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聖女の貴女より愛し子の私の方が上でしてよ?推しのいる世界は最高です。!

作者: おかき

今夜は陛下の誕生祭の最終日であり、大夜会が開催されている。


私の目の前には、聖女を真ん中に王太子殿下とその側近どもが前を塞いでいる。

アホばかりの顔ぶれに、うんざりする。


私は挨拶もしない。

ただ、扇子を口元に宛て不機嫌さを隠す事無くアホ達を見つめる。


王太子殿下が一歩前に出る。

「ディアナとの婚約を破棄する!」

そう叫んだ。


「どうぞ。」


私はただそれだけを発した。


アホ達は。

「婚約を破棄されるのだぞ!傷物になるのだ!」

「悔しさの余り、言葉をまともに言えないのでは!?」

「聖女様をいじめるから、惨めな結果になるのだ。」

「無様だな!」


「ディアナ様を悪く言ってはいけないわ!私が殿下を好きになったばかりに、こんな事に⋯⋯。側近の方達まで巻き込んでしまったわ!

この罪は私が一生償って行かなければならない⋯⋯。」

シクシク泣き出した。


アホ達は。

「聖女様が気になさる事はないのです!!」

「そうです。悪いのは聖女様に嫌がらせをしたディアナ嬢だ!」


「ディアナ。婚約者であり嫉妬するのは解らなくもない。だが、やり過ぎたのだ。

大人しくしていれば、側室としてやったものを⋯⋯。

私の婚約者として相応しくない。

よって、婚約は破棄される!!」


「はぁー。どうぞと申し上げましたが?

貞操観念も悪くなると、耳まで悪くなるのかしら?

