第9話 会議室で集合
「さて、ここが会議室だ。コーヒー位出すから寄って行こうか。」
「誘う様に言ってるけど、拒否権無いよな?」
稲葉はタツミを連れてひときわ大きな扉を電子キーで開けて中に入ると、そこには国会議事堂の様に大きな会議室だった。
「驚いたかい? ここは部隊の作戦等が有る時にも使うからね。これ位大きくないと人が入りきらないのだよ。」
「結構な大所帯なんだな……それでみんなもここに来るのか?」
「ああ、もうすぐ来るだろう。君を探してね。」
稲葉が見透かす様に言うと、入り口の方から数人が近づいて人影が見えて来たのだった。
「タ、タツミ君!」
姿を確認すると開口一番にヒジリはタツミの元へと駆け寄ってケガが無いかを確認していた。
「あ、ああ大丈夫だ。ヒジリも無事だったか?」
「う、うん。そこに居る兵隊さん達が道案内してくれたから。」
ヒジリに言われて入り口の方を見ると兵隊服を着た3人組が手を振っていた。その後ろに見慣れた友人達の姿が見える事にも気が付いた。
「おいおいタツミ、彼女優先は分かるけどな。こっちもちゃんと心配しろよ。」
「そうだわよ。もう少し周りを見なさいよね。」
文句を言いながらレンとナギが二人の方へと歩いて行く。当然その場にいた稲葉に警戒をしながらであった。
「それで、このおっさんは誰なの?」
「ユキ、初対面の人におっさんは失礼ですよ!」
更に後ろからユキと、霧崎を引きずる様に首根っこを掴んだリィムが近づく。
「私は稲葉と言う者だ。ここの司令官をしている。君達には面倒な思いをさせた事をお詫びする。」
稲葉は全員に向かって頭を深々と下げると、レン達はその様子を見て警戒心を解いたのだった。
「司令が頭を下げてるっす!」
「いや、司令はいつもまともな大人だろうが!」
「そうよ、今回はこっちに非が有るんだから当然でしょ?」
「まぁ、確かに桐生隊長と霧崎副官の指示だったっすもんね。」
入口付近で待機していた3人組が騒いでいると、それを聞いた稲葉はヤッパリかと言った表情で溜め息をついた。
「やはり桐生と霧崎の独断か……Sランクの特権を勘違いしおって。」
「霧崎って……このオバさんですか?」
リィムが引きずっていた霧崎を軽く持ち上げて稲葉の方へと向ける。
「君……結構力持ちなんだね。」
「何か言いましたか?」
「いや、何も……」
稲葉は自分の失言に焦りながらも霧崎に声を掛けて起こす。
「霧崎君、起きなさい。」
「ん……い、稲葉司令!?」
霧崎は目を開けると驚愕の表情になると同時に慌てて逃げ出そうとするが首根っこをリィムに掴まれたままで身動きが取れなくなっていた。
「あ、アンタ! は、放しなさいよチビ! あ、ウソです。放して下さい! お願いします!」
見苦しく暴れる霧崎を見て、明らかにイラついた表情を浮かべたリィムが手に力を込めると霧崎は諦めたのか少しづつ大人しくなっていく。その様子を見ながら稲葉は霧崎の様子がいつもと違う事に気が付く。
「ふむ、樋上神との契約が切れておるな。これではただの精霊術士と変わらなくなったな。」
稲葉が静かに語りかけると霧崎は慌てふためき始めた。
「元々、樋上神も接天主も国を護る為に契約していた。お前達への同調では無くて国の為と言うだけで契約して貰えてたのだ。それが自分達より強い者が現れたのだ、契約解除して消えるのは当然だろうな。」
みるみると霧崎の顔が青ざめていく。
「つまりだ、君達にSランク特権は適用されなくなった訳だ。この意味が分かるかね? なぁ桐生君も。」
稲葉はそう言うと改めて入口に視線を向けると、そこにはクリューエルに腕関節を極められながら道案内をして来た桐生の姿が有った。
「どうりで接天主がいくら呼んでも来ない訳か! 役立たずが!」
「開口一番に精霊への悪口か、自分の力量が足りないのに。」
「イダダダァァァ! 貴様! 今ならまだ許してやる! 早く解放しろ!」
桐生の悪態にイラついたクリューエルが更に腕を絞り上げるが態度が改まる事は無かった。
「おい、チーム『ブラック・ウィングス』この二人を拘束して特別収監室へ連行しておいてくれ。こいつらは契約精霊が居ないから君達よりも弱い。」
