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前編

 皆様こんにちはこんばんは、遊月奈喩多と申すものでございます!


 夏のホラー短編、投稿させていただきました。

 ほんのり青春風味漂うお話となっておりますので、お楽しみいただけましたら幸いです。


 それでは、本編スタートです!!

「何にもなかったねー」

「う、うん……」


 照り付けるような陽射しがほとんど空から去ろうとしている黄昏時、懐中電灯がほしくなる獣道を、僕こと宮原(みやはら)(あつし)は歩いていた。

 前を行くのは幼馴染みの水瀬(みなせ)花梨(かりん)。意気揚々と突き進んでいた行きとはうって変わって、つまらなさそうにとぼとぼ歩いているが、僕としては何もなくてよかったと胸を撫で下ろしたいところだ──そんなことしたら、また『あっくん怖がりだな~』と笑われてしまいそうだけど。


 僕は、花梨に連れられて近所で評判の心霊スポットを訪れていたところだった。ネグレクトの末に餓死した幼児の霊が母親を求めて徘徊(はいかい)して、来るものをみんなかき氷の具にして食べてしまう空き家──そんなごくありふれたもの。だけど、そんなのを好奇心の塊みたいな花梨が見逃すはずもなくて。

「昔から変わんないよね」

「あっくんもねー」

 やたら元気に走り回り、着る服も動きやすさ重視で、怖いもの知らずで猪突猛進……。もしかしたら花梨は生まれてくる性別を間違えたんじゃないかと度々(たびたび)思わされる。下手な男子……少なくとも僕よりは間違いなく、いわゆる“男らしい”女子なのではないだろうか。


 ただ花梨は、見た目だけならかなり可愛い部類なのだと思う。(かよ)っている小学校でも何回も告白されるのをよく聞かされるし、最近では中学生や先生からもプレゼントを(もら)ったりご飯に誘われたりしているらしい。

 ただ、そういうのをどうするのか訊くと毎回『もちろん断ったけど』と返される。どんなにかっこいいやつや可愛い子から告白されたときも、僕がそのことを聞く頃には既に断った後なのだ。夏休みに入る前だって、僕から見ても魅力的で思わず付き合いたくなるような男子からの告白を即断っている。

 かといって、そこまでして好きな人でもいるのかというとそういうのでもないらしい。1学期の終わり頃に訊いてみたら『あたし、そういうのよくわかんなくてさ』と笑っていた。


『そういうのより、あっくんと遊んでる方が楽しいし? 今年も、休みいっぱい遊ぼーね!』

 屈託なく笑った彼女の顔は、真夏の太陽みたいに輝いて見えて。あまりに眩しくて、僕はちょっとだけ目を逸らして頷いた。熱いはずの風が、頬を冷ますのにちょうどいいと感じたのは、きっと気のせい。

 それが、夏休み前のこと。


 そして今日、『遊ぼ!』という呼び出しを受けて、僕は花梨に外へと引っ張り出された。そうでもしなければ家にいるだけだったからありがたくもあったけど……。

「肝試し行くって事前に聞いてれば……」

「そしたらあっくん来ないでしょー? 昔から怖がりだもんね、あっくんは」

 にしし──なんていう漫画みたいな表現の似合う笑顔で花梨が笑う。それから特に膨らんでもいない胸を張って、得意気に言うのだった。


「大丈夫だって! 何かあっても、あたしがずっとあっくんのこと守ったげるから!」

 小さい頃からよく言われていた。

 実際、昔から怖い話やらホラー映画やらを見ていても怯えっぱなしだった僕を(なだ)めてくれているし、よく吠える犬がいる家を通るのだって花梨が助けてくれてやっと克服したくらいだ。……だけど。

 たぶん、今日はそれを言われ過ぎてしまったからだろう。ただそれを受け入れるのが、ちょっとだけ(しゃく)な気がして。


「ぼ、僕も……!」

「ん?」

「僕だって、花梨を守るし、何かあっても助けるよ。いつだって、ずっと……!」


 勢いに任せて何か変なことを口走った気もするけど、こういうのは勢いだ。言い終わった後、少しの間花梨の方を向けなくて。

「ふーん」

 僕がようやくそちらを向けたのは、そんな声を漏らしながら花梨がまた歩き出す足音に気付いたから。


「じゃあ、守ってくれるの楽しみにしてるね」

 前を向いたままそう言って、振り返らずに歩き始めた花梨の後を、僕も歩き始める。さっきまで暗いのが気になっていたけど、今ばかりは視界の覚束ない夕闇に感謝せずにはいられなかった──なんだか頬が熱くて仕方がない。花梨の方は、どうかわからないけど。


 それからしばらく、お互い無言で歩いていた。

 何か話そう──そう思っても、うまく言葉が出てこない。花梨の方もさっきからどうしてか黙っているし、なんか、なんか喋らないと。

 場所も不気味だし、あと気まずいし……。

 あ、じゃあ次の約束だ。次に会うときの約束をしよう! それなら自然に話せそうじゃないか……?


「花梨、あのさ──」

 そのときだった。


 突然、僕らの前に数人の男が現れて、驚いた……というより焦ったような口調で尋ねてきたのだ。

「まさか君たち、あそこの空き家に行ったのか!!??」

 前書きに引き続き、遊月です。今回もお付き合いありがとうございます! お楽しみいただけましたら幸いです♪


 あそこに行ったんか!?

 そう言われると何故か焦りますよね、何故でしょうか……?


 次回の後編もお楽しみに!

 ではではっ!!

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