もしかして、盛りすぎると頭も悪くなるるのかしら?」

クスリと笑い。


「猿以下ですわね。」


しーん⋯⋯。


驚いているのは、王太子達だけではない。

周りの貴族達が全員驚いていた。


ディアナは貴族らしい美しい所作をし、令嬢の鑑と称されている。

聡明で、心優しく控えめで大人しい令嬢と言われているのだから。

そんな令嬢から、先程の言葉が出るとは思っていないのだ。


「婚約を破棄して頂いて構いませんわ。逆に婚約を破棄と聞かされて、喜ばしいですわ。」


扇子を閉じ、微笑む。

ディアナの容姿は、大陸一と言われる程なのだ。

王太子達も一瞬見惚れるが、聖女の咳払いで我に返る。


「ディアナ!貴様っ不敬だぞ!」

王太子殿下である、アーサーが怒りの声を向けた。


「不敬って言葉を知ってらっしゃるのは結構ですが、王太子殿下は敬われていないのですから、不敬にはなりませんわよ!?」

コテンと首を傾げるディアナ。


性別問わずに皆がその仕草に見惚れる。


我に返ったアーサーが反論しようとするが。

「聖女様は、光魔法を使えて治癒も浄化も出来る稀有な存在でしたわね。」

「違いまして?」


野次馬の貴族達に視線を向け、問いかけた。


「ディアナ様の仰る通りです。女神様から選ばれし稀有な存在です。」


ディアナの問いかけに答えたのは、宰相子息であるラインハルト様だった。


「ありがとうございます。」

ディアナがラインハルトに微笑み、お礼を伝えた。


「聖女様は神殿にて民達への奉仕の治癒や、討伐での浄化をなさっていませんわね?なぜでしょうか?」


聖女様がお役目を放棄するなど、あってはならない事だ。

夜会の会場にいる全員の視線が、聖女に向けられた。


「それは⋯⋯た、体調が悪かったのよ!」

聖女であるエリアナが答えた。


アーサーや側近達が援護する。


「聖女も人間だ!体調を悪くする事もある。」

「そうです。それを働けなど、貴女は何様ですか!!」


それもそうだ。

と、会場中の視線がディアナに向けられる。


「自身の体調も治せないのに、聖女ですか?」


⋯⋯⋯。シーン。


王太子殿下や側近も一瞬考えたようだ。


「聖女様。貴女は殿下や側近達と肌を合わせてますね。」

ディアナの直球に、エリアナが顔を真っ赤にして反論する。


「そんな訳ないでしょ!!」


「誰ともしていないと?」


エリアナが口を開こうとしたが。


「聖女様が殿下達と寝台で遊んでいる間、誰が民達へ治癒をしていたと?誰が討伐に同行していたと思いますか?」


「神官とか誰かいるでしょ!」

エリアナが大声で反論する。


ディアナはクスリと笑う。


「治癒魔法や浄化は女神様から与えられし特別な力。神官様達まで使えていたら、聖女なんていらなくてよ?」


ディアナの言葉に、会場中が(それもそうだ。)

と、同意の言葉が囁かれる。


「聖女様は純潔ではなくなってしまいましたわ。聖女の力が消え、聖魔力を使えない⋯⋯。」


会場中がざわざわする。


「殿下に側近の方は身に覚えがありますわね。貴方がたの最初の誰かが、聖女の聖魔力を消したのですよ?

聖女様が婚姻をする時は必ず神殿を通し、女神様からの許しを得なければなりません。

純潔でなければならないからです。婚姻後、女神様により次の聖女が現れます。」


殿下や側近達が青褪める。

青褪めるが、全員が自分だけが聖女と関係があったと勘違いしている。


「全員青褪めると言う事は、全員が身に覚えがあるのでしょうね!!」

楽しそうに話すディアナだが、当の本人達は初耳だった。


「エリアナ!どういう事なのだ!」

アーサーが聖女を問い詰める。

側近達も加わり騒がしくなる。


「だから猿以下と申し上げたでしょう?」


会場中からは、クスクスと嘲笑う声が出始めた。

殿下達は言い訳をしようとするが、自身で関係を認めた発言をしたのだ。

固まったまま、嘲笑う声をただ聞くしかなかった⋯⋯。


「アーサ殿下。貴方と私の婚約はとうに破棄されてますわよ?」


ディアナの言葉を聞き、驚いたアーサがバッと顔を向けた。


「盛りのついた猿以下の貴方と、婚約を続けるなんて嫌ですわ。

私には既に婚約者がいますので、婚約破棄は成立しませんわね?

エリアナ嬢の言葉に惑わされ、この大切な大夜会で私を貶める事は無理でしてよ?エリアナ嬢は複数人と関係を持っていますもの。殿下と結婚して病気を貰うのも御免ですし?既にエリアナ嬢の幼馴染の方は病を発症しましたし⋯⋯。」


(((情報が多すぎる!!聖女が性病持ち!!)))


会場中の人々や殿下達がディアナの言葉を頭で復唱しようとする。


「殿下と側近達は今の身分もなくなり、これからは大変ですわね?

ですが、陛下からの温情で全員がエリアナ嬢との婚姻が成されましたので良かったですわね?

病を発症しても、全員仲良く発症するのです。良かったですわね?

全員仲良く一緒に添い遂げる。

陛下からの特別な配慮ですわ。」


ディアナがウンウン頷きながら、新たな話を伝える。


会場中が混乱している⋯⋯。


「エリアナ嬢は聖女の称号を剥奪されておりますので、この先は聖女と呼ぶ事は禁止されております。」


エリアナがディアナを睨みつけるが、ディアナはニッコリ微笑み返した。


「私は聖女よ!今は力が弱いけど、女神様に選ばれたのは私よ!!」

真っ赤な顔で叫ぶエリアナを見て、殿下や側近達は自身の体の不安もあり、少しずつ離れようとする。


「聖女と呼ぶ事は禁止されていると申しましたよ?」

ディアナの言葉にエリアナが反論する。


「聖女が消えたら、誰が浄化や治癒をするのよ!私しかいないじゃない?女神様に選ばれた私しか出来ないのよ?」


エリアナの言葉にディアナがクスリと笑う。

それを見てエリアナが口を開こうとするが。


「神官様でも治癒が出来ると言ったのは貴女ではなくて?それなのに、今更私だけしか出来ないなんて⋯⋯。お話の内容が支離滅裂でしてよ?

