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ファイル.01 鏡に映る迷子の少女と帰れない駅(9)

 九十九は駅ビルの北側にある従業員用の出入口へと向かった。

 しかし、前回と違って、出入口の外は闇に包まれていた。

 

『ちっ、どうやら塞がれてしまったようだな……』


『怪異の元凶は、どうしても私たちのことを外に出したくないみたいだね……』


『仕方がない。元凶を探すとするか。九十九、前も話したが、怪異の数が多くて俺の鼻は当てにならないと思う』


『しらみ潰しに当たっていくしかないか。ゼロ、私がさりげなく彼らの身体に触れていくから、君が元凶かどうかを確認してくれ』


『ああ、時間をループさせるほどの力を持った怪異だ。潜在エネルギーを探ればすぐにわかる。そして、見つけ出したら絶対に俺が喰らってやるよ』


 九十九はゼロとともに駅ビルの中を探索しながら、元凶となる怪異を探していった。


『そういや、お前、男子トイレの中とかどうするんだ? 強行突入するのか?』


『さすがにそこは付喪神を使うよ。私がずけずけと入っていくのは色々とまずいだろう』


 そう話すと、九十九は持ってきたカバンから白い紙を人型に切って作った依代を取り出した。


『この国におわします八百万の神々よ、我が依代(よりしろ)に宿り、我に力を貸したまえ』


 紙で出来た依代は空中に上がり、九十九の周囲をくるくると周り始めた。


『ほんと、お前のその能力、便利だよなぁ。どんな物にでも魂を宿して、付喪神に出来るんだろう?』


『魂が寄り付く物を依代っていうんだけど、私はただ、その依代に魂を吹き込んでいるだけさ。まあ、便利な反面、制限時間とか、デメリットもあるんだけどね』


『でもよ、なんで今回は紙にしたんだ?』


『これはヒトガタといってね。紙で出来たもっとも単純な依代なんだ。紙だから出来ることは多くないが、こんな偵察みたいな調査には有効な依代なんだ』


『なるほどねえ。お前の能力も奥が深いんだな』


『まあね。さて、この付喪神に、男子トイレの中に人がいないか確認してきてもらおう』


 九十九がそう話した瞬間、館内放送のアナウンスが流れてきた。


「まもなく、一番線に電車がまいります。黄色い線の内側までお下がりください」


 アナウンスが流れ終わると、九十九たちの周囲に黒い闇が流れ込んできた。


「これはやばい。逃げ場が無いぞ!」


 九十九は思わず声を出して叫んでしまった。


 漆黒の闇は、すぐに九十九の身体を包み込んだ。

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