容易
存在感のない少年が急に饒舌に話し出す。
「君が例のレアものか。なるほどそこら辺の魂とは格が違う。僕は零。一応君の仲間だ。気が向いたから気が向いたからここから出してあげる。」
少年はおもむろにこの閉ざされた空間に大穴を開ける。
「馬鹿な。この空間は次元を超えて隔離されているはず。そんないとも簡単に。」
塾長は慌てている。
「さあ、この先は君の望む空間に繋がっている。」
少年は得意げに朱莉を導く。
朱莉はこの少年の力は札の類であるような気がした。しかし、『探知』に引っかからなかったことからその手口は朱莉の把握していないものであった。
朱莉は少年零に軽く会釈をし、空間の割れ目に駆け込む。
そしてその先は朱莉の望んだとおりプロジェクターの向こう側。塾長本体の目の前であった。
「私を倒したところでこの世界は調律社で成り立っている。無駄な行いはやめるんだ。
」
塾長は後ずさりをし、目の前の脅威に怯えていた。
「ただえらそうでむかつく。消えて。」
朱莉は感情が暴走し、それが『傀儡』の未知なる力を引き出したことにより、もはや人間の姿をしていなかった。
怒りの炎が塾長を灰としたのは一瞬のうちであった。