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絶望の夜明け
「勝手に死ぬことは許さん。最後の一瞬まで苦しみ抜け。」
線路で血まみれ横たわる朱里の頭に激痛とその言葉が鳴り響く。
朱莉は先ほど快速列車に轢かれて死んだはずだ。丁度良いタイミングで踏切をくぐり、即死する予定であった。
理不尽に支配された朱莉の一生は通りすがりの老人の気まぐれにより死ぬ権利すら失った。列車に轢かれる直前に老人が携帯サイズの紙を破ったとき、朱莉は死ねなくなった。
列車は数十メートル先で停車し、どよめいていたようであった。
朱莉は激痛で動けなかったが老人の視線と言葉は認知出来た。
十数分後救急隊員が朱莉を線路から救出したあと老人は姿を消した。
「まだ若いのに。もったいない。」
中年の救急隊員が独り言を言いながら近づいてくる。
「おい、まだ息はあるようだ。」
若めの隊員はそういうと急いでその身を担架に移し、救急車に運び込む。
そこからは意識を失い目が覚めたら病室のベッドの上にいた。
朱莉は窓から差し込む朝日を浴びながら自分の体から一切の傷が見当たらないことに驚き血の気が引いた。