2 入学式は終わった、んだけど……
二人してそんな話をしながら歩いていると、私たちの横を自転車に乗った人たちが数人通り過ぎていく。
学生みたいだけど、私たちの中学校の制服じゃない。
「あ、御蔭の制服だ、いいなぁ!」
その人たちを見て、美加子がそんなことを言う。
「なにそれ?」
私は首を傾げる。
あの制服、たしかどこかの高校だっけ? ってことしか、私にはわからない。
そんな私に、美加子が腰に手を当ててズズイ! と顔を寄せてくる。
ちょっと、ナニナニ?
「知らない? ウチらの中学の向こうに、高校があるの」
言われて私も思い出す。
確か御蔭学園高等学校とかいう私立の有名進学校で、どうせ私の成績じゃあ縁のない場所だって思って、すぐに記憶から放り投げたんだっけ?
「そういえば、そんな学校もあったね」
「あるのよ! そんでそこって、すんごいイケメンがいるっていう話!」
「へぇ~」
なるほど、だから「いいなぁ」なのか。
美加子ってば、イケメンが好きだからなぁ。
そういえば、昨日の夜のあの男も、王子様みたいなイケメンだったっけ。
アイツ、歳はいくつくらいなんだろう?
暗かったからそのあたりがよくわからなかったけど、言い方が偉そうだったし、かなりの大人よね、きっと。
私がそんな風なことを考えながら、美加子のエンドレスなイケメン語りを適当に聞き流しながら、学校へ向かっていると。
ブウゥーン……
横の車道を、大きな車が通っていく。
うわぁ、今のってなんか、いかにもいお金持ちっぽい車だったなぁ。
どんな人が乗っているんだろう?
私は「たぶん、ウチだと一生乗らなそうな車だな」とか思いながら、野次馬根性で車をじぃーっと見送った。
その車の中から、とある人物に私の事を見られているなんて、気付きもせずに。
学校に着いたら、あれよあれよと流れ作業のように体育館に集められて、入学式が始まった。
小学校の卒業式でも思ったけど、どうしてこういう式典ってヤツは、お偉いさんの話が長いんだろうね?
「皆、おめでとう。以上!」でいいじゃんね?
ただでさえ寝不足なのに追加のダメージをくらって、ちょっと寝コケちゃったのは仕方ないだろう。
きっと私の他にも寝ている生徒はいたはずだよ、ウン。
そうそう、体育館に入る前にされたクラス分けだけど、美加子と同じクラスだったんだ。
他にも仲が良い子が数人一緒で、なんだかツイてるや!
睡魔との戦いに負けた入学式が終わったら、教室へ行って担任の先生の自己紹介を聞いて、今日はもう解散だ。
「ねー、コンビニ寄っていかない?」
「いいね~!」
美加子や、他の友達とそんな話になる。
小学校だと、一旦家に帰ってランドセルを置いてこないと、出かけられなかったんだよね。
こういう話ができるのが、なんか大人になったカンジがする!
そんなわけで友だちと皆でワイワイ騒ぎながら校門に向かっていると、なんだか前方が騒がしい。
っていうか、なにあの人だかり?
私が不思議に思っていると、美加子が原因を聞きつけた。
「なんかね、校門にイケメンがいるらしいわ」
「へぇ、イケメン」
なんか昨日からよく「イケメン」っていう言葉と縁があるなぁ。
さらなる美加子アンテナが受信した話によると、その校門にいる人は御蔭の制服を着ていて、噂の「御蔭のイケメン」ではないか? ということであった。
「見たい! 一目拝みたい!」
美加子が目をキラキラさせている。まあね、私もわざわざ会いに行くほどじゃないけど、今そこにいるんだったら、チラッと見てみたくはあるかな。
そんな風に野次馬しに行く私だけど、まず視界に入ったのは、校門のすぐ横に停まっている大きな車だ。
あれ? あの包まって、登校するときに見た、あのお金持ち車じゃない?
「いた! 噂のお方だ!」
美加子が興奮を隠せない様子で、私の制服の袖をグイグイと引っぱる。
その噂のイケメンん様に目をやると、そこにはすらっと背の高い、御蔭の制服を着た男の人が立っていた。
肌は色白でスッキリと切りそろえられた黒髪で、あれ、目が青いのかな?
って、なんかイケメンと目が合ったぞ?
って、なんか見覚えがある気がするぞ?
しかもつい最近。
なんなら昨日の夜。




