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【BL】魔王様の散歩道  作者: のはな
第7章 雪国に潜む影
46/60

46.ぶつかり合う力

カキンッ、カキンッ――

グチャ! ドカァン――!


あちこちで武器のぶつかり合う音、肉が潰れる音、魔法の炸裂音が響き渡る。

闘技場はまさに混沌そのものだった。


「うぉぉぉぉッ!!」


吠えるような叫び声とともに、オルトへ向かって巨漢の男が突進してきた。手には金棒。振り下ろされる軌道は凄まじい威力を誇っている。


「...ふん」


オルトは冷静に片手を上げ、魔法陣を展開。

すると、漆黒の魔の手が虚空から現れ、金棒ごと巨漢の体を掴み――


バキィッ!!


骨の軋む音と共に、一瞬で地面へ叩きつけた。男はピクリとも動かない。


「師匠!」


その隣では、ハルが剣を構えていた。足元にはすでに凍りついた10人以上の戦士たちが氷像となって並んでいる。


『あの黒いフードの2人組、なんという強さでしょうか!』


司会の熱のこもった声が会場中に響き渡る。


『ですが――他にも実力者が続々と残っています! 毎回優勝候補に名を連ねる戦士ダイヤ、魔人ヤジル、そして魔術師アイーナも健在です!!』


実況の声と共に、カメラの魔法球が各戦士に切り替わる。


戦士ダイヤは細身の青年。だがその剣捌きは鋭く美しい。無駄のない動きで次々と相手を斬り伏せていく。


魔人ヤジルは筋骨隆々で頭に二本の角が生えている。獣のような咆哮を上げながら敵を素手で投げ飛ばし、地面に叩きつける様子はまるで怪物。


魔術師アイーナは赤い衣を纏い、薄ら笑いを浮かべながら魅了の魔法を放つ。彼女にかかった者たちは目を虚ろにし、仲間同士で殺し合いを始める。


――ドォンッ!!


突如、空が裂けた。蒼雷が轟音と共に会場へ落ちる。

そこにいた者たちは巻き込まれ、爆風と衝撃で一斉に吹き飛ばされた。20人ほどが即座に戦闘不能になる。


その中心に立っていたのは、蒼い髪の青年だった。無表情で、静かに雷をまとっている。


「師匠……あの男……」


ハルが肩越しに声をかけてくる。


「あいつは.....タルールの研究所で見た……ジュウゴ....」


オルトは瞳を細めた。


――カンカンカンカン!!


鋼の鐘が高らかに鳴り響き、司会の声が闘技場に戻る。


『これにて、第一ラウンド終了です!』


「思ったより早く片付いたな....」


オルトが静かに呟いた。


『では、残った10名の名を発表します!』


『熟練の戦士・ガンズ! 妖艶な女剣士・リリー! 華麗なる剣士・ダイヤ! 操る魔術師・アイーナ! 怪力の魔人・ヤジル! 盗賊の双子・マイシャとギル! そして今回初出場の――ハル! オルト! ジュウゴ!!』