貴女が遊び呆けている間、誰が浄化し誰が治癒をしたのか。

聖女ではない、誰かがいるのですよ?エリアナ様ではない、誰かがね?!」


殿下がディアナに問いかける。


「他に聖女がいると言うのか?エリアナ以外に聖女が現れたと?」


ディアナは美しい笑みで殿下に答えた。


「聖女ではありません。愛し子様ですわ。」


ディアナの言葉に、会場中がざわめいた。ここ数百年に渡り、愛し子様が顕現された事が無かったからだ。


「嘘よ!悪役令嬢のアンタが言う事なんて、嘘に決まっているわっ!」


ディアナはエリアナの言葉に動じない。

悪役令嬢と言ったエリアナは、やはり転生者だった。

(知ってましたけどね。)

ディアナはじっとエリアナを見つめた。エリアナはディアナが転生者だとは知らない。

王太子殿下や側近達を攻略した事で、物語は自分を中心に進んでいると思っている。

ディアナがイジメて来ない事に不安があったが、攻略が上手くいった為、深く考えなかったのだ。


会場にいる者は、先程の愛し子様の発言をしたディアナに注目していた。


「エリアナ様はヒロイン。私は悪役令嬢。物語ではその役割ですわね?」


ディアナの言葉を聞き、エリアナはやっとディアナが転生者である事に気が付いた。


口をはくはくさせるだけで、言葉を発せない⋯⋯。

(ディアナも転生者?だからイジメて来なかったのね!)

理解すると、ディアナに掴みかかろうとする。


が、ディアナの前にラインハルトが出てエリアナを強く払い除けた。

エリアナは尻餅をつき、呆然としていた。

攻略対象のラインハルトがディアナを庇ったからだ。


「なぜラインハルト様がディアナを庇うのよっ!私を無視した挙句、悪役令嬢を庇うなんてありえない!」

エリアナの怒りの表情を前に、ラインハルトが口を開く。


「私がディアナの婚約者だからだ。貴様の汚れた手でディアナに触れる事は許さない!」


社交界では、アーサ殿下は太陽のように笑顔が眩しい男性と称されている。

ラインハルトは逆で、冷たい表情を常に貼り付けているが、美しい容姿を月のようだと称されている。


ディアナは、前世からラインハルト推しだったのだ。

ラインハルトのいる世界に転生したと知り、推し活を密かに行っていた。

転生した事に気が付い時は、既にアーサ殿下の婚約者だった。


とりあえず王太子妃になる為の教育は受けた。知識は邪魔にならないからだった。

だが、アーサ殿下とはほとんど会う事をしなかった。

奉仕活動(推し活)が忙しいと、お茶会などを避けていた。


ラインハルトを陰ながらに支え、陰ながら見つめ、日記に記録を続けた。


学園の中庭でラインハルトの日記を書いている時に、本人に覗かれて推し活を知られてしまった。

日記を没収され、ラインハルトの事を記した日記を本人に読まれたのだ。


日記の内容は、ラインハルトへの溢れる愛と格好良さ、その日の行動を細かく書いた。


「ディアナ嬢は私が好きなのですか?」

本人にそう問いかけられた。


「好き?そんな簡単な言葉ではないわ!私の全てよ。前世も今世も、全てラインハルト様だけの為に生きてるのよっ!」


自棄になり、本人に本音を大暴露した。


「そうですか。実は、私もディアナ嬢が全てですよ?ずっと私を覗き見してましたよね?

