気になったんだが、この銃を使ってどうやって精霊を召喚するんだ?」


「レン、アンタは説明を待ちなさいよ。落ち着きがない男は好かれないわよ。」


 レンが口走ると同時にナギが脇腹をつねって口を封じる。


「だ、大丈夫ですよ? 疑問に思われて当然でしょうから。」

「いや、良いわよ。コイツお姉さんがキレイだからって鼻の下伸ばしてたし。」

「伸ばしてねぇよ! いつ伸ばした!? 俺が伸ばすのはお前だけだ!」

「な!? ま、またアンタは急にそんな事言って!」


「……ハイハイ、アンタ達の夫婦漫才は良いから、晴香さん続きをお願い出来るかしら?」


 二人のいつものやり取りが始めるとユキが冷静に二人の首根っこを掴んで後方へと押し下げた。


「あ、え、ええっとですね……この弾丸には各属性の精霊力が圧縮されています。コレを直接術者に打ち込む事で肉体に精霊力を補充して精霊をその身に降ろします。」


 その言葉に全員が一瞬黙り込んだ。


「え、えっと……つまり自分に銃を向けて弾丸を打ち込むという事? バカじゃないの!? 普通の神経じゃ出来る訳無いでしょうが! 腕や足に撃ち込むのだってかなりの恐怖が付きまとうに決まってるでしょ!」


 ユキが口を開いて文句を付けるが晴香は更に続けて恐ろしい事を言った。


「申し上げにいのですが。精霊を召喚するイメージが必要な関係上、撃ち込む場所はこめかみ部分になります。」


「頭に弾丸をですか……何かそれはそれでちょっとカッコ良いという気がしますね。」


「分かる、何と言うか、有り得ないからこそカッコいいと言うか。」


 リィムが少し目を輝かせながら食い入る様に身を乗り出すと、レンも身を乗り出して銃と弾丸に目をやった。


「ハァ……アンタ達、高2にもなって中二病みたいな事言うんじゃないの! 3年分の人生どこに落として来たのよ。」


 ユキが呆れたように突っ込むが、内心では想像してみたら、ちょっとカッコいいかもと思ったのだろう。段々と言葉尻が弱くなる。


「何だかんだで乗り気に見えるのは俺の気のせいですかね?」

「いや、エルが言ってる通りだと思う。アイツらの眼が輝いてる。」


 クリューエルとタツミはその様子を遠目に見ながら呆れていた。しかし拒否権が無いのだから、いずれは使う必要が有ると腹を括るしかなかった。


「いきなり実戦ですと心の持ちようも有るでしょうから、一度この場で試されますか? 安全性は保障します。桐生と姉も施設外では何度も使っていましたので。」


 晴香の提案にリィムが真っ先に目を輝かせて手を上げた。


「やります! 私やってみたいです!」


「かしこまりました。ではリィム様は氷属性ですのでこの青色の弾丸を装填してください。」


 晴香はハンドガンのマガジンを抜き出して青色の弾頭の弾丸を一発装填してセットする。銃はクロッグ42系のコンパクトサイズだろう。かなり小さめで女性でも片手で持てる位小さかった。


「どうぞ、ちなみに属性を間違えると普通の実弾と変わりませんので、充分に注意してください。」


「急に怖くなる事を言わないで下さい!」


 リィムが晴香に苦情を入れるが、そこは信じてこめかみに銃を当てて引き金を引いた。思ったよりも小さい発砲音の後にリィムの頭が銃の反対側へと軽く揺れた。


「え? ちょっと、大丈夫なの?」


 ユキが慌ててリィムに駆け寄ろうとするが、すぐに杞憂だと理解した。リィムの髪が白金色に、瞳は水色へと変化したのだ。


「急に呼び出すとは、今度の相手は誰?」


 先程までのリィムとは違う声になっていた。その様子を見てタツミが近づいて説明を始めた。


「久しぶりだなハッキネン。ちょっと人間界でお前達を召喚出来るかの実験だったんだ。今は敵は居ない。」


「ポンコツか……久しぶり。」

「ハッキネン! 久しぶりに会ったのだから普通に呼びなさい!」


 詰まらなさそうな表情のハッキネンに内側からリィムの声が響く。


「本当に同化しても両方の意識が有るのですね……初めて拝見させて頂きました。」


 晴香はその様子を驚いた様子で見ていた。その後、補足説明として補充した分の精霊力を使ったら強制的に召喚が終わる事、その精霊力は副作用が起きない程度に抑えられている事等を伝える。


「ちなみにそれ以上の力が必要な時はどうするのですか?」


「その際は別の災害時用の精霊銃を配布いたします。これに関しては司令官の承認か非常時によるSSSランク以上の特権が無い限り持ち出せません。」


「そうなるとSSSランク以上の特権はかなり慎重になりますね。」


 リィムが晴香に質問を投げかけている間に、ハッキネンの気配が消えたのをその場の全員が察知した。


「おおよそ3分程度か。」

「だな、逆にタイミングをしっかりと考える必要が有りそうだな。」


 タツミとレンは時間を確認する。それを聞いていた他の5人も静かに頷いた。


「では、時間も遅くなりました。こちらに食事を用意してますのでお召し上がりください。後、こちらのスマホをお返しします。秘匿回線のツールを入れておりますので、周囲に注意してご使用ください。」


 晴香は理解の速い7人に満足すると、各自のスマホを返却して別室へと案内を始めた。各自今日は元々全員で夕飯を食べると言って有るので大丈夫かと言った面持ちで後ろをついて行った。

 

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