3 激闘の末
私ってばなまじよく見ようと巣に近付いていたから、その中にいたハトが飛びかかってくるには十分の近さだった。
そうそう、鳥が夜は見えないっていうの、あんな話に騙されちゃダメなんだから。
鳥って夜でもちゃんと見えているし、悪戯したら襲ってくるのよ!
経験者な私が言うんだから間違いないって!
「カッカッカッカッ!」
今だって、威嚇しながら飛んでくるハトが怖くって、私はすぐに飛び降りて逃げちゃおうとしたんだけど、すぐにハッとしてやめてその場で踏ん張る。
だって、ここまで登ったのはあの巣からおばあちゃんの栞を返してもらうためで、そのためにはどのみちコイツと戦う運命なのよ!
フンだ、あやかしをナメるなよぉ⁉
「ウニャー!」
私はハトに戦いを挑む。
あ、爪を使ったな⁉
私にだって爪はあるんだから!
このこの、ちょっと痛い、クチバシって地味に痛いのよ!
加減っていうものを知らないの、このハトめ……!
それからしばらく後。
「フニャァ~ン」
ハトの巣がある木の下で、私はヘトヘトの全身ボサボサ状態でへたり込んでいた。
はたしてアイツみたいな難敵、この先の私の人生に出てくるものか?
もしかすると、あやかし生最大のライバルとなり得るかもしれない。
それくらいに激しい戦いだったのよ。
突かれ毟られをしたから、きっと肌が赤くなっているに違いないわ。
人間姿でハゲができていたらどうしてくれるのよ!?
こちとら乙女なんだからね!?
しかし全身全霊をかけて戦った甲斐あって、無事におばあちゃんの栞を奪還した!
やったよ私ってば!
フンフンと臭いを確認すると、うん、ハトの臭いに交じっておばあちゃんの臭いがするし、絶対にコレだ!
早速持って行ってあげようっと!
私はハト臭いのがすごく嫌だけど、栞をハムッとくわえる。
しかたないのよ、コレしか運ぶ方法がないし。
でも臭い。
そして歯をたてて傷をつけないようにしなくっちゃ。
このハト臭さは、おばあちゃんにしっかりと洗ってもらうしかないかな。
ってことで、自宅の近くまで戻った私は、おばあちゃんの家の庭にコッソリと入る。
どらへんに置こうかなって考えて、また風が吹いてどこかに行っちゃわないように、縁側に置いてあるタヌキの置物の下に差し込むことにした。
けどね、くうっ、このタヌキってばしぶとい!
ちょっとくらい隙間を作りなさいよね⁉
ウンウンと頑張って作った隙間に栞を差し込んだら、汗をかいちゃった。
けどこれで飛んでいかないでしょう!
そして最後に。
「ウニャーーン!」
私は高らかな声で鳴く。
一応ね、猫が来ているよって教えてあげるの。
ガタガタ
そうしたら、家の中から物音がした。
おばあちゃんがまだ起きていたみたいで、様子を見に来たみたい。
私はおばあちゃんと鉢合わせないように、庭の植木の影にササッと隠れる。
別に隠れる必要はないのかもしれないけど、なんとなくヒーローみたいなのは隠れてコソコソ活躍するっぽいじゃない?
「野良猫かしら? 植木を荒らされてないといいけど」
おばあちゃんがそんなことを言って、月明かりに照らされた庭を見回している。
おばあちゃんってば、私はそんな悪戯猫じゃないのよ!
私が不本意な心配をされたことに、ショックを受けていると。
「まぁ、これは……」
おばあちゃんがタヌキに敷かれている栞に気付いた!
もしかしたら、ハト臭くて気付いたのかもしれないけどね。
「どうしてこれがここに? でもよかったわぁ」
おばあちゃんが不思議そうにしながらも、栞を撫でて喜んでいるのがわかる。
よぅし、これでミッションクリア!
無事に栞をおばあちゃんに届けたし、しずかに去った私だけど。
ハトとの闘いで疲れちゃって、いつもなら「もう帰ろう」ってなるところだ。
でもでも、私ってばせっかく明日には大人デビューをする前日っていう記念すべき夜なんだから、もっと冒険をしたい!
となるとさて、どこに行こうか……って私はしばし道端でグルグルと回りながら行き先を考えて、ピンとひらめいた。
そうだ、昔から近所にある、あの古そうな広いお屋敷を覗いてみよう!
そのお屋敷っていうのは、小学校の頃のクラスメイトからはオバケ屋敷だって言われていた洋館なんだけど。
本当にオバケがいるのか、確かめた子は誰もいない。
でも、私はなんてったってあやかしなのよ!?
オバケなんて怖くナイナイ!
こうして、私は行き先に決めた方向へ駆けだした。




