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あやかし猫の散歩道  作者: 黒辺あゆみ
第二話 媛君の一族

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8/24

1 入学式です

「眠い……」


私はどんよりとした顔で、昨日あれだけはしゃいでいた制服に袖を通していた。

 そう、今めっちゃ寝不足なのよ。

 あれから私ってば、結構な時間迷子でグルグルしていて、ヘトヘトになって家に帰りついたのは、もう日付が変わって結構経った頃だった。

 くうっ、いつも睡眠時間は8時間以上確保している私なのに、その半分程度しか寝ていないなんて信じられない。

 眠くって仕方ないじゃないの!

 それもこれも、あのお屋敷に行ってみようとか思った昨夜の私が悪いのだ。

 もしあやかしの力でタイムスリップできたなら、昨日の私に「行くな!」って言いに行きたい。

 そんな寝不足でボーッとした足取りで、部屋を出てリビングに向かう。


「おはよう弥奈、どうした?

 眠そうだけど、興奮して寝れなかったとか?」


キッチンで朝ごはんを作っているお父さんが、私の顔を見るなりそんなことを言ってくる。


「ダサ……、小学生かよ」


可愛くないことを言うのは、もうダイニングテーブルに着いている今年小学二年生になったばかりの弟、ひかるだ。

 小学校低学年に「小学生かよ」とか言われるのって、かなりカチンとくるわぁ。

 ついこの間まで、「おねぇちゃん、おねぇちゃん」って言って、私の後ろをついて回っていたくせにぃ!


「そんなわけないでしょ!

 色々あるのよ、私にだって!」


私は晃に言い返しながら私は電気ケトルでお湯を沸かしてお茶を淹れると、テーブルの自分の席にドカッと座る。

 小学生の頃は年中冷たいジュースとかを飲んでいたけど、「温かい飲み物を飲むのが大人の女だ」みたいなことを、この間友だちの家で読んだ雑誌に書いてあったのよね。

 だから大人の道を進むのに、まず形から入ってみているってワケ。


「そうだね、中学生になったら勉強とか部活とかで忙しくなるだろうけど、頑張るんだよ?」


お父さんがそう言いながら、こんがり焼いたトーストをテーブルに並べる。

 あ、私の好きな千切りキャベツと目玉焼きのせのヤツだ!

 それとサラダに、スープは昨日の夕食の残りに溶き卵を足したもの。


「弥奈、ごめんね?

 よりによって今日外せない打ち合わせが入るだなんて」


お父さんが席に着きながら、そんな風に謝って来る。

 お父さんはフリーライターをしていて、普段は自宅での仕事なんだよね。

 けど、今日に限って出版社さんとの大事な打ち合わせが入っちゃったんだってさ。

 まあ、あるよね、こういうことだって。


「いいって、学校から『親は絶対に来い!』って言われているわけじゃないし。

 友達も親は仕事があって来ないっていうの、結構あるし」


実際の話、入学の準備書類とかはもう事前に郵送で配られているんだし、親が言っても式を見るだけで、やることないんだよね。

 よその学校は知らないけど。


「それでも、麻衣子さんの分まで弥奈と晃を見守る約束があぁ……」


「はいはい、イタダキマス」


けどまだグズグズ言うお父さんだったけど、私は放置して朝ごはんを食べる。

 こうなったらお父さんはちょっとウザいんだ。お母さんとの馴れ初めから話し出すから。

 そんな朝の家族団らんを過ごしたら、ちゃっちゃとお皿を洗って片付けをすると、制服姿の私を囲んでの家族写真を玄関て撮って、学校へ登校だ。


「いってきまーす!」


「気を付けて行っておいで」


見送るお父さんに手をふりながら、私は学校へ向かって歩いていく。

 そう、徒歩通学なのだ。

 中学生になるって言っても、この辺りの小学校三校が集まるから、当然顔見知りが多いわけで。


「オハヨ、弥奈!」


「おはよう美加子」


真新しい自転車に乗った、小学校からの友だちである美加子と行き合った。

 ここから一緒に行く気なのか、徒歩の私に合わせて美加子も自転車を降りて歩く。

 小学校の頃だったら、私の家から見て学校の向こう側に家があった美加子と、通学が一緒になるなんてならなかった。

 けど今日から通う中学校は、これまで通っていた小学校とは方向が真逆だから、こんな風になる。

 通学風景が変わるってことも、ちょっと新鮮だったりするよね。

 その美加子が、私の顔を覗き込んでくる。


「どしたの? なんかどんよりしてるよ?」


「ちょっとね、睡眠不足なの」


私はあくびを噛み殺しながら答える。


「そうなの?

 入学式が楽しみ過ぎて寝れなかったとか?」


どうして誰もかれも、私の事をそんな風に思っているのかな?

 そんな理由で寝不足になんかならないよ!

 ……たぶんね。

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