4 お屋敷へ行こう!
「うーん、夜に見るとまさにオバケ屋敷じゃん」
例のお屋敷の前まで来て、私は思わずそう漏らした。
あ、そうなの、実は猫の身体でもちゃんと人の言葉を喋れるんだよね。
とはいえ、誰かに聞かれたらヤバいから、そうそう喋ったりしないけど。
それにしても、お屋敷ってぐるっと囲むように鉄の柵が巡らせてあるんだけど、それに沿って背の低い木がぐるっと植えられていて、中の様子が見えにくい。
この、見たいけど微妙に見えないっていうのが、子ども心をくすぐる。
いや、私はもう大人なんだけどね、明日から!
そんな大人な私が、オバケ屋敷の秘密を解き明かしてやるのよ!
そう意気込んで、私は実はちょっとだけ怖じ気づいていたのを、気合で「エイッと」鉄策の隙間に身体を差し込む。
こういう狭い所をムリムリッっていう風に身体が抜けていくのが、なんとも言えないの。
気持ち悪いような、気持ちいいような、不思議な感覚ってヤツね。
鉄策を通り抜けたら木の根元を通って、やっとお屋敷がはっきりと見えた。
「あれ、思ったよりもキレイだなぁ?」
予想外の光景に、私は首を傾げる。
もっとお庭が散らかっていたり、壁にツタがはっていたり、窓ガラスが割れていた李するのかと思っていたけど、そんなことはない。
お庭は綺麗に掃除されて花なんて植えられているし、壁はツタも汚れもないクリーム色だし、窓ガラスもピカピカに拭かれている。
手入れされているってことは、誰か住んでいるのかも?
でもそんな話、聞いたことないなぁ。
けどもし誰かが住んでいるんだとしたら、私、不法侵入ってヤツで訴えられる?
いやいや、私今猫だし。
猫に不法侵入とか言う人はいないか。
私はそういう結論を導き出して安心したところで、せっかく来たんだからとお庭を散策することにした。
お庭だけでも広いから、見ごたえがあるわぁ。
夜の風の中に草の匂いがたっぷり含まれているのを楽しみながら、私は表の通りに面した辺りから裏に回れば、そこには薔薇の花のトンネルがあった!
わぁ、こんなのテーマパークとかでしか見たことないや!
その薔薇のトンネルを抜けた先に、すごく古そうな木造の建物が見えた。
なんだろう、神社っぽい建物なんだけど、鳥居とか賽銭箱とか大きな鈴がついたヒモとかはない。
なんだろうな? ホントに神社?
もっとよく見ようと私が近くに寄っていくと、あ、ほんのちょっぴりだけど、入口が開いてる!
ちょっとだけなら、中に入っていいよって言われているのかも!
うはぁ~、冒険っぽくなってきた!
ということで。
「お邪魔しま~す」
私は神社みたいな建物に入っていく。
中は細やかな彫刻があちらこちらにちりばめてあったり、月明かりに照らされた障子の枠が床に影が映っていて、なんとなく神秘的だった。
「ほわぁ~、キレイだぁ」
私は思わず感嘆の声を上げる。
もしかしてココって、なにかの文化財的な場所だったりするのかなぁ?
そういう雰囲気があるよね。
もっとなにかないかとキョロキョロすると、奥の方が高くなっていて、絵が描かれた大きな掛け軸が飾ってあるのが見えた。
そしてその掛け軸の前に台座があって、お団子とお水が置いてある。
お供え物かな? やっぱり神社なのかも?
そしてあの掛け軸が神様とか?
私は掛け軸をもっとよく見ようと思って、そちらに近寄って高くなった所にピョンと跳び乗る。
その掛け軸は怖いような、綺麗なような色彩で、フサフサなものに包まれている動物が描かれている。
なんだろう、犬? 狐? そんな感じの動物だ。
私がそんなことを考えながら、掛け軸の周りをグルグルと回っていると、ふと備えられたお団子が目についた。
そういえば私ってば、ハトとの闘いでお腹が減ったんだよねぇ……。
グウゥ~!
そう気付いちゃうと、途端に私のお腹が鳴ってしまった。
口の中が唾液が一杯になって、目に入るのは美味しそうなお団子。
いやいや、けどこれはお供え物だから、つまみ食いなんてダメダメ!
けど思えば思うほど、余計にお腹が空いたかも?
でもでもこうして放っておいても、ネズミとかが食べちゃうんだよね、きっと。
なら、ここで私が食べちゃうのも、アリなんじゃないの? お供えの有効活用的に!
そんな考えに至った私は台座に前足をかけて、お団子をパクっと食べる!
うん、美味しい! これは高そうなお団子だ!
≪ホホッ、愛い猫じゃの≫
「あれ、今なにか聞こえた?」
私はお団子から目を話して建物の中を見渡すけれど、誰もいない。
おかしいなぁ? 今声がした気がしたんだけど……もしかして、オバケ?