それが気になり、いない日は貴女を探す自分に気が付きました。私は貴女に恋しています。アーサ殿下から略奪する計画を立てるくらいにね。」


ラインハルトの思わぬ告白に驚いてしまう。

ラインハルトに抱きしめられ、ディアナは前世の事や物語の事を全て伝えた。


二人は密かに恋人同士となり、絆を深めた。


その間にアーサ殿下とエリアナが肌を重ねた事を突き止め、証拠と共に両親に伝え、婚約破棄に向けて密かに動き出したのだ。


勿論、ラインハルトの父である宰相にも話を通し、計画に加わって貰った。


奉仕活動の一環で神殿に訪れた時に、ディアナが倒れてしまった。


ディアナは夢の中で、女神様にある事を伝えられた。


『聖女は純潔ではなくなった。私の許可なく散らせば聖女の力は無くなってしまう。この世界を愛した子だと思い、転生させたのです。

貴女も同じよ?私の世界の子供を深く愛した。出会わせてあげたくて、転生させたのです。

聖女はあの子の命が尽きるまで存在させる事は出来ない。あの子の命を摘む事は心が痛い。

貴女に愛し子となってもらい、聖女より更にこの世界を愛する貴女に私の力を渡したい。』

声だけが夢の中で響き渡る⋯⋯。


『ディアナ。貴女を愛し子とします。神殿にて会いましょう。』


最後の言葉を聞くと、パッと目が覚めた。

視界に入ったのは泣きそうな顔のラインハルト。

そんな顔すら美しい⋯⋯。

ディアナは手を伸ばし、ラインハルトの頬を撫でた。

触れたくても触れられなかった、前世での大好きな推し⋯⋯。

外見だけではない。表情は冷たいが、心は温かく領民思いの優しい人⋯⋯。


ラインハルトの温もりを決して手放さない。

その為には何だってやる!


