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狂律師  作者: しき
11/14

転覆

 「ようこそ。ここが狂律社(きょうりつしゃ)の心臓部だ。」

 目立たない少年(ゼロ)は高らかに宣言する。それに対し朱莉(あかり)は黙って会釈をする。

 少年は小学生らしい短パンとシャツを着ていおりこの荘厳な大聖堂には場違いに感じられる。しかし、彼は神の啓示により上位種に位置付けられた特別な狂律師(きょうりつし)らしい。

 「君は気付いているはずだ。徐々に腐っていく夢も希望もないこの世界に。どうか僕たちに力を貸してほしい。」

 朱莉(あかり)は目線下から圧力(プレッシャー)をかけてくる少年に反抗する。

 「朱莉(あかり)はそんなの興味ない。あなたは助けてくれるの?」

 朱莉(あかり)は少年を睨みつける。

 「君が絶望しているのは君自身の問題だ。余命が長い、短いことだけがその者の価値を決めているわけではないんだよ。君は短期間で強く輝くことができる力を持っている。君が協力してくれるなら狂律社(きょうりつしゃ)総出で君を輝かせることを約束しよう。」

 この広い空間にひとときの静寂が訪れる。

 朱莉(あかり)はこの場に来てしまったことを後悔した。少年の言葉が自身の感情をそぎ落としていくのを感じたからだ。人と人の会話であれば片方が拒絶している限り合意形成がなされることはない。しかし、朱莉(あかり)が相手をしているものは人ではなかった。その人ではないものが己だけでなく同胞すべてと引き換えに朱莉(あかり)の自由意志を奪ってくる。

 「卑怯者。でもいままで出会った奴の中ではましかも。」

 朱莉(あかり)は自分の言葉が喋れるうちに感想を口にする。支配というより人格が混ぜられている感覚を覚えた。

 「やっぱり。朱莉(あかり)の病気を治すことはできないの?」

 朱莉(あかり)は少年に問いかける。

 「君もわかっているとは思うけど世界がひっくり返っても不可能なんだ。」

 少年は首を振る。

 「ならば僕が世界をひっくり返してやる。」

 少年は朱莉(あかり)の言葉を聞きうっすらと笑みをこぼす。

 

 

 

 

  

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