『聖霊王』の生まれ変わり
「うええ...」
「ふふん、後は僕に任せてよっ!」
『精霊の住処』と言われる、初代聖霊輿が設置されている白亜の壁に囲まれた場所へは一度来れば覚えるが、来ないと必ず分からないであろう迷路だった。
そこに来たことがあるであろうイアは鼻歌交じりにひょいひょいと動き、迷路をどんどんと抜けていく。
ただ、何回も同じような道を行っていると思い始めたころ、
「おーい、そろそろ疲れたから僕で遊ばないでよー!」
と言いだすイア。
自分の落ち度だろう、と思いながら待つこと15秒。
「...」
「...だから、...と...」
「...しょうがないか。
分かったよ、ちょっと待っててね!」
そんな会話が途切れ、更に待つこと25秒。
「ちょっと待ってね、今開けたから!」
そして、腕に抱えられたまま、何処かも分からない場所に連れられる。
だが、その輿は所々崩れかけているものの、形は失われていない。
恐らく、これが初代の聖霊輿で、上にあるものは隔絶されているのであろうこの空間の上限なのだろう。
ならば、きっと現実世界にあるのであろう整った聖霊輿は何なのか。
そう思ったところで、きっとこの世界に呼んできたのであろう二人の少女が見える。
ただ、見た目=生きてきた年齢だ、と言うのは違うと思い、警戒しながら二人を迎えーーーようとした。
だが、突然その敵意が削がれていくような気がした。
それが相手の魔術ではない特殊な能力の様な気がして、唸りながら耐えること15秒。
「あ、あれ、なんか...おか...」
そう言いながら、苦しそうな顔と笑顔の間で顔が揺れる左側の少女。
そのままの状況が続くこと、実に1秒。
たったの1秒、だがその1秒でその拮抗は崩れた。
突然視界が暗くなっていく。
その中で、横のイアと向かい合う2人が暗くーーーいや、左側の少女の姿が白衣を纏った猫耳の少女になる。
「あっ、こ、これは...。
...何も見なかったことに...」
そこで言葉を切る。
そして左右を見渡す様子をするその少女。
そこには、笑いをこらえようとしている、竜と人を合わせればこうなる、と言うような見た目の少女と、同じく白い光にまとわれて顔以外見えなくなっているイアの姿が。
彼女は顔を真っ赤にし、前方に腕を突きだす。
それだけで、硝子が張られていたかのように、ばりいいぃぃん‼とものすごい高音の破砕音と、大小さまざまな光を反射する、しかし当たっても痛くなく、むしろ溶けていく正三角形のかけらたちが現れ、世界は元に戻った。
真っ赤な顔はそのまま、白髪にカチューシャをつけた少女が現れた。
恐らくはさっきの少女なのだろうと思い、話をしようとすると。
「...回」
「え?」
「旅一回で、何とか許してもらえれば」
「い、いや、そんなことされても」
「じゃあ、さっきのは忘れてくれよ!」
「は、はあ」
その少女は顔を次第に肌色に戻すと、隣にいる少女(竜人)に話しかける。
「アリシャ、これだからこの肉体で姿を変えるのはだめだって言ったじゃないか!
お陰で恥ずかしい思いすることになったじゃないか!どうしてくれるんだよ!」
話しかける、と言うよりむしろそう怒鳴りつけると、対象であるアリシャと呼ばれた少女はあきれたような顔で、
「じゃあ、ボク、寝て良いかな?
仮装させるのが条件で起きてるわけだし」
「そ、それだけはー!僕寂しくて死んじゃうよー!」
((「ウサギかよ...。」))
そんなふうに、無駄に時間は過ぎていき。
ようやく本題を切り出すころには三十分程の時間を要した。
「...それで、なんで来たの?」
三人メインの話でシグレ、と呼ばれていたその少女は至極最もな事を聞いてくる。
そこでやっとイアが思い出したらしく、
「あっ、そうそう、アリスが魔術使えるようになったって言うからs...」
「「アリス!?」」
目を見開いて異口同音に僕の名を呼ぶアリシャとシグレ。
何か驚くことだったのだろうか。
そう思うと、軽くやつれたような表情で
「はあ...。
アリス、って名前の付く女の子に良い思いでないんだよなあ…。」
と言うシグレ。
アリシャ、イアもそれに追随するように頷き、
「そもそも、イアが原因なんじゃ…。」
とアリシャが言うのにまた二人が追随しーーー
「僕が原因ってどういうことだよ!?」
と気づくのが遅いイアが突っ込む。
と、そんなコントを見ていると、不意に笑みがこぼれるもので。
「何笑ってるんだよー!」
と半泣きになって訴えるイアは、少し惨かった。
そのコントにも飽きたのか、シグレは話し始めた。
彼女たち、シグレやアリシャに接点のあった聖霊と龍王を人の身に同時に抱える男グレン、黒龍王ヴェフロール、聖霊王ヴァングファン。
そして、アリスと言う少女や、イヴェンシアと言う青年の事。
最後に、彼らがどのような末路を辿ったのか。