目覚めた事を知った両親に女神様からの言葉を伝えた。

翌日、宰相も交え神殿に向かう。


女神様の像の前に来ると、像が淡く光り始め神官達が驚いている。


『ディアナ。良く来てくれました。貴女を私の愛し子とします。この世界を頼みます。』


言葉を終えると、光が消えた⋯⋯。


神官達はディアナに傅く。

聖女が役割を放棄し、神殿に戻らないのだ。

浄化も民達への治癒もままならず、神官達は頭を抱えていた。

そこに愛し子様の顕現である。

喜ばずにはいられなかった。


ディアナは愛し子である事を内密にしてもらった。

エリアナとアーサを嵌める為に⋯⋯。


宰相を通じて陛下にだけは伝えられた。

自身の息子であるアーサが、愛し子となったディアナを虐げていたからだ。


学園では聖女と殿下の悲恋を生徒達が応援し、ディアナを邪魔者のように扱っていた。


陛下は長年の婚約者であるディアナをずっと気遣っていた。

臣下からはディアナ嬢との婚約を白紙にし、聖女と王太子殿下との婚約を進言されていた。

国としては、聖女の方が一臣下の娘よりも大事であるのは陛下も承知している。

だが、人として陛下はディアナを選んだのだ。


ディアナは陛下の優しさや気遣いをきちんと理解していた。


陛下を交えての話し合いは円満に終わる。


ディアナは聖女が聖魔力が消えたことを伝えたのだ。

しかも原因が自身の息子である。

陛下は頭を抱えるが、ディアナの提案により救われる。


ディアナが魔物の討伐と浄化に向かう事。

神殿での民達への治癒活動を行なう事。


聖女の代役を引き受けてくれるのだ。

陛下はディアナの条件を全てのんだ。


アーサ殿下との婚約の白紙。

ラインハルトとの新たな婚約。

エリアナと殿下を含めた側近達との婚姻。


そしてディアナ自身が愛し子である事を口にするまで、全てを陛下の胸の中に仕舞って頂くこと。


時が来るまで、ディアナは水面下で画策していたのだ。


ディアナが転生したと気が付いた時にはアーサ殿下と婚約をしていた。

それまでは高位貴族としての教育に淑女教育と、厳しい教育を施され生きてきた。

ラインハルト推しではあったが、推しは推し!と、陰ながらの推し活にとどめ、殿下との仲をきちんと深めようとしたのだ。

だが、殿下は淑女の鑑と言われ頭の良すぎるディアナを敬遠したのだ。


物語のディアナは引っ込み思案で淑女の鑑とまで言われてはいたが、明るい殿下に惚れ込み従い、依存する性格になった。


自分の大切なものを奪われたら、誰だって戦うと思う。

戦い方を知らず、聖女を攻撃するのは良くない。

だが、浮気した殿下と聖女が正しいとされればディアナの行き場のない思いは爆発するに決まっている。


前世の私はディアナに同情するくらいには、物語のディアナは可哀想な役割だった。


ディアナは一生を平民が入る地下牢に入れられた。

貴族として生きたディアナが耐えられるはずもなく、短い人生を終えたのだ⋯。


物語のディアナが受ける筈だった断罪を、今世のディアナは蹴飛ばすつもりなのだ。


物語の中で聖女はラインハルトに手を出すも、殿下への忠義が勝ち聖女と関係を持つ事はなかった。

物語を読みながら、ハラハラしたものだ。

聖女に簡単に落ちなかったラインハルトを、より一層推すことにはなったが⋯。



さて。会場に意識を向ける。


会場の中にいる者は。

エリアナの聖魔力が消え、ディアナが愛し子であると知る。

ディアナと殿下の婚約は白紙になっていた。

エリアナが殿下や側近達と関係を持っていた事。

エリアナが病気も持っていたと聞いた殿下達が大騒ぎしている。

しかも、エリアナは全員と婚姻する事となる。


情報が多すぎる⋯⋯。


騒がしいのでディアナは放置しながら、ラインハルトとの出会いを回想していたのだ。


そこに陛下と宰相が現れた。

本来は陛下の誕生祭なのだ。

主役を置き去りに、夜会は騒がしく賑やかだ。


ディアナとラインハルトの元に陛下と宰相が近付いて来た。

「ディアナ嬢。アーサが申し訳ない事をした。」

陛下がディアナへ謝罪した。


「陛下は悪くありません。私を守って下さった。それだけで十分ですわ。」

フワリと微笑み、陛下と遺恨がない事を周りに周知させた。


「さて、アーサよ。そなたは以前からディアナ嬢との婚約を白紙にしエリアナ嬢との婚約をしたい。そう申しておったな?

その思いを親として叶えてやった。

王命での婚約になる故、婚姻後の離縁は出来ぬ。側近達もだ。」


陛下からの言葉に、とうとうアーサや側近達は膝を突き絶望の顔を見せた。


だが、エリアナだけは諦めていなかった。


「悪役令嬢の言葉を信じ、聖女である私の言葉を信じないなんてありえないわよ!ディアナが愛し子なんて、絶対にない!

ディアナは断罪されて地下牢で死ぬ運命なのよ!」


違う!ありえない!