司会の熱のこもったコールに、会場のボルテージは最高潮に達する。


『では第二ラウンドの準備をいたします。参加者の皆様は、しばし控え室でお待ちくださいませ!』


――


オルトたちは、再び重たい扉をくぐり待合室へ戻る。


そこではすでに、血まみれの者や重傷者たちが担架で運ばれており、どこか静けさと死の匂いが漂っていた。


「……まるで、戦場だな」


オルトの呟きに、ハルはただ黙って頷いた。


「ハル……ジュウゴが参加しているってことは、タルール達がすでにこの中に潜んでる可能性が高い」


オルトが、誰にも聞こえないほどの小声で言う。


「はい。ハンナさん達にも知らせておきます」


そう言ってハルは胸ポケットから一枚の札を取り出し、そっと魔力を込めた。札は淡い光を放ちながら空中で変化し、小さな青い鳥の姿になって飛び立っていく。


――パタパタ……


◇◇◇


闘技場の客席。


「ハルさんとオルトさん、すっごく強かったですね!」


ハンナが目を輝かせて興奮気味に言う。


「ああ、あいつらならやってくれると思ってたぜ」


ランスが誇らしげに頷く。


その時――青い鳥がひらりと舞い降り、カレンの肩にとまった。


「……ハルかしら」


ぽふっ。


鳥は小さく爆ぜて札へと戻り、そこには短く警告が記されていた。


「タルールが近くにいる可能性がある。警戒して」


カレンはそれを見て、すぐに表情を引き締める。


「……よし。私たちも会場を回りましょう」


「おう、異変があればすぐ知らせるからな!」


ランスが気合を入れる。


「ええ。ランスとハンナは周囲を警戒してちょうだい。私はおばあさんとこの観客席から様子を見るわ」


「了解!」


4人は二手に分かれて行動を開始した。


「ねぇ、おばあさん。あそこにいる人……」


カレンが老婆に視線を送る。指先の先には、長い金髪に青い瞳をもつ青年が立っていた。


「ああ……あれは国王の第二王子、ヘンリーさ」


「王族が、こういう場に直接来ることもあるの?」


「ああ。言ったろう?この国には娯楽が少ない。王族も例外じゃないのさ」


◆◆◆


一方その頃、オルトとハルは再び待合室に戻っていた。


「おう、お前らも勝ち残ったんだな」


スキンヘッドの男・ガンズが笑って声をかけてきた。


「だがここからは一対一のガチ勝負だ。仲良しごっこはここまでだな」


「そうね。勝ちたいなら、誰であろうと倒さなきゃいけないわ」


妖艶な剣士・リリーが涼しい顔で呟く。


「ああ……本気で行くしかねぇな」


オルトもそれに応じた。


ふと、オルトは隣に佇む青髪の青年――ジュウゴへと視線を向けた。


「……なあ、そこのあんた。なかなかの手練れだったが、どこから来た?」


「…………」


ジュウゴは何も答えず、オルトを鋭い目で睨みつけた。それを受けて、ハルが一歩前に出てかばうように立つ。


「あなたの目的はなんですか?」


冷静な声音で、ハルが問う。


「……俺は……」


ジュウゴが口を開きかけた、その時だった。


――ブーブーブー


『第二ラウンドが開始されます。第一試合、アイーナ vs ジュウゴ。呼ばれた方は会場へお進みください』


アナウンスが入り、二人は無言で立ち上がり、静かに出て行った。


『それでは、第2ラウンド開始です!』


司会の声が待機室まで響く。


「戦いを見るなら、こっちの窓から覗けるぜ」


ガンズが指差す先には、待合室から闘技場の一部が見える小窓があった。


その窓を覗いた瞬間――


ドカーン!!


轟くような青い雷鳴が響き、アイーナは一瞬で地に伏していた。


「一撃……」


オルトの表情がわずかに曇る。


戦いは続いた。


・ガンズ vs ギル

→ ガンズ勝利(ギルは血まみれで倒れる)


・ダイヤ vs リリー

→ 華麗な剣裁きでダイヤが勝利


――そして、ついに。


『次の対戦は――剣士ハル vs 魔人ヤジル。指定された方は会場へ向かってください』


「気をつけろよ」


オルトが言う。


「大丈夫です。必ず勝ってきます」


ハルは真剣な眼差しを向けてから、闘技場へと歩いて行った。


『それでは剣士ハル vs 魔人ヤジル――対戦、スタート!!』


開始の合図と同時に、ヤジルが地面を殴りつける。


ゴゴゴゴッ!!


土がうねり、爆発的な衝撃波となってハルを襲う。


だがハルは即座に氷の魔法を発動。冷気が大地を覆い、迫る衝撃を凍てつかせて防ぐ。


「やるな……!」


ヤジルが唸る間に、ハルは背後へと瞬時に移動し、氷の槍を放つ。


――ズシャッ!


だが、ヤジルは反射的にそれをかわした。


「……あの魔人、相当の手練だな」


オルトが唇を噛む。


「そりゃそうさ。この舞台に出られる魔人は一体だけって決まってる。つまり……こいつは召喚された魔人の中の頂点ってわけだ」


ガンズが低く語った。


ヤジルが再び地面を叩き、裂け目から巨岩を引きずり出す。それを渾身の力で投げつけてきた。


「はあっ!!」


ハルは剣を抜き、構える。


ズバァァァッ!!


巨大な岩を一刀両断するハル。氷の魔力を纏った刃が閃光のように光った。

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