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第16話 語尾とトマト


 近づいてくる人間は恐らく2人。おれは何となく物音で人数を確認しつつ、木崎さんを揺り起こす。


「起きて。近くに人がいる」

「……人?」

 一瞬で中腰になった木崎さんは目を細め辺りを見渡す。


「ねえ、二司君。もう横の家まで来てる」

「そうだな」

 

 あれか、車から降りて徒歩ってことか。だがこの家の前で停まってはない。まあ警戒してっていうのもあるかもしれないけど、警戒するなら会話とか物音とかさあ、その辺に気を使って静かに近づくよな。何らかの意図があっておれたちを探してるんだろうけど。でも夜だしなんとか逃げ切れるんじゃ。おれはリビングから外のウッドデッキに出るため横目で窓を確認した。


「あっち側だから玄関から入ってくるよね。わたしは2階に行くから。そこで隠れて使う」

 木崎さんはそう言うと同時に廊下に出て階段を駆け上がった。


 木崎さんはここで待つ方か、おれは逃げそうだったけど。相手適当だからなんとかなるかもって。でもこいつら以外も人いるよな。となると、うーん。でも考えることを放棄しての逃げはだめだ。じゃあおれはどうする。木崎さんが2階で使うなら。どうする、どうする?

 おれは体感的に数十秒考えた後、開けっ放しになったリビングのドアをすり抜けて玄関にあったブレーカーを落として、再びリビングに戻りシンクの蛇口に触れる。


 この蛇口って鉄じゃないのか。鉄縛りだといちいちこういうの面倒なんだよな。

 おれは蛇口から出る水の形状を変え、L字型になった空洞の鉄を取り付けた。

 これが、こうはめる、と。おし。

 微調整を行って水量を全開にしリビングに向け水を放つと、フローリングの床はあっという間に水浸しとなった。


「おおおい、誰かいるんだろおおおお!」

 乱暴に開けられたドアの音と同時に男の声が室内に響く。


「お前うるさいな。ほんとにここなのかよ」

「いや、絶対ここだ。中に入ったらわかる。雨だと途切れるんだけどよおお」


 来た、来た。2人か。おれは恐怖から小刻みに震える手で水に触れ、鉄パイプを2本作る。


「どこだよ。2階か?」

「ちがうなああ、1階だ。ん?2階もいるなああ。電気どこだ?」


 1人語尾がしんどいのがいるな。そして家にいることは感づかれてる。おれは息を殺しつつ移動し廊下に続くドアの横にしゃがんだ。


「お、つかねえ。なんだ、この家電気止まってんのかああ?」

「ちょっと待て。おれ、あれ。お前、おれ、え、おれ能力使ってるんだけど」

「なんだあ?ここでトマト育ててどうすんだよお」

「知らねえよ。なんだこれ気持ち悪いな。お前はどうなんだよ?」

「おれはずっと使ってるよお。じゃなきゃ探せねえだろお」


 木崎さんは強制発動の方を使ったんだな。まあ確かに使えなくしてもすぐ範囲から出るし。

 おれは両手で持った2本の鉄パイプを強く掴んだ。


「お前2階行ってこいよおお。おれは1階を探す」

「ばかか?離れるなって言われてんだろ。1階から行くぞ」

「早く殺して帰ろうぜええ。女と会社員だろ?大体ランク上だったらもう見つかってるからなあああ。大したことねえ奴らだよおお」


 語尾がしんどいほうが探索か。もう1人は生産系?だったとしたらなんでこんな場所に来てるんだよ、もったいない。とりあえず怖いのは能力以外だけ、か。でもランクで探索なんてそんな。いや、それは後だ。来る、来るぞ。

 おれは2本の鉄パイプの先端を水に戻し鋭角にした。

 迷うな、相手はこっちを。わかるだろ、考えを切り替えろよ。


「よし、ここからでいいよなああ。つうかよお、は、あ?」

 先にリビングに入ってきた語尾がうるさい男の太ももにおれは鉄パイプを突き刺した。


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