最悪な空模様
初投稿です。お手柔らかにお願いします
カタカタと複数のキーボード音だけが響く。
打っている人は皆一様に死んだ顔をしている。
ここは迅海警察署。深夜3時に総出でパソコンに張り付いて作業をしているのは0時に万引き犯を逮捕したからだ。
(限界すぎる。なんでみんなそんなにスムーズに作業できるんだ...)
万引き犯を逮捕した新米警察官の広川佐來は激務の中一睡もしていないので睡魔が限界突破していた。定期的に立ったり動いたり、エナジードリンクを2本飲んでコーヒーを3杯飲んで。
なんてやっても眠気は一向に無くならない。よって全然作業が進まない。そんなことを2時から始めて今に至る。流石に見かねた隣に座る上司の東山さんが佐來に優しく言った。
「一旦仮眠してから作業した方がいいよ、向こうで寝ときな」
その言葉を待っていた。しかし、みんなが作業している中、自分だけ寝るのは気が引ける。
それを表情で察した東山さんはアイマスクを渡してきた。
「いいから寝とけって、もうお前の分俺がやった方が早いからさ」
「す、すみません」
「いいって、おやすみ」
皆が作業する中、佐來は1人仮眠室に入りアイマスクを着けて眠った。
◆◆◆◆◆
サークルの新歓。その帰り。友達に着いていった女子大生の日下一彩は酒に弱い癖にかなり飲んでヘロヘロだった。
「ゆ〜うちゃん!あたしなら大丈夫らろ。ちゃ〜んと帰れるん、うぷ」
「い〜や、ダメでしょあはは」
友人の湯島優も同じくヘロヘロだった。
「ゆうちゃん家着いちゃったよ?」
「あははじゃあの〜」
そのまま別れると一彩は千鳥足で自宅の迅海市までタクシーをつかまえて向かった。
◆◆◆◆◆
仮眠室で起きる。咄嗟に時計に目をやる。時間は10分しかたっていなかった。
(10分にしては疲れが吹っ飛んでるな。まるでぐっすり寝たみたいに気分がいい。)
これならしっかり作業ができる。そう思いデスクに向かう。しかし、誰もそこにはいなかった。
「え、みんなどこ?」
思わず独り言が出る。
何か緊急事態があったのか。廊下に出て人がいないか見るが気配がない。24時間人がいるはずの警察署から人の気配が一切ないのはおかしい。
(流石に1階の入り口の受付にはいるだろ)
そう考え階段をおりる。しかし、そこにもいない。
「え、なになにドッキリ...はありえないか流石に」
そんなことしてる暇は無いはずだ。
頬をつねる。痛みはしっかりとある。夢じゃない。
言い表せ用のない不安が湧いてくる。息が詰まり呼吸が荒くなる。静寂に包まれているせいで余計呼吸音が大きく聞こえる。
しかし、どこからか
「うお、何処ここ!?」
人の声。
急いでその場所に向かうのだった。
◆◆◆◆◆
頭痛い。吐き気もする。
「ううん」
誰かが話しかけている気がする。返答しようとしても唸り声しか出せない。
今どこだっけ。確かタクシーに。あぁダメだ。眠過ぎ。
「お姉さん起きて」
うん?
「じゃあここで寝ていいからね」
ありがと
「起きたら説明よろしくね」
「承知しました」
なんのこと?
意識がはっきりしてくる。目を開ける。
ここは...
「うお、ここ何処!?」
思わず独り言。周りを見渡すと明るい照明。薄い毛布が2枚に畳。極めつけは鉄格子にプラ板が張り付いている。
「もしかして留置所?」
やばい、前歴が。親になんていえば。
「違う、ここは保護室」
突如鉄格子の先から声が聞こえた。
「誰?」
「迅海警察署地域課の広川巡査です」
「警察の人?私捕まったの?」
「もしかして保護室始めて?じゃあ説明するけど、貴方は逮捕された訳じゃないしここはそういう場所じゃない。保護室って言って酔っ払った人とかが入るとこ。お姉さんかなり飲んだんでしょ」
「...はい」
「起こしても起きない人はここに入ることになってんの。だから逮捕じゃなくて保護ね。前歴とかはつかないよ」
「良かった...あ、すみませんでした。お手数おかけして。私どうしたらいいですか」
「本来なら起き次第ちょっと話聞いて帰すんだけど、ちょっと緊急事態でさ。今、あなたを帰す権限持っている人がいなくてさ。ちょっとここで待っててくれない?」
「あ、はい」
そういうと佐來はいなくなってしまった。
「うわー迷惑かけちゃった。前科がつかないのが不幸中の幸いだなぁ」
しばらくやることがないのでずっと天井を見上げて、ぼーっとしていたがしばらくすると佐來が慌てて戻ってきた。
「今開けるから!開けたら俺についてきて!」
「え?なんですか急に」
「いいから、ここは俺の指示に従って!」
「は、はい!」
その様子は切羽詰まった感じで、とにかく指示に従った方がいいということはアルコールの残った頭でも判断できた。
かなり雑に勢いよく扉が開けられる。
手を掴まれるが、上手く立てない。
「あーもう!」
佐來におんぶされる一彩。
「走るけど吐くなよ!」
そう言ってなかなかのスピードで走る。
案の定気持ち悪くなる。気がつくと外に出ていた。
その瞬間全身にビリビリとした感覚が走った。
生物的なプレッシャーと言うんだろうか。大きな圧力を感じる。その原因はすぐに分かった。
が、理解できなかった。何故なら空が極彩色に揺らめいていたからだ。その光景を眺めた直後、込み上げるものを我慢できなかった。
◆◆◆◆◆
極彩色の空。先程、保護室を後にした直後に見た。まだ夢を見ているのかはたまた頭がおかしくなったのか。両方かもしれないがとにかく街にも人の気配がない。警察署に戻り最上階からくまなく探そうとエレベーターを使うが、起動しない。
仕方なく階段で最上階まで上がろうとするが5階まで登った時、佐來は有り得ない光景を見た。
廊下中に蜘蛛の巣。一面にと言った方がいいかもしれない。奥に蠢く何かを見た時、感覚的に危険を感じ取り、急いで保護室まで向かった。
そして現在、頭からアツアツをかけられている。
「最悪だ。俺なんかした?」
誰にも届かない愚痴をこぼす。
ため息を着く。とにかく今はあそこから離れるのが懸命な気がしてる。
そのまま向き直り、今1番安全そうなところまで走っていくのだった。
次回の投稿日は未定です。