「了解っす! あ、お兄さん。そのゴミ預かるっす。」
「特権を利用し過ぎましたね。精霊が居なければただのクズ野郎共だ。」
「やっとこのオバさんから解放か~若い子いびるから嫌いだったんだよね~。」
稲葉は入り口で待機していた三人に命令すると。3人は喜び勇んで二人を拘束して去って行った。
「あの3人ってチーム名が有ったんだね。」
「でも少し中2病っぽいわね……」
「一周回ってアリなんじゃない? 私はそう言うの好きよ?」
「そう言えば名前を聞くの忘れましたね、今度会ったら聞いておきましょうか。」
女性陣がその様子を雑談しながら眺めていると、稲葉が指を鳴らした。すると部屋のドアが閉まり暗くなると、会議室の奥のスクリーンに映像が流れ始めた。
そこには台風や火災と言った災害の映像とそれを何とかしようとしている人間達の姿が映し出された。その映像には映画さながらの様な精霊術を行使している物だった。
「コレは……精霊術?」
「だな、そしてこの災害は……?」
タツミとレンはその様子を見ながら何か違和感を覚え始めていた。
「これが対精霊災害特殊部隊『スピリット・ディザスター・レスポンス・チーム《Team》』通称『スディレット』の行動記録だ。」
稲葉がゆっくりと説明を始める。
「我々は想定外の精霊の出現による事故や災害を防ぐのが目的で動いている。コレはその時の映像と被害の様子だ。」
映像には明らかに精霊と思われる存在が洪水、地震、突風等を引き起こしているのが記録されていた。そしてそれを精霊使いや精霊術士が戦っている姿が有った。
「彼ら精霊は運よく封印されて祀られた者を覗いて、例外無くその力を暴走させて消滅に至る。」
「つまり、アンタ達は精霊を封印。もしくわ排除するのが目的と言う事か?」
タツミが確認する様に稲葉を見ると黙って頷いた。
「そうだ、我らは御神体などと言われる『封神具』を依り代として封印するのが目的だ。それが出来ない場合のみ排除する。ただし、排除にはそれ相応のリスクが付きまとう。」
そう言うと稲葉は映像を切り替える。そこには霧散する寸前の精霊がおり、そして霧散した瞬間に先程とは比べ物にならない自然災害が発生したのだった。
「上位になればなる程、蓄えている自然エネルギーである精霊力が凄まじく、霧散の瞬間に大暴走を起こす。」
「何てことですか……これでは自然消滅を待った方が良いのでは?」
リィムがその惨状を見て見解を述べると稲葉は静かに否定する。
「いや、どっちにしろ精霊力が薄い人間界で精霊は契約でもしない限り長くは生きられない。その際には同じことが起きるのだ。」
「結局は早いか遅いかの違いという事ですか。」
「それで封印をするってわけね。」
クリューエルとナギが相槌を打つ様に納得する。他のメンツも黙ってはいるが皆が納得した様子だった。
「そして厄介なのは、我らが大きな精霊術を使うとリバウンドが起こる。」
「リバウンド?」
ヒジリが不思議そうな表情を浮かべながら聞き返す。
「大きな精霊術を使うと付近の精霊力バランスが大きく崩れる。それを戻そうとして自然災害が発生するのだ。もし、これを精霊術で相殺しようとすると更に大きな自然災害が発生する。」
その説明を聞いて何となくだが納得した様子でレンが聞き返す。
「少ない精霊力でいかに効率良く封印するかが大事って事か。確かに災害自体を打ち消す事がノーリスクで出来るなら今まで世の中の災害は無い訳だからな。」
「理解が早くて助かるよ。そして察しの良い子供達は大好きだからこの後に続く言葉は解るよな?」
稲葉の笑顔に全員が引きつった表情になる。何とかタツミが言いたくは無いが言わざるを得ない言葉を口にする。
「つまり、『スディレット』の活動を手伝えと?」
「モチロン、君達の普段の生活は保障するし、作戦時の工作は国家権力で何とでもするさ。そのままここに就職でも良いぞ? 給料も高いぞ、危険手当付くからな!」
妙なテンションになっている稲葉に全員がウンザリした表情になっていた。




