筋肉なら任せておけ!
随分前に、ブルーベリーには視力回復効果がある事が話題になった。ところがこれについては反論があって「効果があるかどうかは分からない」という意見や、中には「視力回復効果はない」と完全に否定している人もいる。
これをして、「ブルーベリーの視力回復効果を信じる奴は非科学的だ」と言うような人もいるけど、僕はそれについては“どうだろう?”と思っている。ブルーベリーによって視力回復効果が出たというデータを出されたなら、そのように考えるのは別に非科学的ではないと思う。データが間違っていただけだ。
ま、本当にデータが間違っていたかどうかはまだ分からないのだけど。
この件に限らず、“視力回復”を謳っているものって疑いの目を向けられる場合が多いのじゃないだろうか?
だけど、腕立て伏せとか腹筋などの筋力トレーニングに、肉体を強化する効果がある事に「非科学的だ」と言う人は滅多にいないと思う。そして、肉体を強化する事に肩こりや腰痛防止の効果があるという主張を否定する人もあまりいない。これは効果が誰にでも明らかなほどに分かり易くあるからで、肩こりや腰痛を防止する理屈も明確で簡単だからだろう。
――だから、僕は思う訳だ。もし仮に、“視力回復”の効果もそんな風に分かり易かったなら、もっと多くの人に受け入れてもらえるのじゃないだろうか? って。
その人は既に60歳を超えていた。だけど、見た目で分かるくらいに筋肉がムキムキで、本人曰く「筋肉なら任せておけ!」という事らしい。ちょっと悪そうな若者も、彼にはちょっと怯んだ眼を見せる。いつだったか、煽り運転をくらった時も、車から出て来る彼を見て逃げ出してしまった。
それは健康の為が半分くらいで、残りの半分はプライドの為なのだと思う。
ところがだ。
彼は視力の低下は放っておいているのだった。どんなに悪くなっても“仕方ない”と諦めている。眼鏡をかけていて、それは、まぁ、なんかとてもよく似合っているのだけど、それでも視力は良い方が良いと思う。
だから僕はある日言ってみたのだ。
「視力の低下って、実は筋力の低下が主原因らしいですよ? 目のピントを合わせる筋力が衰えるのだそうです」
それはつまりは、目の筋力を鍛えれば改善できるという事だ。具体的には、近くを見たり遠くを見たりを繰り返す。目の筋力に腕立て伏せをさせているようなイメージ。
それを聞いたその瞬間、彼は顔を引きつらせたように思えた。
それから一か月程が経って、久しぶりに会ってみると、なんと彼は眼鏡を外していたのだった。
「筋肉なら任せておけ!」
と、彼は嬉しそうに言った。
つまり、目の筋力を鍛えて、彼は視力を回復させたのだ。動機はプライドの為かもしれないけれど、まぁ、この方が良いと思う。
視力回復トレーニング。
バカにしていたのですが、やってみたら本当に効果があってビックリしました。