エリアナは喚き散らす。


ラインハルトが頭を下げ、陛下の前に出た。

「陛下。エリアナ嬢の発言は聞くに堪えません。口を開けないように魔術をかけて宜しいでしょうか?」

ラインハルトの提案に


「そうだな。愛し子であるディアナ嬢への暴言は許し難い。許可を出す。」


陛下の了承を得たラインハルトがエリアナの前に来た。

味方になってくれると勘違いするエリアナが、満面の笑みでラインハルトを見つめた。

ラインハルトがエリアナの首に手をかけ、魔術をかけた。


ラインハルトがエリアナに何が囁いたようたが、誰も聞こえていないようだ。

ラインハルトが首から手を離し、一歩後退する。

エリアナの顔は、顔面蒼白だった。

膝をガクッとさせ、床に突いた。


口をはくはくさせてラインハルトに何かを伝えようとしている。

だがディアナからはラインハルトの背中しか、見えない。


エリアナが涙を流し懇願しているが、ラインハルトは全てを無視してディアナの側に来た。

優しい笑みをディアナに向け、頬を撫でながら

「あの女の声は一生聞くことはないでしょう。煩わしい声が消えてディアナは、嬉しいですか?」


声も仕草も優しさで溢れているが、気配が危険を放っている。

ディアナを撫でる手が首筋を撫でる。

逆らう事を許さない。

優しい手つきで刻み込む。


「満足よ。」


ディアナは一言だけ伝えた。


ディアナの腰に手を回し、陛下へと二人で体を向ける。

陛下は仲睦まじい二人を皆に紹介する。


「ディアナ・カーソン公爵令嬢とラインハルト・ゴーシェ公爵令息との婚約は王命にて整った。

またディアナ嬢は神殿が認めし愛し子様である。」


陛下の言葉に会場中が沸き立つ。

数百年振りの愛し子様の顕現。しかも、大陸一の美しさを持つディアナ嬢。

賢く聡明であり、淑女の鑑の令嬢。

社交界は大歓迎である。


この時参加していた学園の生徒達だけが絶望している。

ディアナ嬢を邪険に扱っていた自分達の愚かさを後悔するも、遅いのだった。


ディアナ嬢は謝罪を受け入れてくれたが、それを許さなかったのはラインハルトだった。

直接ディアナに侮辱発言をした者を正確に記憶していた為、社交界からは爪弾きとされた。


次期当主から外された者や、婚約を破棄された者もかなりいた。

だがそんな人達も、自業自得と反省し領地での仕事に励んだり真面目に生きたのだった。


思う事は一つ。

エリアナや殿下達の処罰にくらべたら、甘い処罰だったからだ。



大夜会から数日経った頃、元聖女と殿下達の処罰が発表された。


それは不作続きの北の辺境の地の開拓だった。

そこは聖女が討伐を放棄していた為に、大量の魔物が発生していた。

魔物のせいで農作業をする事が出来なくなったのだ。


自分達のせいで辺境の地が荒れたのだが、辺境の地へ魔物討伐など行きたくない殿下達は逃げ出した。

だが魔法で捕らえられ、陛下の命により奴隷の印を刻まれ北の地より出れなくしたのだ。

子供が出来ない体にされ、エリアナと書類のみの婚姻をすませ魔法師団に連れられて辺境の地へと追いやらた。


魔物の討伐に領地の改革。やり遂げるまで奴隷の印は消えない。

アーサ達は最初は腑抜けていたが、討伐しなければ自身の命も危ういと自覚し今は討伐を頑張っているらしい。


元聖女のエリアナは部屋に引きこもり、一切出て来ないようだ。

あの大夜会の日から、ブツブツ独り言を呟いている。


ラインハルトとお茶を飲みながら、ディアナが顛末の報告を聞いていた。


(計画が全て上手く行って良かった。

断罪は回避出来たわね。)


