再開
火竜の咆哮が響き渡る。その巨躯に付いた巨大な翼で空を駆け火を噴くドラゴン。ゲーム画面で、ポリゴンで構成された映像ではない、本物だ。そしてじわじわと恐怖が沸いてくる。
赤い鱗の中にいくつかの黄色い鱗が埋まっている。角が二本、口を開ければ大きな牙が立ち並んでいる。二足歩行でやや前傾姿勢のドラゴン。
「行くぜ、ドラゴン!」
剣を構え、スキルを発動させる。
「スキル!タイムキー……」
「スキル:剣神」
刹那、横から現れた巨大な斬撃によって俺のスキルが中止される。放たれた斬撃はドラゴンを一刀両断する。斬撃の次に現れたのは一つの人影だった。
「やあ、火竜の討伐ってことはお前も転生者か?」
謎の人物が土煙の中で話しかける。
「君は……」
それは聞き覚えのある声だった。
三年前……
俺にはたった一人の親友がいた。中学三年の時に知り合って、同じ高校に進学したためより一層仲良くなった。彼の名は健治。学校でずっと一緒にいたわけじゃないし、部活もばらばらだったが、放課後はもっぱらともにゲーセンによった。大学に進学したらルームシェアをしようなんて計画したりもしていた。
「なあ、お前は人にとって一番大事なものは何だと思う?」
ある日の放課後、あいつがそんな質問をしてきた。
「お金?とか、それともベタに愛とか?」
「お金か、俺はさーやっぱ自分の心だと思うんだよね」
「へえ。急にロマンチストにでもなったつもり?」
「いやさ、俺の家って貧乏じゃん?」
「うん。びっくりするくらいな」
「びっくりするくらいは余計だ。でさ、そんなだから俺は人一倍金にがめつく生きてきた。でも最近思うんだ。そんなことに意味あるのかなって」
「どうしたんだよ、お前らしくもない」
「そうか、俺さ、やっぱ大学、行こうと思うんだ」
彼の家は貧乏だ。だから高校卒業と同時に働くと、中学の時から言っていた。
「それは、いいと思うけど、金はどうするんだ?」
「親父が死んだ」
「そうか」
知っている。知らないふりをしているだけだ。
「仕方ないよ」
「許してくれるかな、俺、親父を、自分のために……」
「俺が許すさ。」
「なあお前さ、家族のこと好きか?」
「ああ、多分。お前は?」
彼には二人の妹がいる。部活にバイト、その二つを共にこなすこいつのことを俺は尊敬していた。
「俺は、好きだ」
大事な物の答えは、結局わからなかった。けれど、俺にとってそれはきっと。
彼は突然消えた。12月24日、16歳の彼はこの世を去った。死因は不明。ただ遺体だけが残っている。
だから、そんなはずはない。
現在……
「お前は、ケンジ、なのか?」
「ああ確かに俺の名はケンジだ。けどなんで俺の名前知ってんだ?」
忘れているのか?俺を?そんなはずはない。名前はあっている。その顔は、間違いなくケンジだ。俺がケンジの顔を間違えるはずがない。おかしい、そんなはずはない。
「しかしまあお前も転生者に選ばれてラッキーだったな。このチートスキルがあれば女は抱き放題だ。金にも困らねえ。転生前のくそったれた生活ともおさらばだ。それに、重荷になる家族もいねえ。ここは楽園さ」
「お前、本当にケンジなのか?」
信じられない。言動も含め、あいつがケンジであると、認めたくない。
「じゃあな、俺は行くぜ」
「待って!」
瞬きの間に彼の姿は消えた。
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