話を聞き終え、安堵するディアナ。

最愛の推しから、最愛の婚約者となったラインハルトを見つめる。


「断罪は回避出来た。私は未来の幸せを計画するわ。貴方との明るい未来をね。」

ディアナがラインハルトに微笑み、紅茶を口にする。


「貴女はこれから先、何も気にする必要はありません。私が貴女を愛し守り抜くのですから。」


ラインハルトがきつくディアナを抱きしめた。

ディアナも気が付いている。

ラインハルトの独占欲と束縛の激しさを。裏切りは死を意味するだろうと⋯⋯。


痛い程の抱擁と甘く溶けそうな笑みを、ディアナは心地よく感じる。

この檻の中で溺れるのも良いかも⋯⋯。


愛する推しから与えられる事は全て幸せとなる。

破れ鍋に綴じ蓋な二人なのたから。




〜✿〜


ディアナへの深く危うい愛情を、隠す事なくあの女の報告を兼ね態度に出してみた。

ディアナは受け入れてくれた。


前世から愛していたのは、私も同じだ。


ラインハルトは誰にも明かしていないが、転生者だった。

自身が転生した物語も知っている。


父の再婚相手の義妹に勧められたからだ。

借りた本の絵のディアナの美しさに目を奪われた。絵ではあるが、好みど真ん中だった。

性格も依存するタイプは嫌いではなかった。


暫く義妹達と生活して解った。

義母と義妹は尻軽だった。

好みの男性がいれば直ぐに身体の関係を持つ程に⋯⋯。


そんな人間と家族なんて最悪でしかなかった。

だが義母に惚れ込み、信じ切っている父には伝える事が出来なかった。


早く家を出る為にバイトを沢山掛け持ちし、お金を貯めた。


ようやく家を出る日に、私は義母と義妹に襲われかけた。

必要に逃げマンションの階段を走ってる最中に脚を踏み外した。


目が覚めると、あの物語の世界だった。


ディアナはアーサと婚約している年齢か⋯⋯。

落胆したが、ディアナの姿を見れれば満足する。

絵よりも遥かに美しいのだから、視線を向けるのを我慢するのに苦労した。


物語の中の性格とはかなり違うが、物語と現実が全く同じなわけがないと気にしなかった。


美しく優しく聡明な令嬢。

アーサとの接触は少ないようだが、王太子妃教育は受けている。

いずれ結婚するのだと、また落胆してしまう。


ある日ふと視線を感じ、気配がする方を意識するとディアナがいた。

気が付いていない振りを続ける。

たが、確実に自分を見ている。いや、観察されている?


最近はディアナの視線を心地よく感じる自分に気が付いた。

ディアナの事を考えると、多幸感で満たされる。

この世界でも自分がディアナに恋をした事に気が付いた。


やはりヒロインが現れ、アーサや側近達に近付いていた。


ディアナをエリアナは意識していた。

その行動からエリアナも転生者だろうと確信し、近付いて来たエリアナにカマをかけた。

好きな食べ物の話をして「おにぎり」の言葉を出した。

エリアナは普通に好きな具材を話し始めた。(転生者確定)


この世界に「おにぎり」はまだない。

まだないとは、数日後にある商会から販売されるから、まだ⋯なのだ。

発案者は私だ。おにぎりが食べたかった。それだけだ。


しかも、エリアナは会話の中で義妹であると解った。

復讐するチャンスを逃す理由がない。


エリアナがディアナへ何かするのでは?心配になり、ディアナを探した。

中庭で何やら書き込んでいる。

夢中になっているようで、私が近付いても気付いていなかった。

悪いと思いつつ覗いてみると、ラインハルトの名前が沢山書き連ねてある。


話を聞くと、ディアナも転生者でありラインハルト推しだと。

両思い!!

この機会を逃す事なく、ディアナを手に入れる。


ディアナは自分がラインハルトを手に入れたと思っているが、違う。

ディアナの気持ちを知ってから、私はディアナの先回りをし全ての話をつけていた。

逃がしはしない。


大夜会での断罪の時まで、隠れて恋人同士として過ごした。


エリアナのやらかしを私は顔に出さずに心の中で喜んだ。

前世の自分の思いを込めて⋯⋯。


「ざまぁみろ!!」 と⋯⋯。


エリアナの声を封じる際、こう声をかけた。


「前世ではよくもやってくれたな。恵里。」


恵里は目を見開き驚いていた。

直ぐに首から魔力を流し声を封じた。


泣きながら懇願しているが、無視する。

あの時襲われなければ、死ぬ事はなかった。

たが感謝も少しする。

ディアナに出会えたからだ。


「恵里に感謝はしたくないがな⋯⋯。」


呟きは夜会を楽しむ人々の声に消された。


ディアナも私も物語の流れのままに生きる事はない。

自分で選び考え生きていく。


恵里のようにヒロインだからと驕っているから痛い目を見る。


この腕の中の愛しい人を一生愛し抜く。

二人で未来を選んで行くのだ。


誤字報告がありましたので訂正しました。

報告ありがとうございます❀

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